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流しソウメン

「エイデン。話を聞いて下さい。僕達は貴方に、補習を受けて欲しくて……」

「うーん。何か足りない気がするな〜」

「いや、話聞いてます?」

「いや、そんなことより、この流しソウメン、何か足りない気がするんや。なんやろうな〜」

 駄目だ。聞いて無い……。


「はい。俺分かります」

 真面目な生徒が手を上げる。

「なんや。何が足りひん?」

「シャンプーボトルです!」

「シャンプーボトル?」


「流しソウメンにはシャンプーボトルを流すべきです。俺、シャンプーボトル持ってきました!」

 真面目な生徒がシャンプーボトルを手に持っている。

「いや、流しソウメンにシャンプーボトルは要らないでしょう……」


「それや! それを流せ!」

「いや、流してどうするんですか? 食べられ無いだろ!」

 レインの突っ込みを無視してシャンプーボトルを流すエイデン。

「うーん。やっぱりイマイチやな〜、ソウメンの味は変わらやん」

「そりゃそうでしょ……」

「なんや。何か足りひん?」

「はい、俺分かります!」

 もう一人の真面目な生徒が手を上げる。

「なんや!」


「おはじきです! 俺大量のおはじき持ってきました!」

 真面目な生徒は袋に入った大量のおはじきを持っている。

「いや、おはじき流して何になるん……」

「それや! それを流せ!」

「あんた、シャンプーボトルで何を学んだんだ!」


 流しソウメンに流される大量のおはじき。

 最早、流しソウメンか、どうかも分からない光景が広がった。

「うーん。ソウメンの味は変わらんな〜」

「だから、そりゃそうでしょ。会長、どうしましょう?」

「普通に麺つゆだと思うぞ。もう少し濃い方が良い」 

「会長、何味見しているんですか! 止めて下さい!」

 

「いや〜、やっぱり必要なもんは麺つゆやったな〜。おおきに。おおきに」

 一通りやった後、流しソウメンに飽きた様子のエイデン。

 彼はようやく自分達と話をしてくれる事になった。


「エイデン、君は補習の授業を受ける時間だろ。何故、補習に出ない?」

「いやや! 補習の授業は退屈なんやもん。流しソウメンしてた方がマシや」

「いや、退学になりますよ……」

「えぇーと、お前は……」

「レインです……」


「レイン。俺は何より自由を大切に生きているんや」

「自由を大切に?」

「そう。俺は子供の時、病気をしてな。今はもう治ったけど、入院生活は、まぁ退屈やったんや」

「は、はぁ」


「その時、思ったんや。俺は自由を大事に生きる! 誰にも邪魔はさせへんってな」

「だから、補習は受けず流しソウメンをしているんですか?」

「そうや。俺は自由を愛する男。今は流しソウメンをしたい気分なんや」 

「実技の試験は満点ですね」


「実技は楽しいからな。この学校も、ほぼ実技の試験で通ったもんや」

「はぁ、なるほど」


「エイデン、しかし現実問題。君は退学寸前だぞ。今度の試験、どうするんだ?」

「そこら辺の事は、ちゃんと考えているんや」

「うん? 考えているとは?」


「それは秘密や。教えられへん。じゃあな!」

 そう言ってエイデンは風のように去って行く。

「あぁ、エイデン、話は、まだ終わってないぞ」

「説教は、こりごりや。またな〜」


 エイデンの去る速度が速すぎて、レイン達は止められない。

「会長、どうしましょう?」

「うーむ」


「お、おった、おった。おーい。アンドリュー」

 ルビー達の元を去ったエイデン。

 彼はミラリス魔法学校の食堂に来ていた。


 現在、食堂は、放課後とあって人は、ほとんど居ない。  

 別に何処の席に座ろうと自由なのだが。


 その中でも隅の席でスマホを弄っていた生徒。 

 アンドリューに声をかけた。

「しー、声がデカイよ。エイデン君」

「おぉ〜、すまんのう」

 エイデンはアンドリューの隣に座る。


「で、例の物は、持って来たんだよね?」

「おぉ、持って来たで」

 エイデンは鞄の中からアクリルスタンドを取り出す。


「おぉ〜、これは確かにネリシャス・ブラウンのアクリルスタンド! ネットでは直ぐに売り切れになる。素晴しい商品じゃないか〜」

 そのアクリルスタンドには現在、大人気のVtuberネリシャス・ブラウンの姿が描かれていた。

「知り合いが丁度、持っててな。ほれ、あげるわ」

 エイデンはアンドリューにネリシャス・ブラウンのアクリルスタンドを手渡す。


「お、おぉ〜、ネリシャス・ブラウンのアクリルスタンドですぞ。大事に扱って下さい」

「おお、すまん。すまん」

 アンドリューはネリシャス・ブラウンのアクリルスタンドを受け取って大層喜んでいる様子。

「そういえば、もう一つあったな」

「? なんです?」

 エイデンは鞄の中から、もう一つ持って来た物を出した。


「ほれ、ネリシャス、なんとかの七味や」

 それはネリシャス・ブラウンの姿が印刷された七味。

 何故、七味かは謎である。

「おぉ〜、これはネリシャス・ブラウンの七味! ネットでも中々手に入らない。貴重な品でわないですか〜」


「おぉ〜、こんなもんでも喜ぶんかいな。ファン心理は謎やな〜」

 アンドリューはエイデンから七味を喜んで受け取る。

 何故、エイデンがアンドリューにアクリルスタンドやら七味やらを、あげているかというと。

 彼らにはある取り引きが交わされていた。


「で、例のもんは、あるんか?」

「あぁ、あるとも、あるとも。これだね」

 アンドリューは一枚の用紙をエイデンに手渡した。

「おぉ。これや」

 その用紙には、今度のエイデンの補習用のテストの内容が印刷されていた。


「この問題が、今度の補習のテストで出るんやな」

「九十%くらいの確率でね。俺のパパは、この学校の教師をやってるから、間違いは無いよ」

 この内容を暗記すれば、補習の赤点くらいは回避出来る。


 それがエイデンの退学回避の作戦であった。

「いや〜ありがたい。ありがたい。持つべきものは、やはり友やな〜」

 エイデンはアンドリューに肩組みをして彼に感謝を述べる。

 これで自分は大丈夫。

 エイデンはそう確信していた。


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