エイデン 登場
「レイン、仲間を増やすつもりはないか?」
いつもの生徒会室でルビーがレインに声をかける。
「仲間……ですか?」
レインは寝ていた状態から起き上がり、ルビーに答えた。
「あぁ、君の夢を叶える為には、困難も多いだろう?」
「はい。そうですね」
「だから、もう少し仲間がいると思うんだ。私だけでは無く、いざという時、君が頼りに出来る仲間が」
「僕が頼りに出来る仲間、ですか……」
レインは考える。
確かに、この先、兄を倒すとなると。障害も多い。
自分が信頼出来る仲間が居るには、こした事はないだろう。
「うーん。確かに僕も、もう少し仲間が欲しいなとは思ってはいました」
「そうだろう。そうだろ」
「でも中々居ないんですよね。僕の夢について来てくれそうな人って」
兄を倒し王となって国境を無くす。
その途方もない夢についてこれる人間は少ない。
レインは悩んでいた。
「ううむ。確かに具体的に誰を推薦するべきか私も悩む所だな」
ルビーも誰を仲間にするか考えている様子。
コンコン。
その時、生徒会室の扉がノックされた。
「うん? 誰でしょう? こんな時間に」
「入って構わないぞ」
ルビーの声かけに反応して生徒会室の扉が開く。
中に入って来たのはトール先生だった。
「トール先生! どうしたんですか?」
「ほほほ、少しばかり、貴方達に頼みたい事が出来ましてな。直接足を運んだ次第です」
「頼みたい事? 僕達に何の用です?」
「エイデン・ウォーカーという生徒をご存知ですかな?」
「あの男か……」
「誰です?」
「君と同じ一年生だ。中々の問題児だと聞かされている」
レインは、あまり他人には興味を示さない。
故に、その生徒の事は良く分からなかった。
「そのエイデンがどうかしたんですか?」
「ほほほ。実は、彼、この前のテストで赤点を取ってしまいましてな。補習を受ける事になったんです」
「はい」
「ミラリス魔法学校では補習の際、最後に簡単なテストを受けさせます。そのテストに合格しないと退学になってしまうんです」
「えぇ、知ってます」
「実はエイデン君、そのテストに合格するか、どうかも怪しいんです」
「補習用の簡単なテストも合格出来ないんですか……」
「頭が悪い訳ではないんですけどね。そもそも根本的に授業を受ける気が無いといいますか……」
「授業を受ける気が無い?」
「まぁ、彼については会えば分かります」
「で? 私達に頼み事ってなんなんですか?」
「補習を手伝って欲しいんです。彼は魔法の実技の腕前は学年トップクラスなんです。ですが筆記がどうも駄目で。先生では無く生徒からなら、教えを学んでくれるかもしれません」
「要するに僕達に先生をやれって事ですね」
「そうです。お願い出来ますかな?」
レインは実力を隠しているが本気を出せば余裕で筆記も実技も学年トップに立てるレベル。
ルビーはレインの一個上で勿論、学年トップだ。
先生としては申し分ないだろう。
「分かりました。私達でなんとかしてみましょう」
ルビーの一言でレイン達はエイデンの補習授業をする事になった。
「え! エイデンって人、魔法の実技の実力は凄いじゃないですか!」
エイデンの居るクラスに向かう途中。
レインはルビーから渡されたタブレットを見て驚愕する。
タブレットには、エイデンの魔法の実技の試験の実力が書かれているのだが、彼は学年一位を取っていた。
只、学年一位という訳では無い。
彼の魔法の実力だけは、そんじょそこらの魔法使いより格上だった。
「そうなんだ。彼は魔法の実技の試験はまともに受けているらしく、学年一位だ」
「でも、なんで筆記は駄目なんです? この学校、中々赤点なんて取れないですよ」
「まともに授業を受けていればな」
「まともにって、なんですか?」
「私も噂を聞いているだけなんだがな。まぁ会えば分かるだろう」
ルビーはエイデンのいるクラスの扉を開いた。
クラスには三人の生徒が居る。
内、二人は真面目に制服を着こなした一般的な生徒って感じがする。
しかし、最後の一人が可笑しい。
髪は金髪。制服を着崩した明らかな校則違反。
というより見た目は完全なヤンキー。
まさか、こいつがエイデン?
「ほな、流すで〜」
エイデンらしき人物は何故かソウメンを箸でつまんでいる。
そしてクラスに設置された謎の竹の水路。
え? 学校のクラスで流しソウメン?
まさかの光景にたじろぐレイン。
「こら、エイデン。学校で流しソウメンをするな」
明らかな不良スタイルの男にルビーが『エイデン』と言った。
この不良がエイデンで確定。エイデンは不良だった。
「なんや! 俺の自由を邪魔せんといてな。あんたは……おぉ、ルビー会長やないか」
「る、ルビー会長!」
「す、すいません!」
恐らくエイデンに巻き込まれたであろう真面目な生徒二人がルビーの名前を聞いて背筋を正した。
「ルビー会長、俺は今、流しソウメンをしたい気分なんや。邪魔せんといてや〜」
「いや、ここは学校だぞ。やるなら外でやったら、どうだ……」
ルビーの正論。
「嫌や! 俺は教室で流しソウメンがしたかったんや。それが俺の自由や!」
それを拒否するエイデン。いや、自由過ぎるでしょ。
「会長、この不良っぽい少年がエイデンですか?」
「あぁ、そうだ。エイデンは自由過ぎて校内でも問題になっている」
「おぉ、あんた誰や?」
「僕は、レインですが……」
「あんたも流しソウメンしよや。教室でする流しソウメンは楽しいで〜」
「いや、何もこんな所で流しソウメンをしなくたって……」
レインとルビー、二人をそっちのけで、流しソウメンを楽しむエイデン。
「会長、どうしましょう?」
「とりあえず話を聞こう。今は本当は彼は補習の授業に出ないといけないんだ」
「分かりました」
今は放課後。補習の授業そっちのけで流しソウメンをするエイデン。
これはなんとかしないと。




