92.謎の少女を追え
「おい稜、何変なことやってんだ?今一応戦闘中だぜ?」
「誰のおかげでこんな羞恥心に駆られてると思ってんのさ…。」
「あー、二人共?言い合いしてるとこ悪いけど、あの銀髪のおチビちゃん森の方に逃げてっちゃってるよ?」
「「何っ!?」」
ずっと少女の方を見ていた水姫の話では、少女の能力で出した岩人形が攻撃で破壊されて崩れ去ったのを見て、少し怯えた様子の少女は一目散にその場から逃げ出すように走り出したらしい。
「追いかけよう…って言うか、みんなあの子のこと見えてるの?」
俺の問いかけに姉達はそれぞれ肯定を意味する反応を示す。
「よかったぁ。侑があの子の姿が見えないって言うから、俺はてっきり幽霊かなんかの類なのかと。」
「いえ、多分その認識で合ってると思いますよ。」
「えっ嘘、マジで!?」
「話は後よ。あの小さい子追うんでしょ?だったら早く追いかけないと、見失うわよ。」
金恵に言われて話を中断し、少女が見えないことで状況が飲み込めていない侑に簡単に事情を説明した後、俺たちは森に逃げた少女を追うことにした。
「じゃあ悪いけど、侑は今起きたことをログハウスにいるみんなに報告してくれる?」
「わかった。その…、稜君も気をつけてね。」
「ありがとう、じゃあ行ってくるね。」
侑に見送られながら砂浜を後にし、森に入っていった少女を追うべく走り出した。
***
木々が生い茂り、真夜中という時間帯で暗闇に包まれた森は、俺たちの先を行く少女を追うという目的に対してとても不利な場所であった。
唯一の灯りとも言える月の光が遮られた森の中はほぼ視界がゼロと言っても過言ではない。森に入ってから数分経ち、暗闇に目が慣れきてようやく木やその根っこに注意して小走りで進める程度である。
「ギャッ!」
注意してなるべく早く少女に追いつこうと移動してはいるのだが、それでも不意に地面から盛り上がる障害物などに躓いてしまい、さっきから俺は何回も転んでいた。
「稜君大丈夫ですか?」
「んだよだらしねぇなぁ。そんなんじゃ、さっきの奴見失っちまうぞ。」
「心配しなくてもいいよ…。あの子が森の中にいる限り…、木陽の能力で居場所が…わかる…から。」
そう言ってくれている木陽だが。そのすごく頼りになる木陽レーダーはとても眠そうにしており、今にも電池が切れ、いつ寝てしまうかわからないような状態だった。
「みんなはいいよなぁ、幽霊みたいに木とか根っこすり抜けられるんだから。あっ幽霊といえば、さっきの女の子って結局なんなの?人なの?幽霊なの?」
「結論から先に言うと、どちらでもあってそうじゃないってところね。まぁ、私たちと同じようなもんって言った方がわかりやすいわね。だから水姫や木陽の能力による感知に引っかからなかったわけね。」
「あーなるほど。じゃあ、あの子もみんな見たく誰かのギアの能力で顕現してるの?」
「その可能性は低いわね。現にこの島には外からやってきた私たち以外の人間の気配はなかったみたいだし。そう考えると、なんらかの理由で自然発生したゼスト体と考えるのが一番可能性高いわね。」
金恵が説明真剣に説明してくれているが、話が現実離れしてて少し理解しづらいのと。障害物を避けながら聞いているのであまり集中して聞けず、頭に入ってこないと言うのが話を聞いた正直な感想だった。
「そんなに歩きにくいならこれ使う?懐中電灯〜!」
何故か独特な言い方をしながら、水姫は何処からともなく懐中電灯を取り出し辺りを照らし始めた。
「それがあるなら最初から使ってよ…、もう。」
もっと早く出してほしかったと思いつつ、照らされた前方に視線をやると。どこかの草むらが急に音を立て始める。
「なんだぁ?さっきの奴に追いついたか?」
「違う見たいだよ〜。あの子まではまだ距離があるから〜。」
「じゃあ島に元からいた動物とか?」
「いや、さっきも言ったけど。この島について能力で島全体を調べた時、人は愚か他の生き物の生命反応ははほとんどなかったはず。」
そう言われても、昼に見かけた鳥とかが動いているにしては茂みの動き方が大きすぎる気がする。
「じゃあ一体何が…。」
変な緊張感が漂う中、俺たちは揺れ動く茂みに目をやると。次の瞬間、揺れ動く茂みの中から突然何か大きな獣のような影が姿を現す。
「何あれっ?犬、狼!?なんにしても思ったよりもでかいし…。まさか、鉱獣?」
「いや、よく見てみろ稜。こいつ、体が岩で出来てるぜ…。」
火鈴言う通り。姿形は四足歩行の獣のそのものだが、じっくり見てみると体はさっき砂浜で見た岩人形はと同じで岩で出来ている。
このことからこの岩で出来た獣は、逃げたあの少女が残した俺たちを足止めするための役割を任され作られた物であると考えるのが自然だろう。
「みんな注意してください。どうやらあの子が作り出したのは、目の前のその一体だけじゃないようですよ…。」
美月が即座に何かを察知し手に刀を構えると。俺たちの周囲を取り囲むかのように、最初に姿を現した獣岩と同じ個体が複数体姿を見せ始める。
「どうやら、簡単には追わせてはくれないみたいだね…。」
急に訪れた戦闘の気配に、俺たちは今一層改めて気を引き締め直した。




