91.もしかして見てた?
そう…、彼女は静かに俺たちに近づいていた…。
「あっ、そういえばさ。俺たちが昼間遊んでる時、気絶する寸前向こうの岩場の上に小さな女の子がいた気がしたんだけど、侑は見なかった?」
密かに朝になったら聞いてみようと思っていた、昼間に見かけた女の子のことを聞いてみる。
「ううん、私は女の子なんて見てないけど…。でも、確かこの島って無人島だって…。」
「そうなんだけどさ、確かにいた気がするんだよね。」
「ちなみにどんな子だったの?」
「えーっとね…。髪は肩ぐらいまで伸びた銀髪で、目尻に赤い隈取。背は小春よりも小さくて、暑いのに神社の巫女さんが着てるような服着てる…」
ピチャン
「あーそうそう。まさに今侑の後ろにいるような感じ・・・の・・・子・・・。」
水を踏んだときに出る水音に気を取られ、音のした侑の背後の方を見ると。今侑に説明していた通りの特徴を持つ、昼間見かけた女の子が大きな瞳でこちらをじっと見つめていた。
「いたーーーーーーっ!!!」
「えっ、嘘!?どこどこ?」
あまりに急に姿を現したため思ったよりも大きい声を出して驚きつつ、侑に居場所を教えるため少女のいる方向を指差した。
それと同時にすぐ後ろを向く侑。しかし…。
「ねぇ、何処?何処にいるの?」
「えっ、いやそこに…。」
振り返った侑の目の前。すぐそこに少女はいるのに、侑は少女のことを探し続けている。
もしかして、侑にはあの子の姿が見えてないのか?
もしそうなのだとしたら、俺にだけはっきり見えているあの少女はなんなのだろうか?
水姫や木陽の能力で感知できない不思議な人、もしくは人ではない何か。
もしかして幽霊じゃないよな…。
とにかく、この島と同じように謎が多い存在であることは確かなので、一応何が起こっても対応できるように警戒は怠らない。
少し身を低くして、瞬時に動ける体勢をとった瞬間に謎の少女は動きを見せる。
スッ…。
突然自身の手を腰の位置まであげたかと思うと少女の両隣の地面が盛り上がり、少女の背丈の2倍ほどの高さまで上がると、纏っていた砂浜の砂が徐々に落ちて最終的に人の形をした岩が姿を表す。
「キャァ!何あれ!」
突如現れた岩の人形に、侑は驚きの声をあげた。
どうやら少女が出したであろうあの2体の岩人形の姿は侑に見えているらしい。
そんなことを考えていると、形だけだと思っていた岩の人形がまるで自分の意思を持つかのように動き出す。
何かを抱える時のようなポーズを取る岩人形は、その手の部分に人の頭ぐらいの大きさの岩を自身の体から生み出すと、まるでバレーボールのサーブので
も打つように岩の塊を侑に向けて打ち込んだ。
「危ないっ!!!」
放たれた岩の塊から侑助けるために彼女の元に駆け寄り、咄嗟に動いて侑と共に砂浜に倒れ込む。
「大丈夫、侑?」
「うんありがとう。でも、なんなのあれ?」
「わからない…。わからないけど、もしかしたら、今俺だけが見えてるさっき言ってた女の子の仕業かも。」
侑と会話をしている最中に岩人形がまた岩の塊を生成すると、また先ほどと同じように俺たちに向けて岩をこちらに撃ち放ってくる、
倒れ込んだ体勢から侑を抱えて岩を避けるには、飛んでくる岩の速さ的に、少し無理がある。
俺は飛んでくる岩を避けられないとわかった瞬間、侑を庇うように彼女を抱きしめ、侑を庇う選択をした。
とにかく侑を守らないと。
そう思って岩の直撃に備えていた俺だったが、飛んできていた岩はある者の登場で見事に打ち砕かれることになる。
「オラァっ!」
勢いのある掛け声と共に岩を強烈な蹴りで砕いたのは、我らが響八家の次女こと火鈴姉さんだった。
「よくもアタシの可愛い弟と将来稜の嫁になって私たちの未来の妹になるかもしれない娘をイジメてくれたな?」
ん?カリン姉さん?
火鈴のなんだかとんでもない発言にツッコム間もなく、今度は少女の出した岩人形に向かって水と斬撃がそれぞれの岩人形の体を貫いた。
「水姫お姉ちゃん登場!夜の砂浜で水をかけあって遊ぶという激エモシチュエーションを邪魔する悪い子は誰かな?」
「せっかくいい感じでしたのに、本当に無粋ですね。」
美月姉さんに水姫も!?って言うかほんとに何言ってんの?
「可愛い弟の為に我らお助けシスターズ只今参上!!」
よく見たら響八家の五姉妹が揃い踏みで各々統一性はないが、まるで戦隊モノのように各自でポーズを取っていた。
「なんで私までこんなポーズ取らなきゃいけないのよ?」
「え〜、でも楽しいよ〜金恵ちゃん。」
強制的に変なノリに巻き込まれた様子で照れながらもポーズをとる金恵をなんだか眠そうな顔をしている木陽が諭していた。
「ちょっとみんな。助けに来てくれたのは嬉しいんだけど、もしかして、俺と侑が遊んでるの最初から見てたの?」
「「「「・・・・・・。」」」」
さっきまであんなにノリノリに喋っていた四人の口が硬く閉ざされる。どうやら俺と侑が海で遊んでるのを何処から覗いていたらしい。
「そこからじゃないよ〜。稜ちゃんがログハウスから出た時からもごもご…。」
「しーっ、陽ちんちょっと静かにしてよっか。」
聞かれたらまずい話をしていた木陽の素直な口を急いで手で塞ぐ水姫。
だが、もう大部分のことは聞こえているし、思っていたより最初の方から見られていたことを知った俺は恥ずかしさのあまり謎の少女が現れて気が抜けない状況にも関わらず、その場で真っ赤になった顔を両手で覆いながら砂浜に膝をついた。
最近ジメジメして蒸し暑くて、体力どんどん奪われてく感じする。




