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89.遠い星を見ながら Ⅰ

「なんかすみません、お手数かけちゃったみたいで…。」


「気にしないで。最初から怪我人や病人が出た時に面倒を見るために一緒に来たんだから。」


 互いに反対側を向いてベッドに座りながら少し気まずい雰囲気の中で部屋にあった服着ていく。

普通の声の大きさでヨーコ先生と話しているにも関わらず、ベッドで寝ている輪國は寝返りをうつ過程であらわになった自身のお腹をかきながら一向に起きる気配もなく眠り続けていた。


「あっ、そうだわ。もう体調が大丈夫なら、ビーチに行ってみたら?丁度いい時間だし、長いこと眠ってたからまた寝ようにも目が冴えちゃって眠れないでしょ?」


ヨーコ先生が言うには、夕食を食べた時にみんなで話し合った結果夜中に交代で起きて、辺りの見張りをすることになったんだとか。

最初は先生二人。次に燕と櫂。そして丁度今から侑とタツが見張りを交代する時間らしい。

自分は気絶してたから見張りのメンバーに入っておらず、姉さん達もこれ以上俺からゼストを使わないようにこの無駄にデカいログハウスの部屋のどこかで大人しくしてるんだそうだ。見たところゼストもある程度回復し、体も問題なく動くようなので今からでも砂浜に出向いて今まで寝ていた分働くとしよう。


 というか、別に俺のせいで気絶したわけじゃないけど、このまま働きもせず寝てばっかりいたらみんなに申し訳なさすぎて気が気じゃないんだよなぁ…。


 俺はそう考えるといてもたってもいられず、ヨーコ先生にお礼を言った後すぐさま今いる部屋を後にした。


***


 夜空に輝く満天の星。月明かりだけが辺りを照らす夜のビーチに、焚き火の灯りで砂浜に伸びた二つの影があった。


「おっ、何だもう体はいいのか稜。」


 焚き火の側に横たわる椅子代わりの丸太に火を間に挟んで燕と櫂が座っていた。


「ふあ…、丁度よかったぜ稜。タツの奴がまだぐったりしててよ。お前が起きてこなかったら、俺がこのまま朝まで代わりに見張りしなきゃいけないところだったぜ。」


「えっ、タツどうかしたの?」


「いやな、俺が海で泳いで帰ってくる途中の砂浜に何故かタツが首だけ出して埋められた状態でよ。俺が見つけた時には長時間埋められてたせいかものすごく消耗してて、あれからずっと横になったままなんだよ。」


タツの奴、マジで埋められてたんか…。


 金恵が言った埋める発言は冗談ではなかったらしい。もし櫂が運良く見つけてくれなかったらと思うと、笑えない事態になっていたかもしれない。


「じゃあ俺たちはもういくからよ。見張りよろしくな。」


二人は今まで特に異常がなかったことを俺に伝えると、眠たそうな顔でそのままログハウスの方に戻って行った。


 俺はさっきまで二人が座っていた丸太に腰掛け、焚き火に火絶やさないように薪を追加したりした後しばらくぼーっとゆらめく焚き火の火を眺めていた。

 しばらくぶりに訪れた一人っきりの時間の中、俺は改めて砂浜の辺りを見渡してみる。

俺たちが上陸するために突破した島の周りを囲む巨大な石の壁。再生能力があるその壁は当然のことながら、俺たちが島に入るためにあけた入り口はすっかり塞がってしまっていた。帰りもあの壁破壊して、なおかつ魔の海域に住む鉱獣達を退けながら帰らなければならないかと思うと、今から気が重い。

 だが、悪いことばかりではない。

あの壁があるおかげで壁の外側にいる強大な鉱獣達は入って来ず、風も遮られているので海は波一つ立たない凪状態だ。

 上陸してすぐに水姫と木陽がそれぞれ海と森を能力で調べたらこの島は完全に無人島らしく、渡り鳥を除いて鉱獣の気配すらないらしい。

 そのおかげでビーチで何の心配もせずに遊べたのはいいが、完全に無人だったらどうしてあの石壁は再生したのか?誰かが能力を使ったのではないなら何でこの島はどういう風にこの海域に現れたのか。

それに昼間に見かけたあの少女は何だったのか…?

無人島って話だったのに人いるじゃんとか、考えれば考えるほどこの島の謎は尽きない。


まさかあの子幽霊とかじゃないよな…。


そんなことを静まり返った砂浜で考えていると、急に俺の背後から誰かが声をかけてくる。


「あの…。」


「うわあああぁぁぁーーーっ!!!」


急にした声といきなり肩に触れられたことにびっくりして、俺はその場に倒れ込むように転げ回った。


「稜…君?」


「えっ、あ、なんだ侑か…。」


「ごめんねびっくりさせちゃって。燕ちゃん達に稜君が伊月君の代わりに見張りをするって聞いたから、体の方はもういいのかなと思って声をかけたんだけど…。」


「いやいや気にしないで。ちょっと考え事しててぼーっとしてたから、なんか大袈裟に驚いちゃっただけなんだ…。」


その言葉を最後に二人はあの件以来まともに会話していないことを急に思い出し、黙ったまましばらくその場で立ち尽くしていた。


パチッ…。


 静かな砂浜に焚き火で燃やしている木々が少し爆ぜた音を皮切りに二人は同時に互いに何かを話そうとする。


「「……あのっ!!」」


 喋り出しが被ってしまい、再び沈黙が二人に訪れる。


「ごめん、侑から先にどうぞ…。」


「ううん、稜君から先にどうぞ…。」


なんて、よくある会話の譲り合いをその後何回かした後。


「……とりあえず、そこ座ろうか?」


「……うん。」


ずっと立ちっぱなしなのもなんなので、とりあえずさっきまで座っていた丸太を動かして焚き火を挟んで向かい合うようにそれぞれ丸太に座り込んだ。

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