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88.少女との夢と夢であって欲しかったこと。

 浜辺で見かけた少女が何もない暗闇に満ちた空間で一人ポツンと立ち尽くしていた。

 巫女装束に似た服装にあまり見かけない肩まで伸びた透き通るような銀色の髪をしたその少女は俺に背中を向けたまま、こちらに気付いていない様子だった。

 ここは何処でなんで俺たちはこんな空間に二人でいるのか。普通ならそんなようなことが先に気になりそうなものだが、今この瞬間の俺の意識は目の前に居る謎の少女に惹きつけられていた。

 少女の妙に存在感を放つ後ろ姿に少したじろぎながらも、俺は声を振り絞って少女に声をかけた。


『君は誰なの…?』


ここにくる前、気を失う直前に少女に問いたかったが結局できなかった質問が、会話を試みようとした第一声で自然と口から溢れた。


『!』


声かけられてすぐさま振り向いた少女は、長い前髪の隙間から覗く目を僅かに大きく見開いて、少し驚いたようにも見える素振りを見せた。


『急にごめんね、驚かせるつもりはなかったんだけど…。俺は稜、響八稜って言うんだ、よろしくね。』


敵意はないことと、友好の証として握手でもしようと少女に手を差し伸べる。

 それに応えようとしてくれたのか、少女の方もゆっくりとこちらに小さな手をブカブカな服の袖から出し握手に応じようとしてくれたが。何が急に思うところがあったのか、応えようとした手とは逆の手を使い急に伸ばした手を自分の胸元に引き戻す。


『・・・・・・。』


深刻そうな表情をする少女は目に少量の涙を浮かべると、頬にその涙を一筋伝わせながら今いた場所から何処かへ走り出した。


『あっ、待って!』


何か自分が彼女にとって嫌なことをしてしまったのだろうか?すぐに謝ろうと後を追ったが、少女に追いつくどころかどんどん自分との間に距離が開いてゆく。


 俺は必死で少女に向かって手を伸ばし続けた。

自分でも何故だかわからないが、少女をこのまま放って一人にしてはいけない気がしたから。

 だが、そんな俺の意に反して少女の姿はどんどん遠く小さくなってゆく。

 それでも俺は手を伸ばし続ける。そして…


「待って…。」


ムニュッ


 なんだ?何が柔らかいものが伸ばした手に触れた。


 何もない暗闇の中の筈なのに、このなんとも言えない柔らかい物体はなんだ…?

 俺はその柔らかい物体の正体を確かめるように手のひらに意識を集中しながらその物体を触り続けた。


「あっ…♡」


「んっ…。」


俺は不意にした高い声に目を覚まし、寝ぼけて霞む目を擦りながら横になっていた自分の体を起こした。


「……ここ何処だ?」


変な空間からようやく出てきたと思ったら、見覚えのない薄暗い部屋のベッドに自分は何故か寝ていたようだ。部屋が薄暗い理由は窓の外を見て今が夜だからだと分かった。

 起きてから少し経ってようやく暗い部屋に目が慣れた頃、一度よく辺りを見渡してみると俺はとんでもないことに気づく。

 何だか妙に広いベッドに寝ていたと思っていた俺はかけられていた布団をなんとなく取ると、俺の両隣になんと輪國先生とヨーコ先生が一緒になって寝ていたのだ。

 さらによく見てみると、ちゃんとパジャマを着て涎を垂らしながら熟睡している輪國先生とは違って俺の横にいるヨーコ先生は服を一切着ておらず、しかも一糸纏わぬ姿の胸に俺の手が触れているではないか。


 さっきの柔らかい感触はこれだったのか!!


 なんで教師二人が一緒のベットで寝てるのか。そして、なぜヨーコ先生は裸なのか。知りたいことは山ほどあったが、それよりも今はこのバレたらヤバイ状況から一刻も早く脱出することで頭がいっぱいだった。


「そーっと…。」


二人を起こさないように静かにヨーコ先生の胸から手を離し、ベッドから降りる。そのまま入り口と思われるドアに向かって忍足で進んで行った。


 後もう少し…。


「あらっ…起きたの?もう体は大丈夫?」


「!?」


後ろから急に聞こえた声に、俺は思わず振り返る。

するとそこには、今起きたばかりのヨーコ先生がこちらを見ていた。


「あっ、あぁっ…。」


 セクシーな裸体をそのままに、服を着ていないことなど意にも介していない様子のヨーコ先生が俺に向かって喋り続けた。


「友子先生もみんなも心配してたわよ。いきなり倒れるんですもの。とりあえず日差しの当たらないこの木陽さんが作ったって言うログハウスに運んだんだけど、いつの間にか付き添ってた私と友子先生も一緒に寝ちゃったのね。」


「なっ、なんで裸…。」


「ん?あぁこれ?ごめんなさい、私普段家では裸族だから、寝ているうちに寝ぼけて服を脱いじゃったみたい。でも、そう言う響八君も何も着てないんだからお互い様よね?」


俺は慌てて下を向き、その瞬間自分も服を着ておらず全裸であることを認識した。


「(声にならない悲鳴)」


 急いで局部に手を当てて隠し顔を上げたが、その視線の先でくすくす笑っているヨーコ先生を見て、俺は顔を真っ赤にしながら声にならない叫び声を上げた…。

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