9.高校生活開始です!
「寝癖よし、ネクタイよし、忘れ物なし。よしっ!準備OK。」
今日この日、俺はこれでもかというぐらいに身支度の確認をしていた。
それもそのはず、今日は合格した高校に初登校の日なのだ。
自然と浮き足立ってしまうのも仕方ないだろう。
軽い朝食を済ませた後、出かける前に家の仏壇の前に正座し目を閉じて手を合わせる。
「姉さん、俺、姉さんのおかげで高校生になれたよ…。」
姉さんが亡くなってから一年、色んなことがあった。
流れ星が降ってきて、家族が増えたり。高校受験するために、特訓したり。その他にも家族との思い出はたくさん増えた。
「まだまだ心配かけちゃうかもしれないけど、これからも頑張って生きていくから、これからもどうか見守っててください。」
「稜君、そろそろ行きますよ。」
「今行くよ美月姉さん。それじゃあ行ってきます。」
玄関のドアを開けて、高校生活という新たな人生へと新たな一歩を踏み出した。
***
「はぁ…、どうしてこんなことに。」
今は学校に着き、クラス分けを確認してそのクラスの自分の席に座ったところなのだが、そこまでの短い道のりは軽く苦痛だった。
〜通学路〜
家を出てすぐまでよかった。
よく知る近所の道でも、寄り道するところも特に見当たらほど短い通学路でも、今日から三年間通う通学路というだけでなんだか見方も少し変わって新鮮で楽しい。
そんな中ちょっとだけ違和感を感じた。
なんか道で会う人にチラチラ見られてる気がする。気にしすぎかと思ったけど、その違和感はすぐに確信に変わる。
「ねぇ、あの人? ありえないくらい美人の人たちと何股かしてるってうわさのひとでしょ?」
ん!?
「そうそう、毎回別の女の人と一緒にいるのを近所の友達が見たって。」
おい、ちょっと待て。
自分の少し後方を歩く二人女子生徒が俺の方を見てしているヒソヒソ話が偶然耳に入った。
何で、そんな噂になっているんだ? あれか?
日替わりで護衛してもらってる時、姉妹達が姿出して買い物とか一緒に出かけてたのを見られてたってこと!?
それだけでそんなことになるか?とも少し考えたが、あれだけ美人で人目につきやすい彼女達と一緒にいるのだ。充分あり得るかもと自分の中で自己完結した。
「知らないふり知らないふり。」
出先では彼女たちに、不用意に出たり消えたりするなと言ってたから外で会う人たちは彼女たちが生身の人間としか思わないだろう。
説明して誤解を解くのは無理なので、とりあえず早足でその場から離れる。
「ここまでくればいいか?」
先ほどの女子二人の姿が見えなくなるように、曲がり道などを駆使して2人を撒いた。
さて、気を取り直して初登校の通学路を楽しみますか。
その時だった。
「ちょっとあの子…、例のバイクで暴走行為してるっていう近所の子じゃない。」
今度はゴミ捨てで出てきていたのであろう、その時に集まって井戸端会議に花を咲かせていた近所の主婦たちが俺の方を向いて、何か言っている。
なんだろう、この既視感のある状況は…。
俺はバイクの免許なんて持ってない。あれは火鈴がロープで繋いで俺を引っ張ったり、逆に追いかけたりしてスリリングな特訓をしていただけだ。
その噂に尾鰭がついて、俺が暴走したことになってるのか?
「いやねぇ、あんなに普通そうな子が暴走してるなんて。
「ああいう子に限って見てないところでは何してるかわからないってことじゃないの?」
すみません。暴走して、迷惑かけて。
それは素直に謝ります。
でも誤解なんです。自分は不良とかではないんです。信じてください!
実際には誤解を解く勇気も出せず、心の叫びを押し殺しながらさっきと同様この場をエスケープした。
逃げている時に頭の中で、気にすんなとか。
あら、私たちそんなふうに見られてたのうふふ、なんて舞い上がってたりしてたみたいだが。
元はと言えば、姉さん達のせいなんだからね?
わかってる?
色々言いたいことはあるが、今は一刻も早くこの場を離れたかったので、何も言わずにそそくさと再び学校へ急いだ。
〜現在〜
あの後同じようなことが何回かあって、回り道をしまくった挙句、危うく遅刻しそうになるほどギリギリの登校になってしまった。
あれだけ楽しい気分で家を出たのに、学校に着いた頃にはどっと疲れていた。
「おはよう、響八君。また一緒のクラスだね。、これからよろしく。」
色々あって憂鬱だった気分の俺に、一吹きのそよ風が流れ込んだ。
声の主は瀬川さん。
掲示板に張り出されてたクラス分けを見て知っていたが、また同じクラスなられるとは。
彼女の朗らかな笑顔を見た途端、先程まで荒んでいた心がみるみる浄化されていく。
「おはよう、瀬川さん。こちらこそよろしくね。それにしても珍しいね。瀬川さんがこんな遅い時間に教室来るなんて。」
彼女は中学では頭に超がつくほどの優等生だった。
そんな彼女が入学式のある日にギリギリに学校に来るのが少し不思議だった。
「ううん、ちょっと朝用があって…。」
そう言った彼女はこちらから目を逸らした。
何やら事情があるのかもしれない。2人の間に少しの沈黙の時間が流れる。
しかし、この時間は長くは続かなかった。
「グッモーニング、新入生のみんな!調子はどうかなー?私はこの1年G組の担任の輪國 友子。これから一年よろしくねー!」
勢いよく開け放たれた扉の奥から勢いよく登場したのは、妙にハイテンションな性格の女性教師だった。




