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8.合否の行方(まぁ、結果は分かりきってるんですけどね。)

あぁ…、ここは暗くて落ち着く。

光がほぼ入ってない場所で、膝を抱えて小さくうずくまる。試験でやらかして、多分合格が絶望的な今の俺にとってはお似合いの場所だ。

このまま、消えてなくなってしまいたい。

そんなことを考えていると、光のない場所に突如として大量の光が差し込んだ。


「またこんなところに入って…、さぁご飯にしましょ。みんな待ってるんですから、早く出てきてください。」


俺が入っていたのは自宅にある襖の中。高校受験の日から数日経つが、いまだに立ち直れずに、最近はよくここに引きこもっている。

そこへ、晩御飯の準備を終えた割烹着姿の美月が戸を開け、顔を覗かせた。


「今行くよ…美月姉さん。」


床を這いながら、みんなが待つちゃぶ台へと向かう。

台に置かれた食事をゆっくりと口に運んでいると、食卓に漂う重苦しい空気を裂くように美月が口を開いた。


「稜君? 気持ちはわかりますけど、そろそろしっかりしてくださいね? いよいよ今日なんですから、合格発表は。」

「わかってるんだけどさ、どう考えても不合格としか思えないんだよね、あんなことした後だとさ。」


気を失った後、俺は学校の保健室で目を覚ました。

保健先生によると、俺が気絶したのは膨大な量のゼストを使ったことによる貧血みたいなものらしい。

少しベットで寝かせてもらったらなんともなくなっていた。

目を覚ました後、係の人が来て合格発表の日時などの必要事項を伝え終わると、校門まで見送ってくれた。

その時の係の人の表情は今でも覚えている。誰が見てもわかるような作り笑いだった。

多分失態をやらかした俺にどんな顔をしていいかわからなかったのだろう。俺は試験の時と係の人のあの顔を三日三晩夢に見るほどトラウマになっていた。


「これからどうしよう…。」

「だっ、大丈夫だって稜ちん。確かに第一志望は無理かもだけど、稜ちん滑り止めの高校いくつか選んで、願書出してたじゃん。そっち頑張ろうよ。」

「そっそうよ。一度の失敗で挫けちゃダメよ。まだまだ受験はこれからよ。」


責任を感じてか、いつもは慰めを言うタイプではない水姫と金恵が慌ててフォローしてくれた。


「そっ、そうだね。そうだよね!? 第一志望はもう無理かもだけど、まだは高校に行けなくなったと決まったわけじゃないよね。」


そうだまだ受験は終わってない、一度の失敗がなんだ。まだまだ受験はこれからだ。


「そういえば、願書は火鈴と木陽がそれぞれ出しに行ってましたよね。」

「あー、あれね。あれなら燃やしたから出してないぞ。」


ん? 今なんて?


「あ〜、あれ〜? 散歩してて〜、途中で会った猫ちゃんと遊んでたら〜、いつの間にか無くしちゃった〜。ごめんね〜?」


は!? はあぁぁぁーーーーーー!!!???

生まれて初めて発する魂の叫び。


「安心しろ、俺たちが特訓したんだ。100パー受かってるって。それに、人生は高校受験に落ちた程度じゃ終わったりしねぇよ。」


少し言葉が矛盾してる気がするんですけど?

100パーじゃねぇじゃん。諦めも肝心的なこと言っちゃってるじゃん。

急な展開の連続に、もう怒る気力すら削がれた。

少し落ち着いたら、今直面している現実に引き戻された。

期間的に、今から準備して受けれる高校は多分ない。それ以前に、もう心から折れた。我ながら感情の上げ下げが激しいと感じる。

とにかく、俺の高校受験はこうして終わった。

高校受験編これにて完。次回からは中卒苦労人響八稜編がはじまります。


「あっ、そろそろ合格発表の時間じゃない? 稜ちん見ないなら私見ちゃうよ?」


もう好きにしてください。俺は寝てるから、ご自由にどうぞ。


「今はネットで見れちゃうから便利だよねぇ。どれどれ〜。」


俺は興味がないふりがしつつ、背中越しに合格発表を見るみんなのリアクションに聞き耳を立てていた。


「ねぇ稜ちん、これ。ちょっと残念かもだけど…。」


この感じやっぱり落ちてるよなぁ…。

パソコンを持って後ろに立つ水姫の方へ寝転がり、パソコンに映し出されている試験結果を見る。

そこには、自分の考えていたものとは真逆の結果が映し出されていた。




〜受験後、AHD本校舎会議室〜




受験ぎ終わり、AHD高校の教師達は会議室に集まり、生徒の合否について話し合っていた。


「お疲れ様でしたみなさん。これで後一人の生徒を残して、他全ての受験生の合否についての話し合いは終了となります。」

「例の生徒のことですね。まさか面接室を破壊する生徒が現れるとは。この学校始まって以来の大事件ですな。」

「幸い、面接を担当していた先生方は命に別状はないそうです。」

「こんなことをしでかした以上突然不合格…となるんですが・・・。」


さっきまで饒舌に話していた 教師達は、急に頭を抱えてその場に黙り込んだ。


「しかし、彼の見せた能力。2つならまだしも、5つの能力を同時に発動させるなんて。数は違えど、まるで我が校で唯一7つの能力を使うことのできた彼女(・・)のようではないですか。」


「諸君、結論はもう出ているのではないかね?」


教師達は入室してきた明らかに身分の高そうな振る舞いをする男が入ってきた瞬間、一段と場の空気が緊張感を帯びた。


「り、理事長。まさか自らお越しになるとは。何か問題でも…。」

「見させてもらったよ、この響八稜という生徒の試験結果を。面白いじゃないか。ゼストの測定器を破壊し、五つの能力を使う生徒。落とすには惜しい人材だ。」

「そっそうではございますが、これだけの問題を起こしたのも事実でございますし、ただ合格させるわけにも…。」


理事長は顎に手を当て少し考え込むと、すぐにまた口を開いた。


「ではこうしよう。響八稜彼は…」




〜響八家〜




パンッ、パンッ。


「稜、合格おめでとー!!!いやーよかったよかった。」

「一時はどうなることかと思ったけど、なんとかなって良かったわね。」


前もって準備してたのか、どこからともなく取り出したクラッカーを火鈴は派手に鳴らした。

合格を知った響八家一同はさっきまでのお通夜ムードとは一転、合格おめでとうパーティーが開催される運びとなった。


「本当に良かったわ。残念回ように食材買ってたのに、まさか合格祝いになるなんて。」


ちょっと美月姉さん? やっぱり無理だと思ってたの?

 いや、今はどうでもいい。合格した嬉しさに比べたらそんなこと些細な問題さ。


「でもまさか合格したとはいえ、下級クラス(・・・・・)とはねぇ。」

「水姫が残念そうに話しかけてきたから、落ちたかと思ったよ。でも合格は合格だよ。合格できさえすれば、今は幸せだよ。」

「それもそうだね、じゃあ今は目一杯楽しんじゃおっか!?」

「稜ちゃん、おめでと〜。」


 みんなテンションが上がって、各自持った飲み物が入った入ったグラスを乾杯しつつ用意された料理を楽しんだ。




〜AHD高校理事長室〜




夕日の日差しと影が入り混じる一室に、理事長は

机に座りながらある資料を見ていた。


「これは偶然か、はたまた運命なのか。彼女と同じ姓を名乗る五つの能力を操る少年。」


放るように机に置いた資料を見ながら少し微笑む理事長。


「本来ならばこれだけの才能を示したら即特級クラス入りなのだが、ここは下級クラスに入れて様子でも見るか。何、実力が本当ならば遅かれ早かれ上へと上がってるからさ。楽しませてもらうよ。」


理事長は椅子からゆっくり立ち上がると、出入り口に向かってゆっくりと歩き出す。


「精々楽しませてくれたまえ、響八 叶愛(かのあ)の弟、響八稜君…。」


理事長が部屋から出て行ってすぐ日は完全に落ち、部屋は完全な暗闇に包まれた。


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