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7.受験で力を示します!

ついに受験当日。


「ここが、試験会場。俺が入ろうとしてる高校の校舎。」


正面入口の校門を見ればわかる。パンフレットにも書いていただけではピンとこなかったが、実際に見てみると、校舎の敷地はとてつもなく広い。

油断してると迷子になりそうなほど。

東京ドーム何個分くらいだろう。


「受験者の皆様は係員の指示に従って、会場まで移動してください。」


 中央通路にいる複数人の係員の誘導によって大勢の受験参加者達が一斉に会場に吸い込まれていく。


「あれ? 響八君? 奇遇だね、まさか響八君もこの高校受けるだなんて。」


人混みの中から自分に声をかけたのは、同じ中学で昔から交流のある瀬川さんだった。


「あれ?瀬川さん?瀬川さんもこの高校受験するんだ。」

「うん、私実は能力に適性があってね。とは言っても、簡単な回復能力だけど。」


能力は一般の学校はおろか、日常での使用すら国が法律で禁止している。使えるのは国が発行したライセンスを持つ一部の人間だけ。

 なので、同じ中学の同級生と言っても、能力に適性のある人間かどうかを知らないことは珍しいことではない。


「そうだったんだ。でも、なんだか知ってる人がいて少し安心したよ。お互い合格できるように頑張ろうね。」

「うん! また同級生になれるように頑張ろうね。」


『おいおい稜、誰だよこの正統派美少女のかわい子ちゃんは?』

『うふふっ、稜君も隅に置けないわね。』


 突然頭の中に声が響く。


「ちょっと、今瀬川さんと話してるんだから、黙っててよ二人とも。」

「響八君?どうかしたの?」

「なっ、なんでもないよ!? あっ俺の時間会場あったみたいだから。じゃまたね。」

「ううん、またね...。」


小さく手を振る瀬川さんと別れ、足早に試験会場へと急いだ。


『なんでそんな急いでんだ? まだ時間には余裕あんだろ?じゃあまださっきの子と話しててもやったんじゃねーか?』

『ダメよ、火鈴。さっきの子も遊びに来てるんじゃないから、貴重な最後の予習時間を奪うようなことしちゃ。』

「わかってねーな美月姉。ああ言うタイプがこんな時に話しかけてくるって言うのは稜に少なからず気があるってことだ。こういうチャンスはそうあるもんじゃねぇ。ちゃんとチャンスはものにしたかなーともったいねぇーだろうが。なぁ? 稜』

「緊張してるんだから、少し静かにしててよ二人とも。あと、瀬川さんとはそういうんじゃないから。」


周りがブツブツ小声で一人話している俺を不思議そうな目で見てくる。

それもそうだ、周りには誰もいない。


『稜ちん、わざわざ声に出さなくても頭の中で会話できるだよ?』

「わかってるけど、まだ慣れないんだよなこれ。」


そう、(はた)からみたら一人だが、実際には消えてるだけで姉妹全員指輪の中に入って付いて来ている。

いつもはみんな姿を表して、好き勝手やってるイメージだと思うが実際はそうではない。

朝と晩御飯の時以外は前もって予定がある者以外は姿を消して指輪に入っている。

それ以外は曜日ごとに交代制で一人ずつ俺の護衛なんかをしているのだ。

その割り当ては特訓の時と同じだ。(土日はほぼ美月が担当)


「とにかく、集中したいからみんななるべく静かにしててね。」

『『『『『は〜い』』』』』

『でも、もしどうしても困ったことがあったら言えよ。カンニングでもなんでも手助けしてやっから。』


有難いことだけど、万が一バレたら洒落にならないし、極力自分の力だけでやりたいから本当に大人しくしててください、一生のお願いだから。






「時間になりましたのでペンを置いて、解答用紙を前へ回してください。」


いよいよ試験が始まった。試験は大まかに分けて三つある。まずは今終わった学力試験。ここはまぁ普通の高校入試と変わらない。そこに能力についての歴史や基礎知識を問われる。

これは、金恵にみっちり教えてもらったからかなり手応えがあったと思う。

次に能力測定。会場を移動して、複数の測定器の前に列になって並ぶ。ここでは能力を使う際に消費する、ゼスト、と呼ばれるエネルギーがどれだけあるかを検査する。


「次、機械に手を当てて。」


試験管に言われるがままに手を当てる。

前に受けてた受験者は平均以上の数値が出ると会場は少なからず沸いていた。

確か、ゼストの平均量は100前後と教えてもらった気がする。


「よしっ...。」


集中しろ。試験は実技のここからが本番だ。

ゼストについての対策も散々やってきた。

ゼストの量は当人の精神力に比例して増える。

美月と火鈴の特訓で体を鍛えまくってた甲斐もあって、体力にはちょっと自信がある。

やばい、思い出したら少し気持ち悪くなってきた。


「ふんっ!!!」


手のひらから機械の水晶部分に向けて、ゼストを流していく。ゼストの扱い方は木陽との特訓で学んだ。とにかく力まずに、自然体であること。それがコツだと言っていた。今は簡単なゼストの操作なら無意識にできる。


ピシッ。


「ん? なんだ?」


ゼストを流されて光り輝く水晶の様子がおかしい。


「す、ストップ。やめてください、これ以上は機会が壊れてしまいます。新入生用の設定とはいえ、こんなこと初めてだわ。」


なんだかよくわからないけど、まだまだ少し力入れただけだったんだけどな。試験管が驚いてたってことはいい手応えなんじゃないかな?

ゼストの試験を終え、俺は最終試験の面接会場へと向かった。




コンコンッ。


「どうぞ、お入りください。」

「失礼します。」


 部屋に入ると五人ほどの教員達が席についており、その正面にパイプ椅子が一つ置かれていた。

よくある圧迫面接のような形式だ。

部屋の中を伺いつつ、入室し、一礼してから、パイプ椅子の隣まで行く。


「どうぞ、おかけください。」

「はいっ、失礼します。」


 着席してからは、志望動機やあらかじめ学校側が用意した質問に答えていく。


「では最後に、自己アピールをお願いします。」


ここだ!

この高校を受験するにおいて最重要と言っても過言ではない項目がこの自己アピールタイムである。

ここでのアピール良し悪しが、合否を決めると言ってもいいだろう。


「はいっ!」


返事と共に椅子から立ち上がり、手を前にかざす。

ここで俺がやるアピールはあらかじめ決めてある。

シンプルにこの指輪の能力、つまり姉妹の誰かしらの能力をゼストを流し込んで派手に発動すればいい。

集中力はここにきて最高潮に高まってる、あとは能力を試験管達に見せて度肝を抜いてやればいい。

あれっ、ちょっと待って…。誰の能力使うんだっけ?

思えばここまで段取り通りに進んできたが、肝心の誰の能力を使うか決めてなかった。

そんなの適当に使えばいいじゃんとかみんなは思うかもしれないが、人間が集中してる時に、複数の選択肢を急に迫られると、少しの間思考がフリーズするのだ。


「君、どうかしたのかね?」

「いっいえ、なんでもありません。すみません、今やります。」


どうする、誰の能力を使う?

ここにきて即決できない自分の優柔不断さが憎い。


『何を悩むことがあんだよ、稜。』

『そうだよ、稜ちん。簡単じゃん。』

『うんうん。そーだよ〜。』

『そうね、簡単よ。』

『ですね。』


急に脳内で姉妹達の意見が俺の意見を差し置いて一致し始める。

俺が考えていても決まらない、ならここはみんなに任せる。


『頼むよ、みんな!!!』


ここでようやくゼストを精一杯指輪に流し込む。


『『『『『了解!!!』』』』』


みんなが返事をしたかと思えば、ゼストに応じて様々な現象が一斉に起こり始める。


床を突き破って出てくる無数の剣や尖った鋼、それに樹木。燃え盛る火炎や、大量の水の5つが同時に顕現し、室内を埋め尽くした。

それらは座ってる試験管達を巻き込んで、教室の窓や壁を破壊し尽くした。


「やらかした…。」


確かにみんなに最終的に任せた自分の責任でもあるのだが、だからってみんな一斉にやるとは思わないじゃん。

そんなことより、どうすんのこれ?試験管全員気絶してるんですけど?

まさかの事態に俺の頭の中もパニックになり、そのせいで乱れた自律神経が動機や眩暈、過呼吸か一斉に起こり始める。


『あちゃー、まさかみんな一斉にあんな派手にやるとはな。俺だけでよかったんじゃね?』

『あら火鈴、一人だけ抜け駆けはなしよ。』

『そーだよ火鈴ちん、私もやりたーい。』

『そ〜だ、そ〜だ〜。』

『私の能力が一番普通に近いからいいかなって思ったけど、五人同時はやりすぎたわね。』


ことの重大さなどお構いなしに好き勝手しゃべる姉妹達の会話を脳が処理するのを最後に俺はここで気を失う。

この事件は、次の面接予定の生徒に発見され。後に能力人材開発高等学校、通称AHDの天災として語り継がれることを、俺はまだ知らない。

1日1話ずつ投稿して、一週間が経ちました。

まだまだ始めたばかりでわからないことばかりですが、読んでくれた人が少しでも楽しんでくれる話を書いたり、投稿頻度を少しでも上げられるように頑張りたいです。

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