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84.島へ突入せよ!

「飛ばすぞっ!!お前ら、振り落とされないようにどっかに捕まれっ!!」


火鈴の掛け声で皆咄嗟に船の一部に捕まりだす共に船のエンジンが物凄い音を出し、船が勢いよく急発進を始める。


「うわっ!?」


スピードの出しすぎで船の先端が浮き、デッキが傾いた事でバランスを崩して転びかけだが、そのスピードのお陰で船の両側面と後方にいた鉱獣から即座に距離が取れた。これは火鈴の好判断のおかげだ。

 しかし、突如現れた危機(鉱獣)はまだ終わった訳じゃない。前方に現れた鉱獣が俺たちの行方を阻む。


「この前進んだらぶつかるぞ!」


「あーしに任せてっ!あーしの能力が最大限活かせるこの(フィールド)で、あんな鉱獣にデカい顔させないよっ!」


大口を開けて船を迎え撃とうとしている鉱獣に向かって手を伸ばす水姫。船の周りの広大な海一帯にゼストを流し込み大量の水を支配下に置いたかと思うと、その海水を勢いよく鉱獣の顔に放出して巨大な鉱獣を弾き飛ばした。

 弾き飛ばされた鉱獣は海面に倒れ込み、大量の海水が宙を舞う。その後俺たちの頭上に雨のように降り注ぐ海水を、水姫は鉱獣に目にもの見せてやったという顔をしながら満足そうに浴びていた。


「よっしゃあっ、ドンドン進むぜぇっ!」


その後も魔の海域を進むに連れてどんどん湧いてくる鉱獣達を、みんなの能力による攻撃や船の操縦テクニックを駆使してなんとかと突破していく俺たち。大分進んだと思った頃、前方にようやく目的の島が見えてくる。


「島だっ、島が見えてきたぞ!!」


「やったっすねヒービー。なんとかこの世のものと思えないこの状況におわりがみえてきたっすね。」


「そうだなタツ。だけど、まだ何が起こるかわからないから気を抜かないように頑張ろう。」


あれだけいた鉱獣達を退け続けた成果か、周りにはもう鉱獣はほとんどいなくなっていた。

 このままいけば、なんとかあの島に上陸できそうだ。そんなことを考えていたら、後ろにいた侑が前方を指さして声を上げる。


「稜君、前!あれ見て!海の中から何か出てきたよ!!」


別の方向を警戒していた俺はすぐさま侑の指し示す方に顔を向けた。確かに海から何か今までの鉱獣より大きなものが競り上がってくる。


「なんだあれ!?壁?巨大な石壁だぁ!!」


まるで島に入ることを拒むかのように下から生えてきた巨大な石の壁。誰がこんなことをとか、何で海から石壁が生えてくるのか色々気になる所ではあるが、今はそんなことを言ってる場合ではない。

さっきまで鉱獣達を振り切るためにフルスピードで移動してきたせいで、いきなり石壁が出現し止まらなければいけないのにスピードが出過ぎて止まらない。このままだと石壁にぶつかって一巻の終わりだ。


「このままじゃあ…。せっかくここまで来たのに。」


「何諦めてるんですか?私達がついていると言うのに…。」


こんな状況にも関わらず、顔色ひとつ変えずにいつも通りの様子の美月がゆっくりともといた場所から船の先端の方へと歩いてゆく。


「今回は言葉の意味そのまま壁ですが。今後それ以外のどんな障害が稜君に降りかかろうと、私達の力を持っていかなる道でも切り拓いて見せましょう。」


そう言い終わるや否や、美月の腰に刀が出現する。

その刀に手を添え居合の要領で構えを取ると、鞘から刀が抜かれたのが視認できぬ速度で抜刀された刀が壁に向かって斬撃を放つ。

 大海を吹く風がごとく進む斬撃が壁に届いた時、美月は鞘に抜いた刀を収めた。

その瞬間、分厚そうだった石の壁を通り抜けた無数の斬撃に沿って徐々に切れ目が入ってゆき、最後にはバラバラ崩壊し始める。


「さっ、流石です師匠!この燕、まだ未熟ゆえ師匠が放った斬撃が一つにしか見えませんでしたが。よもやあのように頑丈な壁をいとも簡単に切り崩してしまうとは、私、感動いたしました。」


「ありがとう燕。ですが、まだ浮かれるには早そうですね…。」


美月は自分の斬った壁を見てあることに気づいていた。斬った筈の壁が、ゆっくりと再生し始めている。


「せっかく美月姉が入り口作ってくれたんだ。このままフルスピードで突っ切るぜ!!」


火鈴は船のエンジン全開で一直線に開いた穴へと向かう。


「間に合えぇーーーっ!!!」


皆今思っていることは同じだろう。おそらくあの壁を越えさえすれば、目的の島への上陸するという調査の為の第一段階が叶う。

どうにか壁が再生しきる前にあの壁を越えてくれ。

みんなの想いをのせた船は、ついに壁の目と鼻の先まで迫る。

そして、もう僅かに船が通れそうな大きさにしか空いてない穴目掛けて、船は飛び込んだ。

 途中ガリガリとすごい音を立てながら狭まる穴の内側に船体を擦りながらも、確かに穴の出口から差し込む光に向かって船は進む。


 そしてようやく…。俺たちは再び外の陽の光に包まれてながら、壁の内側へと入り込んだ。


「みんな生きてますか?」


この美月の落ち着き払った一言に、船の内外問わず乗っていた全員がその声に応じ、皆の無事が確認される。


「ここが…、俺たちの目指していた島か…。」


俺たちはたどり着いた。未だかつて誰も足を踏み入れたことのない、未知の(りょういき)に。

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