75.タツ、暴走?
まだまだ続くよ打ち上げ回!
楽しい打ち上げが始まってしばらく経ち、もうすっかり夜も更けた。ふと部屋を見渡してみると、疲れが出たのか皆もれなく船を漕ぎ出していた。姉妹の一部と一人の人物を除いては…。
「いや〜、もう本当最っっっ高でした!」
突如開催された水樹のミニライブに大満足の様子のタツが、飲み物を求めて俺の隣に座り込む。
結局、水姫が引っ張り出してきたカラオケのマイクは水姫以外が握ることはなく、今の今まで長い時間ずっと水姫がひたすら歌い続けていたのだ。
新しい曲を歌うたびに歌唱に熱が入り声が大きくなっていく水姫見て。
『"ご近所迷惑でしょ!!"』
と、美月に怒られ。罰として水姫は料理の後片付けを手伝わされることになり、台所に連行されて行ってしまった為ライブはお開きになった。
大分激しく応援していたタツは対抗戦中よりも大量の朝をかいており、テーブルに置いてあった飲み物を美味しそうに一気に飲み干した。
「プハーッ!生き返ったっす〜。あっ、ところでヒービー。自分一つヒービーに聞きたいことがあるんすけど、聞いてもいいっすか?」
「なんだよタツいきなり?別にいいけど。それで、聞きたいことって!?」
聞いてもいいかと言ってきたくせに、どこか聞きにくそうに少し黙ってからタツは口を開いた。
「ヒービーと瀬川嬢って…、お付き合いしてたりします?」
「ブハアッ、ゲホッゲホッ…。な、何いきなり変なこと聞いてんだよ!?」
タツと一緒のタイミングで飲んでいた途中の飲み物を、タツの質問にびっくりした俺は盛大に吹き出した。
「えっ、その慌てよう…。もしかして大当たりってことっすか?」
「ばっ、違うよ!飲み物が変なところに入ってむせただけだ!ってゆうか、なんでいきなりそんな変なこと聞くんだよ!?」
「いやだって…。ここ最近、厳密に言うと対抗戦始まる前辺りからお互いたまにですけど下の名前で呼び合ってますよね?」
「なっ、それは…。」
対抗戦前日の夜から瀬川さんのことを侑と下の名前で呼ぶようになったのだが。みんなの前で急に侑と下の名前で呼ぶのはなんか恥ずかしいので、いつも通り苗字で呼ぶようにしてたのだが。気を抜いて何回かみんなの前で侑と呼んでしまっていた時があった。
それをタツに見られ、疑問に思われたから質問してきたと言うわけか。
「対抗戦前日も二人だけでアパートの外でいい感じに話してましたし。これもう二人付き合っちゃってんでしょって思ってたんす。」
「そんなわけないだろ。俺と瀬川さんはあくまで同じクラスでたまたま同じアパートに暮らすことになった幼馴染ってだけの関係だよ。それ以上でも以下でもない。」
「怪しいっすね…。自分はもうやることやっちゃってるのかと思ったんですけどね。こういう話を兵藤氏とカカっさんにしても、下の名前で呼び合うことぐらい普通だろとか。興味ねーとか言ってイマイチ盛り上がらないんすよね。」
なんだか今日のタツしつこいな…。恋バナに興味あるような性格でもないし。というか話の仕方的に恋バナというより下ネタチックなものを期待するような邪な目をしているような感じだ。
気になった俺は、タツが飲み干したグラスを手に取り、匂いを嗅いでみた。
すると俺の睨んだ通り、グラスからは僅かにアルコールの匂いがした。
おおかた火鈴が飲んでいた酒がテーブルにいくつか置かれた飲み物の中に混じっていたのだろう。
つまり、タツの様子が少しおかしいのは誤って飲んでしまった酒に酔っぱらってしまっているから。
「ほら〜、早くゲロっちまってくださいよ〜。本当はあんなことやこんなことやってるんでしょ〜?しかも幼馴染となんて、最高じゃないっすか〜。」
酒を飲んだタツは、顔が赤みを帯びてくると共に言動が危うくなってゆく。
「あーあ、自分も幼馴染と〇〇○したり〇〇○とか○〇〇○したりしたいっすよ〜。」
「なんて事口走ってんだタツ。お願いだから正気に戻れタツ。あんましそういう事大声で言ってると、女性だらけのこのアパートで生きていけなくなるぞタツ〜ッ!!」
タツの肩を掴み、激しく前後に揺すりながら必死に訴える俺の言葉は悲しくも届かず。タツの危うい言動は続いてゆく…、かに思われた。
「あー、もう誰でもいいから自分とセッ…」
「不愉快だから少し黙りなさい。」
タツの台詞を遮るように、金恵は背後に現れたかと思うと突然タツの首に素早い手刀が炸裂する。
バタッ…。
手刀を喰らったタツは、まるで魂が抜き取られたかのようにその場に倒れ込むと、金恵に服の襟を掴まれ適当な場所に放り投げられた。
「酒飲んだくらいで猿みたいに発情しちゃってバッカみたい。そんなに穴に突っ込みたいなら、ちくわとかの穴にでも突っ込んでればいいのよ。」
いきなり現れた金恵はタツの下ネタ発言に酷く不快感を覚えたのか、目つきがファミレスで一瞬見せたガラの悪い態度をとった時のようになっていた。
そんな金恵はタツを片付けると同時に空いた俺の隣に黙って座り込んだ。




