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74.騒げ、打ち上げ回

「対抗戦お疲れ様でしたー!それでは我々G組の勝利を祝して、カンパ〜イ!!」


「「「「カンパ〜イ!!」」」」


いつものアパートの一室に、グラス同士がぶつかり合うと共に乾杯の掛け声が響き渡る。

対抗戦が終了した後、自宅でみんなと祝勝会をしようということになり。学校帰りに色々と買い物をした後、響八家の部屋でみんなで集まっていた。


「わーい!美味しそうなお菓子とか、ご飯がいっぱーい!!」


「ホントだねぇ。でも、せっかくの学校行事で勝った祝いの席にアタシたちまでお邪魔しちゃって。」


「何を言ってるんですか初代さん。初代さんも美咲ちゃんもこのアパートで一緒に暮らす仲間みたいなもんじゃないですか。それに、お祝いは人数多い方がいいですから。遠慮せずに思う存分楽しんでください。」


「そうかい?じゃあ、お言葉に甘えるとするかね。」


 初代さんはそう言うと、テーブルに並べられた料理を小皿に取り分け、まるで本当の祖母と孫の様に美咲ちゃんと料理を楽しんでいた。


「そうだよ〜。みんな遠慮せずにどんどん食べよ〜。」


木陽の両手には既に料理やらお菓子が確保されており。その数は、テーブルに出された食べ物の総量の過半数を占めていた。


「ちょっ!木陽、お前は少し遠慮しなさいよ!」


「え〜。だって木陽、今回ものすごく活躍したし〜。木陽知ってるよ。大会で一番活躍した人を、えむぶいぴー?って言うんでしょ?それになった人は、その大会に関わった人になんでも好きに命令したり、お願い聞いてもらえるって聞いたよ?」


確かに今回の対抗戦は木陽の能力による活躍が一番大きかった気がする。MVPというのもあながち間違いではない。

 だけど後半のMVPに対しての認識は何一つ合ってはいない。どこで誰にそんな間違った情報を吹き込まれたのだろうか?

 そう考えていた時にふと周りを見ると、俺と頑なに視線を合わせようとせず、頭の後ろに手を回しながら口笛を吹いて素知らぬ顔する水姫の姿があった。


 水姫…お前か…。


 そう思って水姫をじっと見ていると、一瞬だけ目が合った。すると。


「あーっ、そういえば!うちゲーム機でカラオケできるんだよ。打ち上げといえばやっぱりカラオケだよねー。」


急にその場で立ち上がり、襖の中から買った覚えのないゲーム機を取り出してセッティングを済ました水姫は、急いで歌う曲を入力したと思うと。何かを誤魔化すように勢いよく自分の好きな曲を歌い出した。


「うおぉぉぉーーー!まさかこんなところでMIzyu様の生歌が聞けるなんてぇーーーっ!!最高ーーーーーーっすーーーーーーっ!!!」


タツは滑り込むように水姫側に正座すると、どこから取り出したのか両手に水姫の顔と名前が描かれたうちわを持ち、頭にハチマキでペンライトを巻きつけ、法被姿で発狂し出した。

 こんなに楽しんでいるのに水を刺すのも野暮なので、この打ち上げに免じて木陽の件を水姫に問いただすのは今回はやめておこう。

 しかし、楽しかった筈の打ち上げも、いつのまにかウチの姉達のいつものペースに巻き込まれカオスになってゆく。


「はーい、追加のお料理できましたよ〜。」


例の如く、料理を若者に食べさるのが趣味のような美月が俺や木陽達が料理を食べ終えたそばから追加の料理を間髪入れずに持ってくる。


「やったぁ〜、美月ちゃんのご飯大好き〜!」


いつもなら俺たちだけですぐさまお腹いっぱいなされるところだが。今回は対抗戦後といういつもより空腹な状況と、胃袋にブラックホールでも内蔵しているのかというほど食いしん坊な木陽が食べる側にいるので、料理は出されたそばからすぐに消えていく。

 さらにいつもより食欲旺盛な木陽は他の人が受け皿に取った料理まで野生動物の如く目を光らせた瞬間に瞬く間に奪い去って食べ尽くす始末だった。

 途中、櫂の料理に手をつけた木陽は案の定櫂の怒りを買い、料理の争奪戦のようなものまで起きていた。


「ほらほら、喧嘩しないで。まだまだたくさんありますから。」


さっきからこの調子で木陽が食べ、美月が料理を持って来るという状況がループしている。

 その光景を見てるだけで、こっちはお腹いっぱいになってくる。


「がーっはっはっはっ!ほらほら、もっと近くに来なよ可愛子ちゃん達!」


一際楽しそう笑い声のする方を向くと、火鈴が両脇にいる侑と燕の肩に手を回しながら酒を飲んでいた。手に持つグラスが空になると侑や燕にお酌をねだり酔っ払い特有のだる絡みをするなど、やりたい放題していた。


「火鈴姉さん!?アンタ二人相手に何してくれちゃってるの?」


「おー、稜。なんだ!?お遊び程度のキャバクラごっこが羨ましいのか?」


未成年の女子高生二人を相手になんという遊びをしているのだろうかこの姉は…。


「違うよ。二人に姉さんが迷惑かけてるから申し訳ないと思って見てただけだよ。」


「本当かぁ?そんなこと言って、可愛い二人とアタシが仲良くしてるから内心嫉妬してるんじゃねぇか?ほらっ、お姉ちゃんに正直に言ってみな、ん〜?」


火鈴自分の耳に手を添えて俺からの返答を期待している。そんな火鈴に、コイツが自分の姉でなくて、ただの見ず知らずの酔っ払いだったら一発殴りかかりたくなるほどウザいと俺は感じていた。


「大丈夫だよ響八君(・・・)。火鈴さんとお話しするのとっても楽しいから。」


「そうだぞ稜。先ほどなんか、昔大量の極道相手に喧嘩を売った時の話を聞いていたのだが。その話がハラハラドキドキの連続で聞いてて退屈しないぞ。」


 酔っ払いがよくする自分の武勇伝をキャバ嬢に熱く語りたくなる心理からだろうか。にわかには信じがたい話だが、話してるのが火鈴というだけに全くのデタラメと決めつけられないのが逆に恐ろしい。


「最強のアタシにかかればヤクザ数十人どうってことないわ!」


 明らかに調子に乗って高笑いをしていた火鈴背後に忍び寄る影が一つ。


「あら火鈴、そんなにお酒ばっかり飲んでたら体に悪いですよ?ほらっ、貴女も私が作った栄養満点の料理を食べなさい。」


いつの間にか火鈴の後ろを取っていた美月(食え食え攻撃魔)が、手に持っていたとてつもない量の料理を、丁寧に一口ずつ連続で火鈴の口に突っ込み出した。


「ひょっほみふひねぇ(ちょっと美月姉)、ほんはにはひはなひっへ(そんなに入らないって)…」


火鈴の料理で口をいっぱいにしながらもしていた必死の訴えも美月には聞き届けてもらえず、呆気なくお腹をパンパンにされた火鈴はその場に倒れ込んだ。


「愚妹が失礼なことして申し訳ございませんでした。お詫びと言ってはなんですが、まだまだ料理はたくさんありますので、存分に打ち上げを楽しんでくださいね。」


そう言い残して美月は台所へと再び姿消した。

さっき言ってたように料理をまだ作るつもりらしいが、家に元々あった食材と、打ち上げ用に帰りに買った食材の総量が、でてきた料理よりも少なく感じるのは気のせいだろうか…。

一体どうやって美月が料理を作り続けているのかという疑問を残しつつ、始まったばかりの打ち上げは、まだまだ続いてゆく。

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