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72.えっへん!

「響八君、あの強そうな根津井って生徒に勝てるんでしょうか?」


「あら、自分の教え子を先生が信じなくてどうするんですか?」


「でもでも、誰から見てもあの圧倒的なゼスト量を持つ相手に勝つなんて…。皆さんも知ってるでしょう?なぜ対抗戦が毎年決まって上位と下位の二つのグループに分けられているか。」


友子は話した。実力別に分けられたこの対抗戦は、決まって毎年そのグループ内の一番高いランクのクラスがほぼ勝利する。その結果を受けて、今まで学年ごとに一纏めに戦わせていた対抗戦はいつしか上位と下位の二つのグループに分けられるようになった。

理由は、上位と下位の揺るぎない実力差の壁。そして、毎年多発する高すぎる実力差ゆえに起きる負傷者の数を減らすためだ。


「怪我人が出なくなるようにしたのは私も賛成です。でも、下のランクのクラスに振り分けられた子は、学校から上に上がる見込みがないと言われたようなものです。ただでさえ今回はD組が下位グループの戦いに混じって大変なのに、あんな強い生徒を倒さなきゃ上のクラスにすら挑戦できないなんて…。さながらあの根津井って生徒は、皆さんが上に行く為の門の前に立ちはだかる番人みたいなものです。」


「アーッハッハッハッ!番人か、そりゃいいや!」


友子の言葉を聞いて、火鈴高らかに笑い出した。


「えーっ!?何がおかしいんですか!?」


「ごめんなさいね。火鈴は別に、友子がおかしなこと言ったから笑ったわけじゃないんですよ。ただ…」


「でもさ〜、あのレベルの相手が番人だなんてねぇ〜。」


「私たちはまがいなりにも、あの(・・)叶愛の持ちギアよ。まぁ…、大切な主人1人守り通せなかった私たちの言うことなんて信じるに値しないかもしないけど…。」


姉妹達の話を聞いて、友子は少し困惑していた。しかし、彼女達の所有者でもあった叶愛がSクラスに所属していたというだけで、根津井をあまり強敵として認識していなさそうなのもなんだが納得してしまう。それだけ、響八くん達が目指す上(Sクラス)とはとんでもない実力者が集まる場所なのだ。


「見てなさい友子。なぜ木陽以外のメンバーが観客席(ここ)にいるのか。その理由(わけ)が今からわかりますよ。」


***


「せっかくこれから最終決戦っていう雰囲気なのに、片腕に変なもん巻き付かせたままなんはカッコつかへんよなぁ。」


 右手に持ったもう一丁の銃で左手に巻き付いた木の根を破壊しようと引き金を引く根津井。しかし。


「…なんやこれ?」


銃撃を受けた筈の木の根は少し傷つきはしたものの、左手の拘束は解けぬままガッチリと根津井の左腕に絡みついて離れなかった。


「えらく頑丈な根っこやな。やけど、こっちの攻撃が効いてないわけやないみたいやな。なら、もっと出力を上げて吹き飛ばしたるわ。」


根津井はさらにゼストを大量に込めて木陽の出した根を破壊しようと、数発弾を打ち込んだ。

結果的になんとか左腕に絡んでいた根を破壊し自由を手にしたものの、根から逃れるために大量のゼストを消費した。


「大分集めたゼストが減ってしもたわ。なのに、なんやそれ?」


根津井はやっと手に入れた左手の自由を喜ぶ暇もなく、目の前に映る絶望的な状況に呆れたようなため息混じりの言葉を吐いた。

根津井の目には、先程まで自分の腕に絡みつき、あれだけ抜け出すのに苦労した根っこが稜の周りに無数に蠢く光景が映っていた。


一本でもゼスト結構使わな対処できへん木の根があんなに…。おそらく隣にいる緑髪のガキの能力なんやろうけど、厄介やで。


「どうした根津井、急に黙って?もしかして、ギブアップか?」


「はっ、笑かすなや。なんで俺がギブアップすんねん。」


「そうか。大分お前の纏うゼストが減ったようだから、もう今出してる大量の木の根から逃れる術がなくて諦めムードなのかと思ったよ。」


「ぬかせっ!確かにゼストは減ったけどなぁ、まだ俺には回収してない手下のゼストが山ほどあんねんぞ。今お前の仲間が倒してきた奴らの持ってるゼスト全部集めて、君のこと瞬殺したるわ!!」


 根津井は左手に意識を集中させ、ゼストを回収しようと試みる。


「……っ!?」


能力でゼストを回収した筈の根津井だったが根津井の纏っているゼストの量に変化は見られず、それどころかさっきまで闘争心に満ち溢れていた根津井の顔が曇り、額から一筋の汗を流す。


「なんでや…。なんでゼストが戻ってこーへんねん!?」


「変なこと言うね〜、ゼストが戻ってこないなんて。元々あなたのゼストじゃないのに〜。」


「なんやと?」


急に話しかけてきた木陽を睨む根津井。だが、すぐに何かに気づいたよう表情に変わり、焦りを見せていた根津井が少し落ち着きを取り戻す。


「まさか…。お前がやったんか!?」


「えっへん!そのと〜り!!全部木陽がやりました〜。」


腰に手を当て、どんなもんだと言わんばかりにドヤ顔を披露する木陽。それを見て根津井はムカついたのか、あからさまに顔を顰めた。


 これまでの戦いの中で疑問に思ってたことに全部合点がいったわ。上壁にかけていたワイの能力を解除したのはあのチビ。そして、上壁や兵藤と言ったG組のメンバーが時間稼ぎをしていたのは、ワイの手下にかけた能力を響八が解除して回るためやったんや…。それやったらワイがいくら能力でゼスト操作しようとしてもなんも起こらんわけや。


「ここに来るのに時間かかったのは、俺の仲間達が倒した他の代表者のところを回らなきゃ行けなかったから。そのせいでみんなはこんなに危ない状態させちゃったけど、その分俺がしっかりとお前を倒して、最後にG組を勝利させるという作戦を完遂する!」

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