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71.応援席にて。

『さぁっ!下位グループの対抗戦もいよいよ大詰め!!ただいま生き残っているのは、D組代表根津井選手。そして、G組代表メンバーの五名の計六名。

これは状況を見るに全員残っているG組がまだ優勢かと思われそうですが、響八選手以外のメンバーはほぼ行動不能状態。それにより、最終的に対抗戦の行方は根津井選手と響八選手の一騎打ちにやって決まると言ってもいいのではないでしょうか!!』


「・・・・・・。」


「あのー…、光様?対抗戦もそろそろ終盤ですので、何か一言だけでも解説者らしいことを喋って頂けると…。」


対抗戦が始まってから今まで解説役として席に座っている筈の光は、最初に不機嫌そうに一言だけ発しただけで、ずっと試合などに興味なさそうな様子だった。

 実況の生徒も一人だけで喋り続けているだけなのも限界がきたのか、マイクを入れずに隣に座る光に協力を仰いでいた。


「解説も何も、もう勝負ついたでしょ?これ以上ここにいるのも無駄だし、私は帰らせてもらうわ。」


「へっ!?」


突然の発言に困惑する上森を差し置いて、試合も終わってないのに解説が途中で帰りるという前代未聞の行動を取る光に、引き止めようものなら命がいくつあっても足りないという顔をしながら黙って見送るしかない上森であった。


「相変わらず光は他人に冷たいですね。」


「美月ちん、あれは今だと塩対応って言うんだよ。あれはあれでファンの人にとってはご褒美なんだよ。」


「あらそうなの?今の子ってなんだかこう…難しいのね。」


「二人で何どうでもいいこと話してんのよ。試合に集中したら?もうすぐ決着つきそうだし。」


よそ見をする二人を注意する金恵だったが、ふと右隣に座っている火鈴の方に視線を移すと彼女は一瞬言葉を失った。


「おぉーいけいけ〜!稜ー、木陽〜。そんな奴ぶっ飛ばしちまえ〜。」


 闘技場の観客席とは言え神聖な学舎たるこの場所で、白昼堂々と持ち込んだ酒やつまみをガンガン飲み食いしながらへべれけになってる姉を見て、頭を抱えながらため息をついた。


「まぁ、ちゃんと試合見てるからって偉いわけでもなんでもないわよね…。」


「どしたの?金ちん?」


急に疲れたような顔をする金恵を心配して顔を覗き込んでくる水姫を見て、金恵は"原因は主にあんたたち姉だよ"という言葉をグッと飲み込んだ。


「なんでもないわ。とにかく、今やってる試合を最後までちゃんと…」


「フレーッ、フレーッ、G組ーーーッ!!!みなさーーーんっ!頑張ってくださぁーーーいっ!!!ほらっクラスの皆さんもご一緒に。」


自分たち姉妹がいる応援席から少し離れた場所に、チアガール衣装を着た女性が珍しくとてつもない大声でG組の応援をしている姿が見えた。


「あら、あれは…?」


声の主はG組担任の輪國友子。我が教え子のためにコスチュームまで着込み、同じクラスの生徒が恥ずかしさのあまり友子周りから離れているのも気にせずに一生懸命応援している。


友子ちん(・・・・)じゃん。なんかすごい格好して多しててウケるんですけどwねぇ、面白そうだからこっちに呼んであげようよ!」


「そうですね。応援するのは人数が多い方がいいですからね。」


「ちょっと待って。向こうも向こうでクラス一丸になって応援してることだし、邪魔するのも…」


 見るからに一丸になってるようには見えないが、これ以上めんどくさそうな人物が増えるのを恐れた金恵が友子の合流を阻止しようと動く。

 しかし、その目論見は僅か数秒後に早くも失敗する。


「あれっ?皆さん!?お久しぶりです〜(・・・・・・・)。ご家族で仲良く響八君の応援ですか?」


あろうことか自らこちらに気づいた友子が、すぐさま自分たちがいる方へと駆け寄って来たのだ。

 これにはもうお手上げだと言わんばかりに、金恵はなるべく関わらないようにとそっぽを向いた。


「美月さんは模擬戦の時に少しお会いしましたよね?他の皆さんは叶愛さんが私のクラスに(・・・・・・)いた頃にお会いしたきりなので、約1年ぶりですかね。」


「あぁん?誰だ嬢ちゃん?」


「火鈴、友子ですよ。ほら、叶愛がこの学園に入った時の初めての担任の。」


「あーっ、あの根暗でボソボソと何言ってるかわからなかったあの嬢ちゃんか!?いや〜、見た目変わりすぎて誰だかわからなかったわ。」


「そう言っていただけると、思い切ってイメチェンした甲斐があったというものです。まぁ、一番感謝したいのはイメチェンをするきっかけをくれた叶愛さんなんですけどね。また会えたらお礼を言おうと思ってたのに、まさかあんなことになってしまうなんて…。」


過去を思い出し落ち込む友子の口を、美月が差し出した人差し指を当て口を塞ぐ。


「暗い話は今よしましょう。ほら、対抗戦も終盤のようですし、込み入った話は対抗戦が終わった後にゆっくりとお聞きしますよ。だから今は稜たちを応援しましょう。」


口を塞がれた友子は少し悲しげな表情を見せる美月の顔を見て何かを察したのか、コクリと頷くと美月の指が口から離れた瞬間に闘技場上空のモニターに映る自分の生徒たちを見て、美月達と共に再び応援を始めた。

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