68.それぞれの場所へ走り出せ
〜響八・木陽サイド〜
先ほどの戦いを終え、俺と木陽は自分たちの作戦での役割を果たすべく、新たな敵を探していた。
「木陽さんや。さっきはあんなにやる気満々に次の相手探しに行こうって言ってたくせに、なんでまた俺が木陽をおんぶして走ってるんですかねぇ?」
一緒に走り出した数分後、急に木陽は減速したかと思うと、俺の背中にいきなり飛びついてきた。
突然背中に飛びつかれてバランスを崩す中、なんとか体勢を立て直したのはいいが。
文句を言う前に木陽が、"あっちに走って!"と言うもんだから、それに従って走り続けてきたが。飛びついてきた理由も走る方向を指示してくるのも何故だかわからず、不満を訴えるように木陽に問いただした。
「だって、力が増した木陽が全力で走ったら稜ちゃんついてこられないでしょ〜?それだったら初めからこうしてさっきみたいにくっついてたらはぐれずに済むでしょ〜?」
確かに木陽の言っていることは概ね正しい。しかし。
「それじゃあ、スピード落として一緒に走ればいいだけなんじゃないの?」
「あぁ〜、それはただめんどくさ…、ううん。そう!少しでも高いところにいたらそれだけで木陽の能力で敵のゼストを察知しやすくなって、敵の位置もわかりやすくなるから!それに、木陽が周りをこうやって警戒してれば敵からの奇襲も防げるし一石二鳥だよ。」
今めんどくさいって言いかけなかったか?それに言い訳がましくいつもより木陽の口調が早口になってるのも気になるが、いつものことなのでももうどうでもいいと言うか、スルーして早く敵を見つけてやることやってしまいたい。
そう考えていたら、腕につけた生徒手帳代わりのデバイスから音が鳴り響く。
「おっ、通信だ。瀬川さんからか…。」
対抗戦前に水姫とタツが二人してデバイスに五人の間でだけ連絡が取れるようにと簡単な通信機能をつけてくれていたのだ。
デバイスの画面には瀬川さんの文字が表示されているので、今回通信してきたのは瀬川さんと言うことになる。
タツ達に習った通りにデバイスを操作し、通信に素早く応答する。
『あっ、よかった繋がった。私の声ちゃんと聞こえてるかな? 稜君今通信して平気?』
「うん、ちゃんと聞こえてるよ侑さん。大丈夫だよ、何かあった?」
『ごめんね、転送したらすぐにみんなですぐに連絡して位置を確認しながら合流するつもりだったのに連絡が遅れちゃって…。」
確かに対抗戦序盤はそういうつもりだったが、現時点で連絡してきたのは侑一人。根津井の策略によりみんなの元に敵が仕向けられた為、通信する余裕がなかったのだろう。
俺すらも敵がいきなり現れたのもあって、みんなも戦闘中だったら邪魔になってしまうと考えてこちらから連絡はしなかった。
『こっちに来た敵はなんとかできたよ。それにさっき私の方に燕ちゃんから連絡があって、敵を倒したから作戦通り根津井君のところに行くって言ってたよ。敵を倒した場所を私から稜君に伝えておいてくれって言われたから電話したんだ。』
侑は燕に言われた通り、自分の敵を倒した場所と合わせてわかりやすく場所を俺に伝えた。侑が通信してきたついでに、櫂と俺の方にきた敵も片付けたことを伝えた。
「ありがとう、これから教えてもらった場所に行ってみるよ。」
『お願いね。私もこれから燕ちゃんを追いかけて根津井君を探しに行くね。見つけたらまた連絡するから、稜君も気をつけて移動してね。』
「うん、侑さんも無理しないようにね。」
その言葉を最後に通信は終了した。
ピピピピッ。
「また通信?今度はタツからか。」
また鳴り響いたデバイスに俺は立て続けに応答した。
「もしもし?」
『あっ、ヒービー!?聞いてくださいよ。俺さっきまで転送された校舎外れのトイレにいたんですけどね。そこにいきなりガチムチの外国人が現れて戦いになったんですけど、危うく死ぬところだったんすよ。なんとかそいつら眠らせて、生きてその場を切り抜けたんですけど。臭いところに転送されるわ、危うく死にかけるわで、とにかく散々だったんすよ!』
通信の声色からもわかるが相当怖くて嫌な目に遭ったようだ。話だけ聞いているとあまりにも情報量が多くてなんのこっちゃと思ったが、とにかく今は死線を切り抜け愚痴を聞いて貰いたくて通信したと言う感じだろう。
「それは大変だったなタツ。それでね、こっちも伝えときたいことがあって…。」
俺は今まであったことや、侑から聞いた状況をタツに伝えた。
『えっ、あと敵は根津井だけなんすか!?じゃあ根津井さえ倒せば、こっちの勝ちじゃないっすか。』
「まぁそうなんだけどさ。根津井のことだから一人だけになっても、あの強力な能力を持っている以上一筋縄じゃあいかないと思う。それに、使ってくるのがあの能力だけとは限らない。だからまだ油断はできないよ。」
『そっそうっすね、わかったっす。じゃあ自分もこれから根津井探しに行くっす。そして状況を見て、カカっさん達の援護に回るっす。』
「わかった。俺もやることやったら急いでそっちに行くから。」
そう言ってタツとの通話は終了した。
みんなそれぞれ自分の前に現れた敵にきっちりと対応して、自分に割れ当てられた作戦の役割を担っている。俺ものんびりしていられない。
「木陽、ここから一番近いゼストの反応はどこ?」
「あっちだよ、稜ちゃん!」
「よしっ!」
俺は木陽の指差す方角へ全速力で走り出した。




