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56.実感とその先

〜特訓開始から1週間経過〜


「よっしゃあっ!またゼスト放出持続時間のベストタイム更新だぜ。」


特訓開始から1週間経った頃。

ゼスト放出特訓を行なっていた3人は、初日とは見違える程にゼストを放出し続けられる時間が伸びていた。

余裕が出てきたのが見てわかるほどだったので、金恵は初日から3日経つ頃には、3人とも第二段階の特訓をするようにと指示を出した。


「じゃあみんな、ロードワーク行こうか。」


第二段階も順調に特訓は進んでおり、最初は止まっている状態でしかゼスト操作ができなかったが、今では動きながらでもゼスト操作を出来るほど、ゼストの操作にもなれていた。


「いや〜、皆さん特訓が順調そうで何よりっす。」


初日に別メニューで一時的に分かれて特訓していたタツも、ロードワークや組み手中の受け身の練習などにちらほらと顔を出すようになっていた。


「おい、メガネ。お前の方はどんな特訓してたんだ?」


「えーっとっすね。まずは自分インドア派なんで体力が皆無でしたから、最初はずっと走ったり、軽い筋トレばっかしてました。そこから、新しい発明品考えたり、自分が扱う武器を分解して組み立てを何度も繰り返したりしてました。」


「そっか。タツも大変だったんだね。」


最初の頃は特訓終わりにみんなでご飯食べるために集まった時に、タツだけとてもげっそりしてたことを思い出す。

今は簡単に口で説明しているが、あのやつれ方から見て、俺たちが聞いて想像しているよりもキツイ特訓を水姫やらされていたんだろう。


水姫との特訓を経験したものだからこそわかる。

あいつは自分に興味がある分野が関わることだと、限度というものを忘れてしまう節があるのだ。

おおよそ、休憩を入れるのを忘れてタツを振り回していたに違いない。


「タツ、もし指導係に不満があるなら、俺から水姫に掛け合ってやろうか?」


「えっ、なんでっすか?俺推しのM I zyu様と一緒に特訓できて、超幸せなんですけど?

確かに体力的に辛いこともありましたけど、MIzyu様が一緒にいてくれるからどんなことでも頑張ろうって思えるんす!」


どうやら、俺のタツへの心配は杞憂だったようだ。

なんだかんだみんな辛い特訓を乗り越えながら、第二段階も終盤に来ている。

この分だと今日のまだ余っている特訓時間にでも、次の段階に進めそうだ。


***


ロードワークから帰ってきた俺たち5人は金恵に呼ばれ、彼女の前に集まった。


「ゼストの操作にもだいぶ慣れてきたわね。この数日間でここまでゼスト操作をものにしたのは大したものだわ。そこで今日から対抗戦当日までの間、いよいよ特訓の総仕上げである最終段階へと進むわよ。」


金恵から初めて褒めてもらってみんなで少し照れていると、その間に金恵は自分の能力を使って金属でできた一枚の壁を地面から生やした。


「稜、あんたこっち来てこの壁殴ってみなさい。

あっ、ゼストは今まで通りに放出させた状態で。」


「う、うん。」


言われた通り壁の前に立った俺は、ゼストをいつも通り放出させた状態で拳を振りかぶり、壁に狙いを定める。


「あいつ、放出の訓練やってなかったのに、俺たちよりゼスト量も放出スピードも俺たちより上じゃねぇか?」


「ああ。流石は師匠をはじめ、超実力者揃いのお姉様方に私たちよりも長い期間稽古をつけられてただけあるな。」


「響八君、すごい…。」


思わぬところで俺の実力が誉められていることなんてつゆ知らず、俺は壁に向かって拳を振り下ろす。


ガンッ!


壁に拳が当たった箇所が拳の形がはっきりとわかるくらいに凹んだ。


「すごい、金属の壁が凹んじゃったよ!」


「まぁこんなものね。体鍛えてて、あのくらいのゼスト量を持ってるとこのくらいは当たり前のように出来るわ。じゃあ今度は、今回教えたゼスト操作を使って可能な限り拳や腕、殴るのに使そうな筋肉にゼストを集中させて殴ってみなさい。」


「わかった。」


金恵に言われた通り、今度は拳と腕。腰や足などの下半身にもゼストを集中させる。

そして、さっきと同じような動作で拳を繰り出す。


ズガンッッッ!!!


「えっ、嘘!?」


金恵に言われた通りにゼストを操作して繰り出したパンチは、先ほどのように壁をめり込ませるのではなく、こともあろうか金属でできた壁を軽々とぶち抜いてしまったのだ。


「信じられん。」


「マジかよ。」


「ヒービーやばいっす!」


先ほどよりも驚く二人と、さっきはゼストか見えなくてピンとこなくて反応の薄かったタツが反応を見せる中。

あまりにも衝撃的すぎたのか、何をやるにもすごいと言ってくれていた瀬川さんは今回の結果を見て、言葉を失っていた。


「これでわかったわね?ゼストを適当に使うんじゃなく、意識して操り、考えて集中させたりすることによって、今までの技や能力は飛躍的に向上するのよ。」


金恵の言葉を聞いて、みんなの頭にそれぞれ考えがよぎる。


「あんた達のその顔、最終段階の特訓内容を私がいう前に大体察したみたいね。そう、今回の特訓の最終段階は、自分自身の技や能力をもう一度見直し、これまでの特訓で培ってきたゼストを使い能力や技を進化させる方法を考えることよ。」


「能力や技を進化…。」


確かに、ゼスト操作を覚えたことで普通のパンチでさえあれだけの威力を発揮するのだから、これを今まで使った技に応用できれば、威力は単純に威力は倍以上にはなるだろう。


「ちなみに、今回使った厚さ十センチ以上のこの金属壁は、今回根津井のゼストを操る能力で予想される手下へのゼスト供給により強化される肉体高度に基づいたもので…」


「ゼスト操作を使えば、私も戦闘で役に立てるかも。」


「私の場合はあそこにゼストを集中して…、それをするには今にでも色々試して…」


「この力があれば、あの野郎に受けた借りを何倍にでもして返してやれそうだ。」


「うおーっ、さっきのヒービーを見てたらインスピレーションが湧いてきたっすよー。」


「って聞いてないし。まぁでも、みんな自分がどうゼスト操作を生かすかアイデアが浮かんでるだけましか。」


みんなはすぐにでもさっきのゼスト操作を自分の能力や技に組み込んだ威力を試してみたいと、自分の世界に没頭していた。


「それじゃあ最終段階の特訓をそれぞれ開始しなさい。

今回の特訓の総仕上げは、さっき稜がぶち抜いたのと同じ金属壁を破壊、もしくは貫通させることよ。

それじゃあ特訓最終段階…、開始ッ!」


対抗戦まで1週間を切った。

俺たちは各々、根津井他E、F組連合軍を倒すための最後の特訓に動き出した。

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