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55.地獄の特訓始めました。

「はーい、じゃあこないだのテスト順番に返していきますよ〜。出席番号順に取りに来てくださ〜い。」


六月中旬。テスト期間を終えた俺たちは対抗戦に出られるかどうかが決まる、運命のテスト返却の日を迎えていた。

今日で受けた教科全てのテストの答案が手元に揃う。

揃った後はみんなで放課後アパートの俺の部屋に集まって、テスト結果の報告会が開かれる。


「みんな準備はいい?」


「うん。」


「無論だ。」


「いつでもいいぜ。」


「はいっす。」


全員自分の答案をテーブルの上に裏返しにしておく。


「それじゃあ、せーので裏返すよ。」


「「「「「せーのっ!」」」」」


一斉に表になった答案用紙は、見事に今回の赤点のラインを全て超えていた。


「よっしゃーーーーーーっ!!!」


「やったっすーーーーーーっ!!!」


今回一番心配されていた二人が嬉しさのあまり雄叫びを上げていた。


「どうやら全員赤点は免れたようだな。」


「よかったね二人とも。」


「おめでとう、櫂、タツ。」


3人が二人にあたたかい拍手を送っていると、部屋に金恵が入ってくる。


「どうやら第一段階は突破したようね。それなら早いとこ次の段階に進みましょうか。時間に余裕もないし…。木陽ーっ!?木陽ー、ちょっと来てー。」


「な〜に〜…Zzz。」


急に呼び出された木陽はどうやら昼寝の真っ最中だったらしく、眠い目を擦りながら、片手にさっきまでかけていたタオルケットを持って現れたが、まだ残る眠気に抗えなかったのか、立ったまま再び夢の世界へと旅立った。


「木陽っ!こらっ、起きなさい。みんなの先生やるんでしょ?」


パチッ!


金恵の言葉を聞いた途端、さっきまで重たく閉じていた木陽の瞼が急に持ち上がった。


「やるやるー!木陽みんなの先生やっちゃうよ〜!!」


どうやら今回の特訓の指揮を取るのは木陽のようだ。


「木陽には今回の対抗戦で勝利するために欠かせないゼスト量をアップさせる特訓と、その増えたゼストを自由に扱えるようになるためのゼスト操作技術を教えてもらうわ。

私はその特訓の補助監督として側にいるから、わからないことがあったら遠慮なく聞きなさい。」


ついに始まる対抗戦対策の特訓が…。

俺たちは各々の覚悟を再確認しつつ、特訓へと臨んだ。


***


特訓が始まる前に各自一旦動きやすい服装に着替え、俺たちはアパート裏にある庭に全員で集まった。


「それじゃあ初めて行くよ〜。」


「「「「「よろしくお願いします。」」」」」


礼儀正しく皆で挨拶した後、木陽から特訓の最初の指示が出された。


「まずは〜、みんなで全力のゼストを最後までバーンってしよ〜。」


「「「「「??」」」」」


木陽が出した特訓の指示に、みんな仲良く頭の上に?マークを浮かべていた。

そこにすかさず金恵が、


「まずは各々ゼストを全力で自分の体から放出して見なさい。出し切る限界までなるべく強く大きくね。」


と、木陽の指示をわかりやすく言い直した。


「よっしゃーっ、やってやるぜー!」


「私も負けんぞ!うおぉーーー!」


燕と櫂の二人はやる気満々にゼストを体から放出し始める。


「私も頑張らなくちゃ…。」


二人に続くように瀬川さんもゼストを放出し始める。

二人の少し荒々しい放出具合と比べると、瀬川さんのゼストはそよ風よりも少し強い程度の放出具合だった。


「あの〜、自分はゼスト使えないんですけど。どうしたらいいんすかね?」


手を挙げながら、特訓を未だに始められずにいるタツは金恵に訪ねた。


「あんたは水姫と一緒に別メニューよ。今から水姫のところに行って来なさい。」


「MIzyu様がマンツーマンで特訓を!?こうしちゃいられないっす。MIzyu様!この伊月達夫。今すぐ貴方の元へ参りますっす。」


あんなに早く動くタツは今まで見たことないと思うくらいのスピードで、水姫の待つ俺の家まで走って行った。


「よしっ、俺も早いとこ始まるとしますか。」


頑張っているみんなに続くべく、俺も全力でゼストを放出する体制に入る。


「あー、ちょっと待って。あんたはこれいつもやってるし、あんたはみんなより先に次の第二段階に進んでいいわ。」


「えっ、いいの?金恵が言うならいいんだろうけど、第二段階って何するの?」


金恵は俺に第二段階の説明を始めた。


〜10分後〜


「ゼストを放出し続けることが、これほどまで辛いとは…。」


「まだまだ…、最後の一滴まで振り絞ってやる…。」


初めて最後までゼストを放出した二人は、早くもとてつもない疲労に襲われ、立っているのもやっとと言う状態でとてつもない量の汗をかいていた。


「私ももうダメかも…。」


みんなよりゼストの量が多いと言われていた瀬川さんも、もうちょろちょろとしか体からぜすとが出ていなかった。


「みんなもう限界?じゃあ木陽が元気にしてあげるね〜。」


「「「えっ?」」」


「"自然の祝福(グリーン・リフレ)"。」


木陽が呪文を唱えると、緑の光が疲労困憊の三人を包み込む。


「暖かい…。」


「あぁ、何だか力が湧いてくる。」


「とても優しい光だ。体力がみるみる戻ってくるようだ。」


三人はあっという間に木陽の回復能力で特訓を始める前の状態まで回復した。


「ありがとう木陽さん。もう元気いっぱいだよ。次の特訓は何をしたらいいのかな?」


「えっ、また同じだよ〜」


「「「えっ?」」」


木陽の返答に、三人は揃って驚く。


「また限界までゼスト出し切ったら教えてね〜。また同じように回復するから〜。」


「まさか…、今日はずっとこれの繰り返しですか?」


そう聞き返したくなるのも無理はない。いくら回復されるとは言え、ゼストを振り絞るあの疲労感は常人には耐え難いものなのだ。

それを繰り返し行うのだから、その精神的疲労とも言える苦痛は他者の想像を絶するものだ。


「あれやり始めはすぐゼスト切れるし、精神に来るしでめっちゃきついんだよね。いやぁ〜、懐かしいなぁ。」


「ほらっ、何よそ見してるの?ちゃんとゼストに意識を集中させなさい!」


「はっはい!」


みんなとは別メニューの俺は、放出したゼストを体の周りに圧縮して留める第二段階の特訓をしていた。


「これは修行第二段階。ゼスト操作を学ぶための基本的な修行よ。放出するだけで終わらずに、体の周りに留めたり、必要な箇所に集められるようにゼストを操る感覚を身につけるのよ。」


金恵はそう簡単に説明しているが、この修行、少しでも集中力を欠くとすぐにでも体の周りに薄く纏ってるゼストが通常の湯気のような形に放出されてしまう。

体の一部と言われても、すぐに思うように今まで扱ってこなかったゼストを操るのは簡単なことではない。


「あっ!またゼストが元の形に…。」


バシンッ!!


「痛ったぁーっ!!!ちょっ、なにんすんのさ金恵!?」


ゼスト操作に失敗するや否や、金恵がいつのまにか持っていたムチが俺の背中に飛んできた。


「何って、失敗した罰ゲームよ。緊張感あった方が真面目に集中してやるでしょ?」


そういう金恵の表情は、なぜか頬を赤く染めながら息遣いが少し荒くなっているように見える。


コイツ…。俺にムチを振るうことに快感を覚えてやがる…。


金恵はこちらを見ながら、次はいつムチを俺の体に振り下ろせるのかを今か今かという表情で待っていた。


まずい。

早めにこの修行をクリアしないと、俺の体が金恵の奥底から溢れるサドっ気でボロボロにされてしまう。


久々に思い出す。

高校に入学するために必死に特訓していたあの頃。

今はあの頃みたいに一人でやっているわけではない。

ここにいるみんなと、対抗戦に勝つために心を一つにして頑張るんだ。


各々の目標にたどり着くため、死に物狂いの数日間が始まった。

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