46.好きに騒げ、楽しい宴会。
「響八君、体の方は大丈夫?大丈夫そうなら早く行こっ!もう宴会始まってるよ。」
瀬川さんに案内されて、俺たちは公民館の戸を開けた。
その中には…。
「ぎゃーはっはっは!いや〜陽が高いうちから飲む酒ほど美味いもんないよな〜。
ゴクッゴクッ…、カァーーーッ!サイッコォーーー!!!」
部屋に入って一番に目に飛び込んできた光景は、村のおっさん達と肩を組みながらお酒を飲み交わす火鈴の姿だった。
「お〜、稜起きたか〜。お前もこっち来て早く飲もうぜぇ〜。」
この村に着いた時から酔いっぱなしの火鈴は、宴会の席でも大量の酒を浴びるほど飲んで、とうとう20歳未満はお酒を飲めないという誰もが知っている法律すら忘れるほど頭がイカれてしまったようだ。
せっかくの火鈴の誘いは無視…。いや、丁重にお断りした丁であったの盛り上がってる方へ行ってみよう。
「さぁどうぞ、グイッと一杯いっちゃってください。」
「みんなー、今日は来てくれてありがとーう!目一杯楽しんでってね〜♪」
方やこちらサイドは、なぜか村の人々にお酒をお酌しながらおしゃべりを楽しむクラブの女将ポジションについている美月と、備え付けのカラオケでジジババ達からリクエストされた曲を歌い歌姫と化している水姫の二人が場を賑わせていた。
こっちもこっちですごい賑わいだな。
「うおぉーーーっ!!まさかこんなところでMIzyu様の生歌が聴けるなんてぇ〜。」
一人だけ推しのライブに来たような熱量で限界オタクと化したタツは、嬉し涙を流しながらどこから持ってきたのかわからないペンライトを両手にオタ芸を披露していた。
大人な雰囲気の美月サイドやライブ会場のような熱気に包まれている水姫サイド。
どちらも自分には落ち着かない雰囲気の場所なので、ここもスルーしよう。
「そういえば、燕と櫂は?」
「二人ならあそこだよ。」
瀬川さんが指差す先に二人は座っていた。
二人が座っている前には、村の郷土料理や宴会の定番といった料理などが様々に並べられていて、その周りを不思議と村人の人々が取り囲むよな形で群がっていた。
「あれはなんの騒ぎ?」
「あぁ…あれはね…。」
瀬川さんが苦笑いを浮かべていたので、もう一度二人の方をよく見てみると。
「貴様…、まさかここまでやるとは思わなかったぞ。だがそろそろ限界であろう?ここいらで潔く参ったと言ってはどうだ?」
「ハァ…ハァ…、バカ言ってんじゃねぇよ。俺はまだまだいけるぜ…。そう言うお前の方こそ、しんどそうじゃねぇか。早いとこギブアップしちまえよ。」
聞こえてきた二人の会話を聞くに、何か対決のようなものをしている最中のようだ。
それも戦いは終盤といった状況で、双方満身創痍のようだ。
さしづめ周りに集まる村人達は二人の戦いに集まってきたオーディエンスといったところだろうか?
「普段折り合いの悪い二人がここまで激しく火花を散らす勝負って一体…。」
「大食い勝負なの…。」
「…え?」
「どっちがたくさん料理を食べられるかの大食い勝負。最初は普通に食事してただけなんだけど、どっちがたくさん食べられるかで張り合い出しちゃって。
気がついたらこんなことに…。」
瀬川さんは再度困ったような苦笑いを浮かべてそう説明した。
苦労人の不良少年と、刀一つ持って上京してきたこちらも苦労人の剣道女子。
どちらも食い意地は半端なく、その意地の張り合いが村人達を熱くさせていた。
「ハァ…。なんだかどこも落ち着ける場所じゃないな。せっかくの宴会だけどどうしよ…。」
落ち着ける場所を探している俺のところに、一人の少女が近づいてきた。
「あんたなにやってんのよ?」
ジュース片手に喋りかけてきたのは、姉の金恵だった。
「金恵。いやね、どこもかしこもすごい熱量があって盛り上がってるから、なんだか落ち着かなくてね。」
「あっそ。どうでもいいけど、あんたは病み上がりなんだからうろちょろしてないでさっさとゆっくりできるとこ探して、安静にしてなさいよ。」
「そうだね、ありがとう。金恵はいつも俺のこと普通に心配してくれるから。なんだか安心できて、とても助かるよ。」
「はっ!?はぁ〜!?べっべつに心配なんてしてないしっ!変なこと言ってないでさっさとどこへなりとも好きなところ行ったらいいじゃない!
私だって疲れてるのにこれからこの村の村長と話し合いがあるんだから。」
そういうと、金恵はどこかへ行ってしまった。
「疲れてるってなにしてたんだろう?それに村長となんの話があるんだろう。」
「さっき金恵さんと話したんだけど、私たちが倒した犬型の鉱獣の群れから離れて森を徘徊してた鉱獣が他にもいたみたいで、それを響八君のお姉さん達が手分けして倒してたんだって。」
作戦を始める前に水姫がどこかへ連絡してたのを思い出した。
あれは鉱獣が他の場所にもいるかもしれないから、見て回って欲しいと言うことを、他の姉妹達に頼んでいたのだろう。
見てないところで、結構重要な仕事をしていたんだなと思う。
それだけのことをしてくれていたのだ。
宴会であれだけ騒いでいても、今回だけは大目に見てやるとしよう。
「あと、金恵さんの村長さんへのお話っていうのは、あの洞窟の採掘権とかの交渉をするってさっき言ってたよ。金恵さんて私たちと同い年くらいなのにすごいんだね。」
あぁ、想像の斜め上の行動をとるのは俺の姉達のいつも通りだ。
だからそういう場面に出くわした時は、俺は深く考えずに受け流すことを心がけている。
「あの…、響八君。もしよかったらなんだけど、私と一緒に料理でも持ってきてここで食べない?」
瀬川さんの突然の提案に、俺は一瞬思考が停止した。
えっ?俺が、瀬川さんと二人で食事を…?
「ダメ…かな?」
「ダメじゃないです!俺っ何か飲み物と料理適当に取って来るから、瀬川さんはここで待っててー!!」
その場に居づらくなって、半ば逃げ出すように瀬川さんの元から離れた。




