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44.積み重ねてきたものを噛み締めて…。

「よっしゃあ、行くぜオラ!」


「兵藤燕、いざ参る!」


二人の掛け声で、作戦の火蓋は切って落とされた。

先ほど舞い上がった砂埃が完全におさまり、完全に開けた視界の中で二人と一匹は相対する。


「この作戦、まずは私たちが切り込み役だ。下手を打つなよ不良!」


「そりゃこっちのセリフだぜ武士女!あっさりやられて作戦台無しにすんなよ。」


相変わらず喧嘩腰な会話が絶えない二人が、鉱獣の一歩手前で二手に分かれた。


「オラァっ、こっちだ熊公!!」


櫂は挨拶代わりと言わんばかりに渾身の右ストレートを熊型の横っ腹に叩き込む。


「傷つくぜ。俺の右を喰らってもこの程度とはよ。」


「ググッ…、グガァ!!」


ダメージはそう受けてない様子の熊型だったが。

攻撃を受けて怒りを買ったのか、櫂の方に反撃を試みようとする。


「相手はそいつだけではないぞ!今度はこっちだ!」


櫂の方を意識して隙を見せた熊型の後ろ足を刀で斬りつける。

俺の攻撃でも見せなかった血が鮮やかに飛び散る。


「グギャアァ!」


刀で傷を受けた熊型は流石に堪らないという様子で咆哮をあげた。

痛みを振り払うように今度は燕を薙ぎ払うため、燕に前足が迫る。


「そっちにばかり気を取られてていいのか?こっちの足元がお留守だぜっ!」


意識が燕に移ったのを見逃さず、切りつけられたのと逆の足にこれでもかとラッシュを叩き込んでゆく。

拳によって肉が弾け、音が洞窟内で反響する。

その音がそのまま、音で掻き消されている熊型の苦痛の叫びと言っていいだろう。

二方向から交互に攻撃を浴びせられ、攻めようにもどちらを攻撃していいのか困惑している様子の熊型。

この状況を作り出し、後ろ足を両方傷つけられて素早く動くことを出来なくすることに成功した。


この瞬間を待っていた。


「瀬川さん、タツ。悪いけど、全力で支えておいてね。」


「うん、わかった。」


「OKっす!」


俺の背中に二人が手を当て、押し込むような体制で待機。

その間に手を銃に見立ててまっすぐ腕を伸ばし、左手で腕を掴んで標準がブレないように固定する。

指先に生成した水をできる限り圧縮。そこにゼストを込められるだけ限界まで詰め込む。


「さっきは力を込める時間と、こんな防御を完全に捨てる無防備で反動に耐えられないという理由で出せなかった俺の全力…。受けてみやがれ!」


怒りで上体を起こし熊型の腹が見えるこの瞬間。


「貫けっ!!最大出力(ウォーターショット)水銃(フルバースト)!!!」


「くぅっ…。」


「すごい威力っす!」


攻撃の反動で後ろに吹き飛ばされるようになるのを二人が必死押さえ込む。


今の俺がこうでもしないと出せない程の威力の攻撃だ。さっきの水銃とは威力も突貫力も段違いだぞ。


放った水銃は狙い通り熊型の土手っ腹に直撃し、重たい熊型の体が初めて後ろによろめいた。

攻撃を受けた腹は肉が抉れ、その中に。


「ヒービー見て!さっき受けた腹の傷の中にあいつの核の鉱石が!」


「あぁ、見えてるよ。これなら同じ箇所にもう一回ぶち込めば勝てる。」


勝機が見えたと思った、その瞬間だった…。


「グガアアアァァァッーーーッ!!!」


突如鉱獣が洞窟内に鈍く振動するほどの咆哮を上げた。

その直後、俺の方へと傷ついた足でとは思えない速度で勝ちに向かってくる。


「急に走り出しやがって。」


「お前の相手はこちらだっ。」


走り出した鉱獣に追走し興味を引こうと攻撃を試みる二人だったが、気にも留めないと言った感じでこちらに一目散に走り続ける。

あまりの速度に二人は振り払われ、攻撃が届かない範囲まで引き離される。


「こいつ!」


「すまぬ三人とも。そちらに鉱獣が。」


先程の攻撃を受けて、一番自分の命を脅かす存在は俺だと思ったのか。

他には目もくれずに一直線に向かってくる。


仕方ない。

核は四足歩行の体制で隠れてしまっているが、一か八か動きを止める意味でもさっきと同じやつをもう一発…。


「ヒービー、自分に考えがあるっす。そのまま技に集中してください。」


「わかった。頼んだぞ、タツ。」


瀬川さんの俺の背中を掴む手に、さっきよりも力が入っているのを感じる。

鉱獣が迫る恐怖からなのか、はたまた一緒に戦っているという自覚ゆえ力が入ってしまったのか分からないが。

とにかく俺にできることは、目の前のあいつを倒してみんなを安心させてあげることだけだと考え、指先に全神経を集中させる。


「もうちょい引きつけて…、今っす!!」


今しがたタツがカバンから取り出して鉱獣に投げつけたソフトボールぐらいの大きさの球体。

その球体が鉱獣当たるや否や、とてつもない電撃が球体の周りに発生する。


「グッ、グガガ…。」


あまりの凄まじい電流に流石の鉱獣も動きを止めて、もがき苦しむ。


「俺が今までかき集めた希少な雷系鉱石と今持ってるゼスト結晶全てを詰め込んだ、特製即席雷玉っす。

これだけ強い電流発生させるのにどんだけ鉱石が必要か知ってるか!?

マジで希少なんだからな、コンチクショウ!!! 持ってけ泥棒っす!!!」


悲痛なタツの叫びを聞きつつ、それほどこの一瞬を作り出すために尽くしてくれたことに感謝して狙いを定める。


「グガァッ!」


高いエネルギーを感じ取ったのか、こちらに威嚇を飛ばしてくる。


しかし…。


「もう遅ぇよ!これで最後(おわり)だっ!!!」


核を見せた隙を逃さず、最後に残った全てを乗せて水銃放つ。

さらにスピードを増した水銃は真っ直ぐに熊型の核である鉱石に向かい、そして貫いた。

攻撃を受けた鉱獣の腹はぽっかりと大きな穴が空き、その空虚な姿にあたりは一時静まり返った。


「やった…、やったっすよ〜!」


静寂を最初に破ったのはタツだった。


「やったね、響八君!」


それに続いて瀬川さんが声をあげる。


「おーい!すごい一撃だったな、稜。流石だぞ!」


「ったく、大した野郎だぜ。」


燕と櫂もゆっくりと近づいてくる。


「いや〜みんなお疲れちゃん!よく頑張ったねぇ〜。あっ、タツチン。そんなに興奮して稜ちんゆすると、やばいかも…。」


急に顕現した水姫がそう言うと…、


「「「「えっ?」」」」


バタッ…。


「うえっ、ヒービー!?どうしちゃったんすか!?」


いきなり倒れた俺を見て、集まったみんなは慌てふためく。


「あーあ、やっぱり倒れちゃった…。ゼスト切れだね。まぁ稜ちんも初めてじゃないし、すぐ良くなるから心配しなくていいよって…、みんな聞いてないか。いい友達持ったね、稜ちん。」


水姫は見つめていた。

水姫の言葉が聞こえないほど俺の心配をして駆け寄ってきた仲間たちの姿を。


かくいう俺はゼスト切れで薄れゆく意識の中、心配して駆け寄ってきてくれた仲間の声を聞きながら、身体中に感じる倦怠感を噛み締めていた。

幾度となく経験してきたゼスト切れだが、今回のは今までのそれとはちょっとそれとは違った。

強敵を仲間たちと協力して達成感があったからだ。

その心地よさに身を委ねながら俺は気持ちよく意識を完全に失った。

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