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43.伊月達夫の華麗なる?時間稼ぎ

「おいクマちゃん、こっち来るっす!」


食べられそうになっている俺を助けるために鉱獣気を引こうと、離れた場所から銃を撃ちまくっていた。


「グルルッ…!」


タツの思惑通り、銃撃を背中に浴びた熊型は意識をタツに移すと、一目散にタツの方へと走って行った。


「響八君、しっかりして。今回復するから…。」


タツと一緒にいたはずの瀬川さんが、鉱獣がタツの方へと動き出すのを見計らって入れ違いにこちらに駆けつけた。


「…早く行かないと、タツが…。」


「ダメ、まだ動かないで。」


「そんなこと言ったって、このままじゃタツが!」


「伊月くんが私に言ったの…、響八君を頼むって。

伊月くんも、あんな挑発的なことをして自分がどうなるかぐらいわかってるんだと思う。

でもね、私たちを守ってくれた響八君や他の二人と同じで、私たちだって、自分に出来ることで三人の役に立ちたいの!

だから、伊月君の勇気をわかってあげてほしいの。」


そう言って治療を続ける瀬川さんの額を汗がつたう。

こちらが怪我をするたびに何度も回復を行ってくれている彼女だが、その能力を使うのは大分ゼストを消費するようだ。


瀬川さんに言われてやっと気づく。

あれだけ作戦が始まった頃は仲間を頼れ的なことを言っておいて、この洞窟であの熊型の姿を見た直後から自分一人でなんとか熊型を倒して、二人を守らなくてはいけないとばかり考えるようになっていた。


俺はバカだ。

こんなにもタツや瀬川さんに助けてもらってるのに。

それだけではない。

姉妹達にだって、散々助けてもらったから今ここにいるんだろうが。

今まで繰り出した技が効かないからってなんだ!

思い出せ…、今まで教わってきた全てを。


「熊さんこちら、手の鳴る方へっす。」


ひたすら熊型を煽りつつ全力で逃げるタツだが、普通の人間の足では熊型からは到底逃げ続けられない。

すぐにタツの背後まで鉱獣が迫る。


「ひぃいいいっ!でも、追いつかれるのは想定内っす。」


タツは走り続けながら、器用に背負ったバッグの中に手を突っ込み、小さな球体のようなものを複数取り出した。


「喰らうっす!自分が作ったバラエティ豊富な鉱石爆弾す!!!まずは"煙幕(スモーク)"。」


地面に落とした球体はその場で破裂したかとおもうと、その場で大量の煙が湧き出した。


「伊月達夫特製鉱石爆弾シリーズその1!煙幕弾す!」


タツの起こした煙幕に戸惑った様子の鉱獣が思わず足を止める。

そして、煙をわざわざ避けて再びタツを追う。


「なに!?結構利口なやつなんすね。だったら次はこれっす!"瞬光(フラッシュ)"。」


今度は鉱獣に向かって持っていた球を真っ直ぐに投げつける。

投げた球見事に鉱獣の頭に当たると、その場で砕け、砕けた箇所から次々と強い光が漏れ出す。


「伊月達夫特製爆弾シリーズその2。ピカっと閃光弾っす。」


「ググッ…グガァ!!」


閃光に目をやられた鉱獣はなにが起こったか分からず混乱し、不安を振り払うかのように先ほどより早く闇雲に走り出した。

その闇雲に走った方向が、こともあろうかタツが逃げる方向とピタリと一致した。


「またうまく行かなかったっす〜!だったら次は、"転倒(スリップ)"。」


今度は地面に撒いた球体がドロドロの液体に変化する。


「伊月達夫特製、以下略。変わり種のローション弾す!これは特別にツルツル滑るローションっすよ。これに足を滑らして、すってんころりとすっ転ぶといいっす。」


狙い通り熊型は滑りはしたが、上手く四足歩行の体制を保ったまま滑り。

摩擦のが減るローションの上で加速した熊型がタツに迫っていた。


「そんなバカな!?もっと早く逃げないと…。あっ!?」


後ろから迫る鉱獣に気を取られすぎたタツは地面にあった石に足を取られ、その場に倒れ込んだ。


「タツの奴、転んじまったよ。このままじゃ滑って来た鉱獣に押し潰されちまう。」


「来るなぁっす!」


「タツっ!」


ドオオオォォォン!!


鉱獣は壁に盛大に激突し、洞窟内を砂煙が舞った。


「…そんな。伊月君…。」


「タツ…、タツーーーッ!!」


潰されてしまったタツの名前を叫んだが、返事は返ってこなかった…。

突然のことすぎて言葉を失う俺と瀬川さん。

後から状況を理解始めた体が涙を浮かべた。


守れなかった……。


あれだけタツに助けるとか、任せろとか言っていて情けない。結局なにもしてやれなかったじゃないか。

そんな考えばかりが頭の中を巡っていた。

その時だった…。


「何やってんだ稜!!まだ終わってねぇぞ。」


「そうだ!まだ終わってなどいないぞ!」


突如声のした方を向くと、立ち込める砂埃の中から燕と櫂、そして、二人に担がれながら気を失っているタツが現れた。


「みんなっ!!」


「伊月君…。よかった…。」


三人はすぐさまこちらに駆け寄って来て、俺たちと合流した。


「あのバカデケェのが奴らの親玉か?って、なんだ泣いてんのかお前ら?」


「なっ、泣いてなんてねぇよ。砂埃が目に入っただけだ。それより、よくこんな早くここまでこれたね。」


「それなんだが。お前達が洞窟に入った後にすぐ犬型を片付けてすぐ稜達を追ったのだが、道が入り組んでるは暗いわで苦労していたが。

途中、石が不自然に積み上がっているのに気づき。

それが洞窟の奥の方へと一定の間隔で続いているではないか?

それを頼りに進んでいたらここに辿り着いたというわけだ。」


「あっそれやったのに私。気づいてもらえてよかった。」


さっきここへくる途中になにかやってると思ったら、そんなことをしてくれていたのか。

通りでここに来るまでそんなにかからなかったわけだ。


「そんなことよりどうするよ、あいつ。見たところ、お前も相当手を焼いてんだろ?

俺と武士女とお前の三人で、総攻撃でも仕掛けるか?」


「いや、あいつのタフさは半端じゃないよ。もっと他の方法で攻めないと…。」


俺の頭の中には、先ほどまで治療中に考えた策が一つある。

それを成功させるには、みんなの協力が必要だ。


「俺に一つ考えがあるんだけど…。みんなの協力が必要不可欠なんだけど、危険もつきまとう作戦だ。

成功するかも分からないし、そもそもみんながやるかやらないかだって…。」


       やるよ!

「「「よしっ!やるぞ!」」」

       やんぞ!


即答!?危険な作戦なんだよ?


「やるよ!だって、響八君いつも周りのことを考えて一生懸命やってるもん。だから信じるよ。」


「やるやらない以前に、やらなければ殺られる状況なのだ。だったらやるしかあるまい。」


「どっちにしろ作戦が成功しようがしなかろうが、また新しい作戦考えて、奴がくたばるまで戦い続けるだけだ。」


「…みんな。よし、じゃあやろう!」


櫂が気絶しているタツを無理矢理起こし、みんなで作戦を共有する。


「じゃあ今伝えたとおりお願い。この作戦であいつを倒してみんなで無事に村まで帰ろう!!」


「「「「了解!!!」」」」


こうして、俺たち5人と熊型鉱獣の最後の攻防が幕を開ける。

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