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39.えっ、今度は本当に?

「5って…、たった5ってなんだよ…。」


みんなのところからがむしゃらに走って、よくわからない山奥まで来てしまった。

そこで少し落ち着いたらその場に座り込んで、自身に告げられたゼスト量のあまりの少なさに打ちひしがれていた。


「あんなに頑張って体を鍛えたり、格闘技の練習したりしたのに…。なんも意味なかったのかな…。」


「そんなわけないじゃん。何言ってんの稜ちん?」


「うわっ!水姫!?いたから居たの!?」


完全に一人だと思って、おもいっきり独り言喋ってたのがなんか恥ずかしい。


「最初からだよ?だって稜ちん、今ゼストとっても少なくなってるから。体力も少なくなってて、走っても全然早くないから追いつくの簡単だったんだもん。」


そうか、俺はそんなに走るスピードが遅かったのか…。俺のゼストが少なくなってるから…。


「ん?ゼストが少なく(・・・)なってる?それってどういうこと?」


「えっ?今日は家族全員顕現してついてきてるでしょ?普段は姿が見えるくらい顕現してるから、稜ちんのゼストの減りも少ないけど。

今回は鉱獣とかが出る危険があるから、みんな多めにゼストを借りて顕現したんだよ。だから稜ちんのゼストの残りが5だけなんだよ。」


そうだったのか。

確かに受験の時に水晶玉でゼストを測定した時は、みんな指輪の中に入ってたんだっけ。

だから少しもゼストを使ってなかったから、水晶にヒビが入るほど強力なゼストがあったんだ。


「なーんだ、いきなりメチャクチャ騒いで俺バカみたいじゃん!あはははっ!」


「そーだね。もうっ、稜ちんのお馬鹿さんっ。アハハハッ!」


俺の早とちりだったことがわかり、水姫と二人で大笑いしていると、遠くから二つの人影が近づいてくるのが見えた。


「おーい、ヒービー!」


「響八くーん!水姫さーん!」


「あっ、おーい二人とも、こっちこっちー!」


***


心配して探しに来てくれた二人と合流して、改めて鉱石探しを始めようとすると、タツが深刻な顔をしているのに気づく。


「どうしたタツ?まさか、俺を探すために走り回って疲れちゃった?」


「いや、そうじゃないんす。実はヒービー達を探してる途中にレーダーに複数のゼスト反応がありまして…。その数がざっと30以上と明らかに異常な数なんで、それでなんだか嫌な予感がして…。」


「そうだったんだ。でもそう言ってさっきもなんともなかったからな…。やっぱりこの目で直接確かめてみないと…。」


火鈴や木陽の件があったからな。今度は美月か金恵が能力を使って変なことをしているから複数の反応が出ているという可能性も捨てきれない。


「とりあえず、その反応のがあった場所の近くまで、また行ってみよう。」


俺たちはその反応があったという地点まで急いだ。



***



だいぶ村から離れて山奥の方まで来た俺たちは、反応があったという近くでまたもやよく知る人物と出会う。


「「あっ稜!」」


「燕!?それに櫂!?こんなところで何してんの?」


「しーっ、静かにしろ!」


「とりあえず低い姿勢を保ったまま、こっちへゆっくり来てみろ。」


櫂言われた通りにして、二人のいるところまで俺たちは合流した。

何も喋らず、先程まで二人が見ていた茂みの隙間を見ろと二人が指を刺しながら合図してくるので、その通りにして隙間を覗いてみると…。


「なんだありゃ…。」


茂みの先の開けた岩場には紛れもなく複数の鉱獣達が屯していた。


マジかよ、今度は本当にいるんかいっ!

一番当たってほしくない予想が当たってしまった。


「私と上壁が鉱石集めを競い合ってあくまで来てみると、偶然あの鉱獣の群を発見したのだ。

しばらくの間様子を見ていたのだが、奥の方にあるあの洞穴から時間が経つにつれてどんどん鉱獣が出てくるのだ。」


「こんな場面に出くわした手前、今後どう動くかわからないあの鉱獣の群を放ってこの場を離れるわけにもいかねぇから、武士女と見張ってたんだよ。

連絡手段もねぇから、このまま鉱獣の奴らがどこかへ動き始めるようなら武士女と二人であの群れに突っ込むかって話してたんだよ。」


そんなこと話してたの!?

偶然タツが鉱獣達の群を発見して見に来ていなければ、二人は先陣を切ってあの群れに戦いを挑んでいたかもしれない。

二人が強いのは知っているが、流石にあの数相手は無謀すぎる。

合流がするのが間に合って本当によかった。


「あの鉱獣達、洞窟から出てきたって言ったよね?多分今出てきてる犬型の鉱獣以外にももっと強い奴が洞窟の中にいるかも…。タツチンのメガネで見た感じどう?」


「そうっすね…。確かにMIzyu様の言う通り、洞窟の奥の方に明らかに犬型よりも強い反応が一つあるっす。反応の大きさ的にCランクの鉱獣かもっす。」


タツから聞いた話だが、よく見られる犬型がDランク相当の鉱獣だそうだ。

下の方のランクのDランク鉱獣とはいえ、犬型の鉱獣も側から見て決して弱そうには見えない。

その犬型が大量にいるのに加えて、あれより強い奴がまだ洞窟の中にいると思うと、とてつもない脅威だ。


「どうするみんな。本来の任務の内容とは違うけど、このままあの大群を放っておくわけにはいかないよな?」


「うん、そうだよね。私はあの鉱獣達と戦う力はないけれど、このまま見過ごしたらあの村の人たちが危険な目に遭うのかと思うと、黙っていられないよ。」


「その通りだ、私は戦うぞ!たとえ負け戦だと言われようとも、他人に危害が及ぶかもしれない状態でそれを見て見ぬフリをしたとあっては、兵藤家の跡取りとしての名が廃る!」


「俺は元々一人でもやるつもりだったんだ。他の誰がやらないとかは関係ねぇ。鉱獣だろうがなんだろうが全部ぶっ飛ばす。それだけだ。」


そう言い終わると、櫂は髪を掻き上げて早くも戦闘モードだ。

他のみんなも覚悟は決まっているという顔でこちらを見ていた。

タツただ一人を除いては…。


「自分、みなさんみたいにそんな早く腹括れないっす…。みなさんみたいにゼストを使えない俺は今回なんの役にも立たないでしょうし。そもそも、鉱獣討伐はC〜Dランクの任務で、俺なんが手伝ったところで…。」


「ごちゃごちゃうるせぇんだよっ!ビビりメガネ!」


突然櫂が下を向くタツの胸ぐらを掴みが上げた。


「やめろよ櫂。まずは少し落ち着け。」


「チッ、いつまでも自分を卑下しやがって。

だったら仕方がないって言われるのでも待ってるのか?

それでお前自身は悔しくもなんともないのか?

お前だって何か野望や野心があってこの学園に来たんだろ?だったら、上に行くために立ちはだかる障害はなんであろうと打ち破って行くしかないだろうが!!!」


そう言うと、櫂はタツを離した。


「タツ。態度はあれだけど、櫂の言うことも俺にはよくわかるよ。

だけど、結局は最後に決めるのは自分だ。

タツ自身がやるかやらないか。

もし、タツが戦わない道を選んでも、ここにいる全員はタツが決めたことを決して責めはしないよ。」


この瞬間、ここにいる全員が真剣な眼差しでタツを見ていた。


「それを踏まえてもう一度聞くね。タツは今回の鉱獣との戦い、どうしたい?」


タツは俯いていた顔を上げて、真っ直ぐにこちらを見つめ返す。


「やるっす…、やってやるっす。自分だって、上に上がって叶えたい夢があるっすから。鉱獣とだって戦ってやるっす。」


「よしっ!これで決まりだ!みんなであの鉱獣達のをなんとかしよう!」


みんなの覚悟は決まった。あとはどういうふうにあの鉱獣達と戦うかだ。


「みんなやる気充分って感じじゃん!?それじゃあ、ただ鉱獣達に突っ込んで行ってもあれだから。お姉さんと一緒に作戦会議でもしよっか?」


水姫の提案を経て、俺たちは対鉱獣討伐の作戦会議をすることとなった。

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