38.・・・5っすね。
「すみませんっ!俺がなんかフラグっぽい発言しちゃったせいで。」
「おっ落ち着いて!とりあえず瀬川さんとタツは俺と水姫の後ろに!」
タツはゼストが使えないし、瀬川さんはギア持ちだが、攻撃手段を持たないので自衛の術がない。
ここは俺と水姫が上手く立ち回って二人の身を守らねば!
さぁ、クマだか鉱獣だかわからんが、来るなら来い。
バサッ!
どんどん近づいていた謎の生き物はとうとう茂みから勢いよく飛び出してきた。
しかし、その姿形は想像していたよりも小柄で、見覚えのある姿をしていた。
「お〜、おまえら〜。こんなほころで、なにやってんら〜?」
茂みから現れたのは熊でも鉱獣でもなく、明らかにベロンベロンに酔っ払った様子の火鈴だった。
「火鈴ちんじゃん!やっほー!こんなところで何してるん?」
「いやな〜、この村のジジババ達がな〜、酒ご馳走してくれてよ〜。それでなんだか楽しくなってよ〜、そしたらいつのまにかここに辿りついた〜!」
酔いすぎて少しキャラ変わってない?
楽しそうなのはいいが、酒瓶片手に森の中だが山の中だかわからないようなところを彷徨くのは危ないし恥ずかしいのでやめてもらいたい。
「それじゃあ、がんばえよ〜。」
少し話をしたあと、また火鈴は千鳥足でどこかへふらっと行ってしまった。
「大丈夫かな?火鈴さん…。」
「大丈夫だよ侑ちん。火鈴ちんは殺しても死なないような人だから。」
水姫がああ言ってるんだから多分大丈夫だろう。俺的には酔って下手に火鈴が能力を使って、山火事にでもならないかの方が心配である。
「ったく人騒がせだな火鈴姉さんは…。さて、気を取り直して鉱石集めを始めようか。って言っても、鉱石ってどうやって探すの?」
「フッフッフッ、よくぞ聞いてくれましたヒービー。今回集める鉱石はランクも低いので、そこら辺適当に探しても見つけられるレベルの代物ですが、それでは効率が悪いっす。そこで、効率を良くするためにコイツの出番て訳っす。」
タツは得意げに自分のかけているメガネをクイっと持ち上げて見せた。
「実はこのメガネ、あらゆるものを察知できる高性能レーダーが内蔵されてまして。人などが発するゼストの正確な数値から、鉱石の発する微弱な力すらも見逃すことなく察知できる優れものなんす。」
「へぇ〜。どこからどう見ても普通のメガネに見えるけどね。」
「そんなことないっすよ。試しに何かないか辺りをこのメガネで調べてみましょう。」
すると、タツは辺りを見渡し始める。
「おっ?何だこれ!?少し先のほうに強めのゼスト反応があるっす。」
「まさか、それ鉱獣の反応じゃない?鉱獣って、動物の死体に鉱石の力が影響して動くいわばゾンビみたいな存在でしょ?鉱獣は強ければ強いほど、それだけのゼストを体に纏ってるっていうし…。」
少し怯えた態度でそう説明する瀬川さんの言っていることが本当なら、強いランクの鉱獣が近くにいることになる。
「ここは村から結構近いし、もし強い鉱獣が本当にいるなら村の方にその鉱獣が移動して村の人を襲う危険があるかも知れないっす。」
「そうだな。とりあえずどんな鉱獣がいるかタツのレーダーに反応があった地点にみんなで偵察に行こう。」
音を立てないよう、静かにみんなで反応があった地点まで移動する。
案内するために先頭を歩いていたらタツが急に立ち止まり、みんなの方へ振り返り茂みの方を指さして合図を送ってくる。
どうやらこの茂みの先にゼストの発生源がいるようだ。
「この先に鉱獣が…。」
恐る恐る目の前の茂みを掻き分けて、その先の様子を伺う。
すると、その先にいたのは危険な鉱獣というにはあまりにも小さく、寧ろよく見慣れた少女の姿だった。
「……Zzz。もう食べられないよ…。」
あまりにもベタすぎる寝言を喋りながら、太陽の日差しがよく当たる場所で気持ちよさそうに眠っていたのは、どこかへふらっと歩いて行ったはずの木陽だった。
「おい、木陽!こんなところで何してんの?」
「あれ〜?みんな〜?みんなもお昼寝しにきたの〜?」
どうやらただこの場所で寝ていただけのようだ。
っていうかさっきまで散々寝てたのに、また寝てんのかい!
なんだか変に心配してどっと疲れた。
「しかし驚きっす。木陽さんのゼストの数値、300超えてるっすよ。常人の3倍近い量のゼストっす。」
そのゼストの反応を鉱獣の反応と勘違いした訳だ。
まったく、人騒がせな。
とりあえず。それだけ強いゼストを発しているなら、勘の鋭い野生動物や鉱獣は寄って来ないだろうと思い、木陽はそのままこの場所で寝かせておくことにした。
「ごめんね、二人とも。身内が2回も迷惑かけて…。」
「ううん、そんなことないよ。全然気にしないで。」
「そうっすよ!むしろ、何事もなくてよかったじゃないっすか。」
「ありがとう二人とも。それにしても、タツのその眼鏡本当にすごいな。ちゃんと木陽がいるってわかったし。それ俺達のゼストがいくつあるかもわかるの?」
「もちろんっす。例えば瀬川嬢の数値は250!?
常人平均の倍以上あるっす。この数値は学園の中でも中々見られないっすよ。」
「そうなの?何だか嬉しいな。」
「それにMIzyu様の数値は…350越え!?さっきの木陽さん以上!?とんでもない数値っす。この学園の生徒ならこれだけで、B〜C組に入れるレベルっす。」
「まぁ私は能力体だから、今のゼストの数値なんて関係ないけどね。」
瀬川さん→水姫ときて、いよいよ俺の番が回ってきた。
タツが俺の方に視線を移し、じーっと眼鏡で分析を進める。
「結果が出たっす!ヒービーのゼスト量は…。」
「ゼスト量は…?」
「…5っす。」
・・・・・・。
「へっ?」
「だから、ヒービーの今のゼスト量は5だけっす。」
目の前が真っ白になった。
あれだけ過酷な特訓を一年以上続けてきたのに、ゼストが5しかないなんてなんの冗談だ。
前の二人のゼストはきっちりと測定できていたし、タツのメガネが故障したわけでは無さそうだ。
それならなぜ俺のゼスト量はこんなに少ないのか。考えても一向に答えは出ない。
それよりも、現実をいきなり突きつけられたような感じがしていてもたってもいられなくなった。
「そんな、…。そんなバカなあああぁぁぁーーー!!?」
「ちょっ、ヒービー!?どこ行くんすか!?」
俺は駆け出した、目的地も定めぬままに。
とにかく、この辛い現実から少しでも気を逸らしたくて、全速力で走りまくった。
走りまくっても、この事実からは逃れられないのはわかっている。だが、この気持ちのやり場が思いつかないから走るのだ。
済むかもわからぬ気を鎮めるために。




