4.進路
話は現在から少し前に遡る。
今通ってる高校のことだ。姉が亡くなったと知ったのが俺が中学3年生だった頃。世間一般的には受験生にあたる歳だが、この時の俺は高校に行く気がなかった。いや、正しくはいけないだろうと思っていた。
家はただでさえお金がない。お金を工面しようにも中学生が働けるわけもなく、当然お金を貸してくれるところもない。
ならばいっそのことこちらもだいぶ厳しい道なのはわかるが、中卒で働くしか道は残されてはいないと思った。
と、今考えている進路のとこを夕飯どきにみんなに話すと、みんなで囲んでいるちゃぶ台が突如叩きつけられた食器で大きく揺れた。
「何を言っているのですか!? いきましょうよ高校。」
珍しく声を荒げた美月、とても不可解そうな顔で抗議した。
「嫌だからね? 仮に合格したとしても入学金とか授業料とかお金がなくて払えないんだってば。」
「でもなぁ稜。今時最低限高校出てねぇとまともな職に就くこともできなきゃ、大した給料も貰えず結果的に散々な暮らしをするハメになるんだぜ?」
食後にどこからともなく取り出したビールを片手に火鈴は少し上機嫌そうにそう話した。
「まぁ、火鈴ちんみたく毎日遊び歩いて、お酒飲んでるよりはまともな大人にはなれるんじゃない?」
「そうね、火鈴姉さんは私に大量に借金もしてるし、それを考えたら稜の方が全然マシよ。」
夕飯を食べ終わった水姫と金恵は、ゲームとパソコンに向かいながら会話に入ってきた。
「はーっはっは、違いねぇや...。おい二人とも後でちょっとツラ貸せや。」
一気に険悪ムードが到来したしたかと思うと、
「ごちそうさまぁ。美月ちゃん今日もおいしかったよぉ〜。お腹いっぱいになっちゃったからもうねるねぇ。」
そう言い終わると同時に、木陽は着ている服を勢いよく脱ぎ始める。
「ちょっ!? 木陽姉さん、俺がいる時は裸にならないでって何度も言ってるじゃないか。」
「え〜、だって〜服って邪魔だし〜。本当はずっとこのままがいいんだけどなぁ〜。」
木陽姉さんは重度の裸族なのか、服を着ているのが煩わしくて仕方ないようだ。かと言って、思春期真っ只中の中学生の前では流石に部屋の中といえど控えてほしい。いやほんとにマジで。
「木陽は全然気にしないよぉ〜。」
「俺が気にするんだよっ!!!」
半ばキレ気味の俺を他所に、木陽はあくびをしながら寝室に消えていった。
「とにかく、高校には行ってもらいます。お金のことはとりあえず心配しなくて大丈夫。これを。」
「何これ?封筒?」
なんだか厚みのある封筒を渡されて、中を見ると大量の札束が入っていた、
「なっ何この大金!? もしかしてやばいお金?」
「いえ、それはあなたのお姉さんがあなたの入学資金にと貯めてたお金です。これでお金の問題は解決する筈です。」
「姉さんが俺のために...。」
こんなことまでしてもらって、行きませんなんて言ったら、姉さんに怒られてしまうだろう。俺はこの時受験に臨むことを決意した。
「私たちも出来ることはなんでも協力しますよ。」
「おう、大船に乗った気持ちで任せな!」
「あーしたちに任せとけば受験なんてヨユーっしょ。」
「まぁ、どうしてもっていうならきょ、協力してあげなくもないけど。」
みんなに応援してもらえると急にやる気が出てくる。受験することを決めたなら、次はどの高校を受けるかだ。正直なところ、勉強はあまり得意ではない。よくて中の上といったところだ。
あまり偏差値の高い高校は必然的に対象外だ。
と、志望校のことを考えていると、部屋にある大きな封筒が視界に入った。
それは姉の訃報を知らせに来た同僚の人が持ってきた物だ。あの時は見る余裕がなかったのだが、改めて中身を開いて見てみる。
「能力人材開発高等学校入学案内?」
中身は高校の受験案内だった。確かに、進路がどうだの、よかったら選択肢の一つにどうぞとか言われた気がする。よく覚えてないけど。
「別に高校にこだわりとかないし、ここでいいかな。」
ひと通り目を通した後、その案内を美月に渡す。
「この学校...。」
学校案内のパンフレットを見た美月は少し、驚いたような顔をした方思えばすぐさまいつもの凛々しい顔に戻り、
「いいんじゃないですか、稜が選んだならどこでも。」
いつものようににこやかに笑った。
さっきのリアクションが気にならなくもないが、とにかく今は高校受験のことで頭がいっぱいだった。
目指す進路が決まったことだし早速受験に向けて準備をすることにした。
新しい目標ができて、不安と少しの感情の昂りを感じ、新生活に向けて想いを馳せていた自分だが、待っていたのは普通の受験対策などではなく想像を絶する日々だった。
これから投稿は、毎日12時頃に投稿しようと思ってます。
無理そうだったら頻度や時間変えるかもです。




