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3.姉からの贈り物

〜1年前〜 


流れ星が落ちてきたあの夜、俺は五人の少女に出会った。


「驚かせてしまってごめんなさい、立てますか?」


そう言って美月は俺に手を差し伸べた。


「あなた達は一体だれなんですか? なんで俺の名前知ってるですか?それに、今空から降ってきて...」

「あー、そうよねごめんなさい、色々急すぎたわよね、ごめんなさい。私の名前は美月よろしくね。そしてこの子達は...」


美月の挨拶が終わるのと同時に火鈴が突然肩を組んできた。


「あたしは、火鈴ってんだよろしくな稜。」

「はいはいっ! あーしは水姫、趣味はゲームに漫画でしょ、それからそれからっ...」


ガンガン距離を詰めてくる水姫にたじろいでいると二人の間にゆるりと木陽が割って入った。


「稜ちゃんやっほ〜、木陽だよ〜。なかよくしてね〜。」

「ちょっとお姉ちゃん達、一斉に喋らないでよ、その子が困惑して可哀想でしょ。」


 各々好き勝手に喋る彼女達を他所に呆気に取られていると、突如喧騒を裂くように柏手が一つ響く。


「はいはい、みんな落ち着いて。とりあえずここで立ち話もなんだから、詳しい話は稜君の家でにしましょうか。」

「へっ?」



***



連れてきてしまった。そして家にあげてしまった。

動揺していたのは事実だが、我ながら軽率過ぎる。

集団美人局的なアレだったらほんとどうしよう。女性とはいえこの人数差だと正直勝てるか怪しい。


「じゃあ早速自己紹介...、はさっき済ませたし。何から話そうかしら。」

「あの、なんで俺の名前知ってるんですか? それにさっきの空から降ってきましたよね、あれってどういう...。」

「順番に説明するわね、まず私たちは人だけど人じゃないのよね。」


なぞなぞかな?もしくは哲学的な何か。


「これを渡しておきますね。」


 美月は狭い部屋の中心で、みんなに囲まれたちゃぶ台に、あるものをそっと置いた。


「指輪...ですか?」


指先で持ち上げていろんな角度から見てみる。

シンプルな鎬リングに7つの異なる色で、橙、紫、赤、青、緑、黄色、白色の宝石が埋め込まれている。


「これは私たちの命です。大切にしてくださいね。」

「これを私だと思って大切にしてくださいね的なやつですか?」

「そういう意味でももちろんありますが...。稜君は、超常現象が日常的に起こるようになった現代について、どの程度知ってる?」


数十年前、突如として世界中の夜空を覆い尽くした流星群。世界中に降り注いだ光、それは世界の終わりだと思われたが、翌朝になってみると星が落ちた形跡は確認されず、代わりに人々は不思議な力を使えるようになるという現象が起こるようになった。


「まぁ、歴史の授業で一般常識的には、でも俺には適性がないらしくて、ほぼ関係ないことかなと。」


そう、能力は誰でも使えるわけじゃない。適正、いわゆる才能がないと使えない。流星群の日に光にぶつかって能力に目覚めた人もいれば、その日から発見されるようになった特殊な鉱石から作られるアイテムを使って適性があると初めて使えるのだ。


「そうですか。なら話が早いですね。それはね、私たちを顕現させるためのアイテム。つまり私たちの心臓そのものです。簡単にいうと私たちは実際に触れることのできるホログラムのようなものとでも言いましょうか。実際はもっと複雑ですが、まぁ今はその話はいいでしょう。」

「大切にしろよなぁ、無くしたりしたらマジ殺すかんなー。」


軽い感じで念を押してくるが、目がマジだ。

さほどの重さもない指輪が別の意味で重たく感じる。


「まぁ驚きましたけど、そんなに大切な物をどうして俺に?」

「それは、もう一つの疑問。なぜあなたを知っていたのかと、それにまつわるこれから話す話を信じてもらうためです。」


先ほどよりより一層真剣さを増した美月の表情を見て、固唾を飲む。

彼女はゆっくりとことの経緯について、話し出した。

彼女達、またアイテムは、元々姉が使っていた物らしい。そしてこのアイテムを使ってある組織の下で様々な任務をこなす仕事をしていたんだとか。

 両親が亡くなり、高校生になりたてだった頃の姉は生活費のことは気にしないでいいとだけ言って、よく仕事に出掛けていた。

 姉は家では仕事の話は一切しないし、逆にそれが聞いてはいけない雰囲気を作り出していた。

 姉に頼り切りの自分に罪悪感を感じつつ、何も役に立つことのできない自分が嫌だった。

せめて家事などはできる限りやった。

姉が仕事から帰ってきて、ゆっくりできるようにと。少しでも役に立てればと。

 そしていつものように、仕事に行ってくると言う姉を見送り、いつものように家事を片付けて姉を待っていた。だけど、姉はその日帰ってこなかった。

そこから数日後に、姉の訃報を知った。


「あなたのお姉さんは、立派に最後まで戦い抜きました。本当は立派でしたよ。」


その言葉を聞いて、喋っていた美月を含めた五人は涙を目に浮かべていた。


「お姉さんは、最後にあなたを私たちにあなたを託して...、一緒にいてあげてほしいと、そう言っていました。」


 その言葉を聞いて、点と点がやっと繋がった気がした。名前を知ってたこと、あなたとも言える指輪を躊躇いもなく渡したこと。もう一度指輪を見つめながら、突然俺の前に現れたこの指輪と少女達は、姉からの俺への想いそのものだ。

最後の家族である自分を亡くし、独りぼっちになってしまう俺のことを心配して、彼女達をよこしたのだろう。


「急にこんな話をされて、信じてほしいなんてむりなはなしかもしれませんけど...」


 もちろん彼女達の話が本当かどうかなんて証拠はない。証拠はないんだけど、嘘をついてるようには思えなかった。俺を見てくる彼女達の眼差しはとても優しく感じる気がした。


「信じます。仮にもし嘘だとしても今は...、今だけは、この姉からの優しさかもしれないこの想いに浸っていたい。」


俯く俺の手をそっと美月握る。


「ありがとう、信じてくれて。その想いに応えられるように、精一杯役目を務めさせていただきますね。」

「役目?」

「はい! 私たちがあなたの元に来たのは、あなたと家族になるためなのです。」


さっきまでの悲しい雰囲気を打ち消すように、立ち上がりざまに両手を広げて美月はにこやかに笑みを浮かべた。


「さぁ、家族になるための記念すべき第一歩。みんなでご飯を食べましょう!」

「ご飯...、ですか?」

「そうです、これは決定事項です。これからはご飯はみんなで食べるんですよ、約束です。」


ここから一年色々な出来事を経て、戸惑いながらも俺たちは本当の姉弟のようになってゆく。

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