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36.いざゆかん、初任務。

「へっ?今なんとおっしゃいましたか、皆様方?」


翌日のG組の教室一角。

タツの席の周りにいつものメンバーで集まって、話をしていた。


「あのね、タツがよければでいいんだけど。俺たち四人ともギア研究会に入れてもらえないかな?」


「すみません。最近連日徹夜でギアをいじってるので幻聴が聞こえているのかも。もう一度お願いできますか?」


かれこれこのように集まって話し出してからこのやりとりはこれで3回目なのである。

唐突な話でびっくりするのはわかるが、この反応は嬉しさゆえなのか、それとも本当に徹夜続きで意識が朦朧としているのか、微妙にツッコミを入れずらい状況である。


「耳ついてんのかオメェ?だから、俺たちがお前の同好会に入ってやるって言ってんだよ。」


「おい、上壁!貴様、同好会に入れてもらう立場でその上からのもの言いはなんだ。もっと、入れてもらう立場の言い方というものがあるだろう。」


「あ"? 俺がどう喋ろうか勝手だろうが。テメェこそ偉そうな口調で指図してんじゃねぇよ、武士女。」


「ちょっと二人とも、喧嘩は良くないよ。あっ、伊月くんもごめんね。そして、私からもお願いします。

私たちも伊月くんの同好会に入れてもらってもいいかな?」


俺が昨日タツと別れたあと、水姫と二人で瀬川さん達を探したら奇跡的に部活見学を終えて帰るところだった3人に会うことができた。

そして昨日もいい部活が見つからなかったらしく、俺はギア研究会に入らないかと話をしたのだ。

3人も話を聞いてるうちに、ギアのことをよく知れそうだとか。任務を受けられるようになるならどこでもいいとか。

入ろうと思ってくれたきっかけはそれぞれだが、同好会に入ってもいいという話になったのだ。


「それで、もうこのやりとり4回目なんだけど。同好会入ってもいい?そして、これで5人揃ったからギア研究会を部に昇格させて、任務を受けられるようにしてもいいかな?」


「もちろんす。自分感激っす。まさかこんなに早く部に昇格できるなんて。これでもう思い残すことはないっす。」


いや、縁起でもないこと言うなよ。

それだけ嬉しいって言うのはわかるけどさ。


「そんなに喜んでくれて嬉しいけど。要はタツの折角作った同好会を利用して任務に出られるようにしたかったってだけもあるんだけど、そこら辺のことは…。」


「大丈夫っすよ、むしろ感謝っす。自分も進級のために任務受けなきゃいけないのにどうしよって思ってたんですから。自分ゼスト使えなくて、人とのバトルじゃポイント稼げないっすからね。」


そういえばそうである。

タツはゼストが使えない学校生活ハードモードな状態でも、こんな風になんとかなるだろうと楽しそうに高校生活を送っているのだから大したものだと思う。


「あの、提案なんですけど。折角5人集まって部に昇格した記念に、皆んなで依頼受けてみませんか?」


「おっ、いいな!俺は別に構わないぜ。」


「私も構わないぞ。」


「私も大丈夫だよ。」


「いぇ〜い!!! じゃあ皆んなで一緒に任務行って、サクッと達成しちゃおうか!!!」


皆んなが任務の件を了承する中。

俺の賛否の返事を待つ前に、勝手に顕現した水姫がどうせ参加するだろうと思ったのか、行くのは確定したと言わんばかりのテンションで最後を締め括った。


まぁどうせ俺も行けるよって言うところだったし、別にいいんだけどね。


「それじゃあ今日の放課後に学生部の受付で、良さそうな依頼を見て受諾しましょうか?」


「「「「「賛成〜!!!」」」」」


改めて、新生ギア研究部の記念すべき初任務に出かけることが決定したのである。




***




「皆〜!昨日はよく眠れたかな〜!!!今日楽しんで行こーねーっ!!!」


「水姫、まだ朝早いんだから大声出さないで。」


現在時刻、朝5時30分。まだまだ人々は夢の中にいる方が多い時間帯である。

そんな早朝に、俺の自宅のアパートの前に皆んなで集まって、借りたバスで全員目的地まで移動する。


「それじゃあ皆んな、早速バスに乗り込んで出発しよー!」


「「「「「「「「はーいっ…!」」」」」」」」


小声で返事をした数が水姫を入れた六人より多いのではと思った人があるかも知れないが、これには少し訳がある。


「それじゃあ皆んな無事に乗り込んだかな〜?」


「うーい!準備OKだぜっ水姫っ。」


「皆んなでお出かけなんて初めてね。ゴールデンウィークも特にお出かけとかしませんでしたし。今日は家族共々皆さんで思う存分楽しみましょう。」


「姉さん達わかってるの?あくまでこれは稜達の任務の付き添いなんだから。遊びに行くわけじゃないのよ?」


「堅いこと言うなよ金恵。お前だって、大型バスまで貸し切ったりして、本当は内心浮かれてんだろ?」


「ちっ違うわよっ。私はただ、稜達が遠出するって言うから、足代わりにバスでも用意してあげようと思っただけで…。別に浮かれてなんてないんだからっ。」


大型バスの中で座席はたくさん空いているのにこの騒がしさ。原因は俺の姉さん達が任務先についてきてることにある。

任務が決まってから当日までの数日間。あまりにも水姫が任務を楽しみそうにしているのを見て、みんなも一緒に行くと言い出したのだ。

いつもは勝手にどこか出かけていないくせに、こう言う時は多少無理にでもちゃんとついてくるのだから困ったものである。

ちなみに、木陽は朝早いこともあってまだ夢の中である。


「ごめんね皆んな。騒がしくて…。」


「謝ることないっすよヒービー。賑やかで楽しいじゃないっすか。それに計画当初は電車乗り継いでいこうって話してましたけど、こんな快適なバスまで出してくれて。むしろ感謝っすよ。」


「そうだぞ稜。私も師匠とご一緒できて嬉しい限りだ。」


「俺は何人で行こうが特に気にしねぇ。目的地に着いたら起こしてくれ。」


「私も響八君のお姉さん達とまたご一緒できて嬉しいよ。今日はよろしくね。」


皆んな…ありがとう。

みんなの気遣いが心に染みる。

俺もこの授業参観に家族全員来たような恥ずかしい状況を辺に意識せず、本来の目的である任務の方に集中するとしよう。


そう思っていた。


「おいっ、金恵!このバスカラオケついてねぇーのか?退屈で死にそうなんだけど?」


「知らないわよっ!そんなにカラオケしたいなら、バス止めてあげるから近くのカラオケボックスにでも行ってきたら?」


「仕方ねぇな。じゃあ酒だせ。飲まなきゃやってらんねぇよ。」


「用意してる訳ないでしょ?もういい加減にしてよっ!」


二人はいつの間にか喧嘩を始めていた。一方、他の姉妹達は。


「瀬川さん、燕さん。お菓子たくさん持ってきたので、遠慮せずに食べていいんですよ。

それとも、お茶のおかわり入りますか?お若いんだからどんどん食べていいんですよ?」


「いや…師匠、もう十分頂きましたから。これ以上は…。」


「そうですよ美月さん。もうお腹いっぱいですから…。」


「何をおっしゃいますか。ささっ、もっと召し上がって。」


方や田舎に帰省した際に無限に食べ物を勧めてくる親戚のような状態になっている美月サイドと。


「ねぇ、遊ぼ〜。何もしないとつまんないよ〜。」


「なんだうるせぇな!さっき散々遊んでやっただろう。」


「自分も朝早かったんで、少し寝かせて欲しいっす…。」


「やだぁ〜。もっと遊ぶの〜!」


バスが出てしばらくした頃に目を覚ましてから、ずっとしつこく遊びをねだる木陽。

二人は最初の方は遊びに付き合ってくれていたが、流石に二時間弱も付き合わされていては、流石に嫌気も指す。

たくさん寝て体力の有り余る木陽の遊びに付き合うのは、慣れている俺でも厳しいのだ。


結局、家族がついてきたことでみんなに迷惑をかけてしまったことを申し訳ないと思い。

バスが目的地に到着するまでずっと。

ごめん、みんなごめんと、心の中で永遠に繰り返していた。

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