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35.好きに対して正直に

「見てくださいよヒービー、このギア!有名なギア職人さんの作品なんですけどね。

シンプルかつコンパクトな形状にも関わらず、ギアの肝である鉱石を特殊な加工を施すことにより、ただ金属などに埋め込むんじゃなく大量に混ぜ込んで作るんで、少しゼストを流し込むだけですごい出力を出すことを可能にしたんすよ。

造形や装飾にもこだわりがあって、まさに神ギアと呼ぶに相応しい代物なんすよ。」


タツは自分の夢の話をし終えると、教室に積んであったギア関連と思われる雑誌を手に取り、今度はギアがいかに素晴らしく奥深いものかを熱く語り出した。

目を輝かせながらかれこれ一時間以上ぶっ続けで話す彼を見ていると、益々ギアが好きなことが伝わってくる。

かくいう自分も話を聞いていて、かなりギアについて興味が出てきていた。

男心をくすぐるメカ要素。あまりにも多彩な加工技術。知らないことばかりだったが、それゆえに知れば知るほど面白い。


「稜ちん楽しそうだね。この同好会気に入った?」


「うん、タツが話してくれたおかげでだいぶギアについて興味出てきたよ。」


「それは良かったっす。ところで急に話変わるんですけど…。ヒービーの持ってるギア自分に見せてくれないっすか?」


突然の頼み事に、水姫の方に視線を向ける。

一応姉さんの形見であると同時に、水姫達姉妹の命とも言える代物だ。簡単に渡していいものか?

水姫は俺の視線に気づくと俺の考えを察したのか、即座に手でOKサインを出し、ウインクをしていた。


「いいよ、これなんだけど…。」


首に下げていた指輪をタツに手渡す。

タツは受け取った指輪をいろんな角度から観察していると、急に顔から大量の汗が流れ出す。


「こっこれ…、ヒービー!この指輪型のギア、どこで手に入れたんすか?」


明らかに様子のおかしいタツに、指輪を手に入れた経緯と姉のことを話した。


「流れ星だと思ったらそれが自分に降ってきて、そしたら姉が増えて。たまたまこの学校に来たら、亡くなったお姉さんの情報を知ってる先輩がいて、Sクラスに上がったらそれを教えるって言われたんすか?なんかとんでもない話っすね。」


自分で話しておいてなんだか、俺もそう思う。


「まさかヒービーにそんな事情があったとは。しかし、このギアとんでもないっすよ。

一見ただの鉱石が7つ埋め込まれただけの指輪ですけど、その埋め込まれてる鉱石が7つともとんでもない代物っす。鉱石にはランクがあるんですけど、自分の見立てだと、この鉱石全て一番上のランクのやつっすよ多分。」


その話を聞いて驚くどころかむしろ納得している自分がいる。

姉さん達のトンデモ能力を見ればそれぐらいすごいギアなどだと安易に予想できたからだ。


「それに鉱石がただ埋め込まれてるように見えるっすけど、こんな強力な力を持った鉱石を7つも埋め込む技術なんて見たことも聞いたこともないっす。

これ売ったら値段つけられないと思うっすよ。」


そっちの情報の方が、タツから返却された指輪を持つ俺の手をものすごく振るわせた。

貧乏生活が染み付いているからか、ものすごく高価なものを持つと壊してしまわないか緊張してしまうあの心理状態に陥る。


「このギアってどんなことができるんすか?」


タツはもう指輪に興味津々といった様子でどんどん質問してくる。

隣にいる水姫が能力の一部だと説明すると、タツはとんでもない表情で驚いていた。


「この前の兵藤さんとの模擬戦でも思いましたけど、まさかただのホログラム投影型の能力を駆使して実体があるように戦ってたわけじゃなく顕現させた意思のあるお姉様方が戦ってたってわけですか?

もう聞いたことない能力とそれに関する情報量の多さで、自分の頭パンクしそうっす。」


タツは極度の興奮状態からか、頭から湯気が出ていた。そんなタツが落ち着くために深呼吸し出したかと思うと、水姫の方を見た途端、動きがピタリと静止する。


「あの…今気づいたんすけど…。水姫さん、ちょっとメガネ取ってもらっていいっすか?」


「ん?別にいいけど?」


水姫は眼鏡を外しテーブルの上に置くと、改めてタツの方へ視線を戻した。


「ア"ア"ア"ア"ア"ア"ァァァァァァ、やっぱり!!!MIzyu様ですよねっ。まさか本物っ?やばいっす、テンション爆上がりっすよ〜。」


「あれっ?もしかしてあーしのファン?いや〜バレちゃったか〜。やっぱり、変装してても有名人特有のオーラってやつ?が溢れ出てたか〜。」


「あの〜、そのMIzyu様っていうの何?水姫って有名人なの?」


「嘘っ!?知らないんすかヒービー。

MIzyu様はありとあらゆる分野で活躍し、それぞれの活動で大量のファンを作り上げ、この人が動けば経済が動くとまで言わしめた今を輝くスーパーインフルエンサーっすよ。

自分なんかご本人に会えただけで涙が…。」


そんな活動してたなんて初耳なんだけど!

姉妹達は勝手に顕現しては、どこかに勝手に出かけたりしてるのは知っていたが。プライベートに関しては深く知らない。

これだけ嬉し涙を流すファンがいるのだから凄まじい人気者なのは確かなのだろう。

そうおもっていると、急に泣き出すタツの手を水姫は両手で握りしめた。


「こんなに嬉しそうにしてくれるファンの生の声聞けて感激〜。これからも弟の稜共々よろしくね。」


「あ"っ、がっ…、ぶふぁっ!!!」


急接近した水姫のあまりの顔の良さに感情が振り切って、タツは挙げ句の果てに鼻血を垂らしながら白目をむいて気絶した。


「ありゃま、倒れちった。」


水姫は自分がとどめを刺したことに気づかずキョトンとしていた。


***


「それじゃあ、いい返事を期待してるっす。」


数十分後。

目を覚ましたタツに本題でもあった任務を受けるために部活を探していたことを伝えると。


『うちは同好会ですし、メンバーも自分一人だけなんでお力にはなれそうにないっすね。

できればこの同好会も部にして、自分も進級の為に必要なポイント稼いだりとか色々したいんすけど、何分友達がいないもんで…。』


やる気はあるようだが、待っていてもギア研究会が部に昇格するのは当分先になるだろう。

タツとはもう友達になったようなもんだし、何よりあの同好会は唯一興味を惹かれた面白い場所だ。

なんとかできればいいんだけど…。


暗くなってきたので帰ろうかと教室を出て、タツに見送られてから少し歩いた時に、ふと頭の中にアイデアが浮かんだ。


「あっ!そうだっ!」


「おっ!なんかいい考え浮かんだ感じ?」


「良い考えかどうかはわからないけど、上手くいけば今ある問題全部解決できるかも!」


「お〜、それはすごいね!じゃあ早速稜ちんが考えた作戦を決行だぁ〜。ささっ!善は急げだよ!早く早くっ!」


アイデアを思いついた俺よりもワクワクしている水姫に手を引かれ、俺たちは駆け出した。

この案が上手くいって、少しでも前へ進めたら良いなと心からそう思った。

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