33.こじ開けろ、新たな扉
部活探し2日目の朝。
学校に登校した俺は、同じく昨日部活探しをしていたクラスのメンバーと集まって昨日の成果を報告しあっていた。
「ところでみんなは昨日の部活動見学どうだった?いい部活あった?ってゆうか決まった?」
先に自分の昨日の成果は散々だったことを報告しつつ、流れで3人の成果について聞くと、急に3人の表情が曇る。
「私は昨日話した剣道部に見学に行ったのだが、G組だからと言う理由だけで見学は断られてしまった。頭に来たので、こっちから願い下げだと言ってすぐにその場を去った。」
何それ、酷すぎない?
いかにら最低ランククラスだからと言ってそんな差別みたいな事許されるのだろうか。
「俺のボクシング部も似たようなもんだ。G組だとわかるや否や、馬鹿にしてきやがってよ。
ムカつくからボクシングで笑った奴ら全員ボコボコにしてやったよ。」
お前は何やってんだ。
確かにムカつくだろうけど、すぐ手を出すのは良くない。
「私の家庭科部は文化系だからかそんな事なかったんだけどね。逆にこの学校は文化系の部活の扱いが良くないらしくて。
部費が出なくて、食材とか調理器具は各自持ち寄りで本当にやりたい人だけで集まってやってるんだって。
そんな中に任務目的で入ろうとしてる私がどうしても不純な同期に思えて入るの辞めちゃった。」
「そうだったんだ…。みんな部活動探しで苦労してるんだね。」
三人は静かに頷いた。
一応三人は今日の放課後にもまた部活を探すと言っていたが、あの様子を見るに、部活には入らずバイトでもいいかなとも思っていそうな雰囲気が出ていた。
「俺も普通にバイト探そうかな…。」
「何言ってんの稜ちん!私たちの部活動探しはこれからだ。この物語を終わらせるにはまだ早いよ。」
ナチュラルに水姫が突然顕現して、訳のわからないことを言い出す。
どうでもいいが、今日はパンツスーツスタイルに黒縁メガネでのご登場である。
「さぁ、いざゆかん!部活動探しの旅!ちなみに今日の格好のコンセプトはできる女教師風だよ。」
まだホームルーム前だし、放課後まで待って欲しい。ってゆうか格好のコンセプトの情報は要らない。
今日も今日とて自由奔放な水姫であった。
***
時は流れ再び放課後。
今日は自分のペースで見て回るからとあらかじめ水姫に伝え、水姫は俺の少し後を歩いてついてくる。
昨日まだ見て回ったところがないかと少し見回っていると、人気の全くない部活棟の奥。
蛍光灯が近々と点滅し、あまり整備の行き届いてない暗がりの場所へと辿り着いた。
「適当に歩いてたら変なところ来ちゃった。」
「またまた〜。そんなこと言って、人気のなさそうなところにあーしを連れてきてどうするつもり?」
「どうもしないよ。とりあえず一旦戻って…。」
振り返りざま、ふと目をやった視線の先のドアに、張り紙がされているのが見えた。
「ギア開発同好会?」
張り紙にはそう書かれていた。そして、メンバー募集中とも書かれている。
「へぇ〜、ギア開発の同好会かぁ〜。面白そう!
稜ちん、入ってみようよ。」
「同好会か…。ちなみに同好会でも入れば任務受けられるの?」
「それは無理。受けられるようになるのは部活動からだね。」
「じゃあ見学しても意味なくない?」
俺たちの目的はあくまで部活動をエンジョイすることと共に、部活に入って任務を受けられる状態になることだ。
その条件にここは当てはまらない。
「えー、そんなこと言わずにさ、入ってみようよ。ほらほら、早くドア開けて。」
「まぁ、見学するくらいならいいかな…。」
水姫に物理的に背中を押され、仕方なく扉に手をかけた。その瞬間。
バチチッ!
「うぎゃあああぁぁぁーーー!」
ドアノブに手をかけた瞬間、体に電気が走り抜ける。
咄嗟に放しはしたが結構な威力の電流に死ぬかと思った。
「なにこれ!?なぜにドアに電気が…。」
「あー、やっぱりなんか仕掛けてあったね。」
やっぱりって。
いつもは俺なんかより先に集団に飛び込んで行ったり、勝手に部室の扉開けるのに今回だけ俺を先に行かせようとするから少し不思議ではあったけど、まさか何かあるのか分かっててやらせたのか?
このやろう…。
よく見たら扉の上に監視カメラっぽいのが上についてるし、ここの同好会やばいんじゃないの?
「面白いね!益々中に入ってみたくなっちゃったよ!」
メンバー募集と書いてあるのに、この部屋の入室を制限している感じが逆に水姫の興味を引いたのか。
水姫は興味津々と言った面持ちで扉の前に立った。
「中に入るって言ったって、どうすんのさ。」
触れれば先ほどのように強力な電流が体を巡ることになる。普通の方法で開けるのはまず不可能だ。
「そんなの簡単じゃん。」
そう言うと水姫は体の周りに能力で出した水を纏い出した。
嫌な予感がする。
「激流破!」
次の瞬間、能力で生成された水姫のすべての水達は、凄い勢いと共にドアに叩きつけられた。
バコンッ!!!
堪らずドアは衝撃によって外れて、辺りは水浸しの惨状となった。
もれなく俺も大量の水を浴びてビショビショになったのは言うまでもない。
「さっ、行こっ!」
「さっ、行こっ!じゃねぇーよ。どうすんだドア壊しちゃって。しかも、辺り一面水浸し。」
「ドアは後で直すし、水は大丈夫!」
水姫が指をパチンと鳴らすと、あたりに大量にあった水という水が、一瞬に手品のように消えてなくなった。
「どうなってんのこれ?」
「今回はゼストを水に変換して水を生み出したから、ゼストの供給を経てば自然と水も消えるのです。」
水姫は教師の格好をしてるからか、わざと開けてる胸元からわざわざ伸縮性の指示棒を取り出し、まるで授業でもしているかのように説明してくれた。
「そんなことよりも早く入ろう。」
「大丈夫かなぁ…。ドア吹っ飛ばしちゃったから、絶対に第一印象最悪だよ。」
恐る恐る部屋の中に入ると、そこには一人の男子生徒が立っていた。
「なんなんすかっ、あんた達。まさか…、俺が無断でこの空き教室を使用してるのを知って、強制的に部屋を退去するように学校が仕向けた刺客っすね!
確かに勝手に使ってたのは悪いっすけど、自分はここから出てく気はないっす。」
何かを勘違いをして、素人感のある構えを取りつつこちらを威嚇してくるこの生徒。
単発に水姫と同じ黒縁メガネ。制服のブレザーの中にパーカーを着込んでいる姿はどこかで見覚えがある。
「あれっ?どこかで見覚えがあると思ったら、同じクラスの響八君じゃないっすか。」
思い出した。確かにこの生徒をクラスで見たことがある。後ろの席でいつも何かの雑誌を読んでいる物静かで目立たないタイプの奴だ。
確か名前は…。
「俺っすよ、伊月達夫っす。話すのはこれが初めてですよね。」
怪しげな場所で、怪しげな同好会に見学に来たら、中に同じクラスの同級生がいた件について。
これまた癖のありそうな人物に出会ってしまったと思い、心の中でため息をつく俺なのだった。




