27.FINAL ROUND
それからの展開は一方的だった。
残った連中を片っ端から倒していく。
途中、もう歯向かう意思がない奴らは無視し、ようやく残すはリーダーただ一人となった。
「まっ、待て。いやっ、待ってくれ!
お前ら二人、俺たちの仲間にならねぇか?
そんだけ強いなら、俺たちと組めば上のクラスの奴らを…」
「「断るっ!!!」」
相手の勧誘を途中で遮り、今まで受けた苦痛を返すように目一杯の力を込めた二人の拳が、リーダーを打ち抜いた。
「お前は俺の大切な家族に手を出した。
俺はお前を絶対許さねぇし、そんな奴に背中を預けて戦うつもりもない。
…、その様子じゃあ、もう聞こえてねぇか…。」
吹き飛ばされた先で壁にヒビが入るほどの勢いで激突した奴は、その場で白目をむいて倒れ伏した。
「いや〜、ようやく終わったなぁ。これにて一件落着ってか?」
能力を解いて再び顔を出した火鈴、一仕事を終えたかのように体を伸ばしていた。
「喧嘩は一件落着かもしれないけど、これはどうするの?」
喧嘩後の広場は、火鈴の能力で出した炎が今も燃え盛っている。このままでは火事になりそうだ。
ポツ…。
顔に何が冷たいものが当たった気がした。
先ほどまで強めに吹いていた風が急に止んだと思ったら、今度は雨が降ってきた。
「ナイスタイミング。結構降ってきたし、これなら火も消えんだろ。」
確かに雨が強めに降ってきた。
4月で暖かくなってきたとはいえ、雨で体が冷えたら風邪を引くかもしれない。
急いで雨宿りのために校舎に入ろうとする。
ふと上壁のほうを見ると、その場に立ち尽くしたまま雨に打たれ、動かずにいた。
「上壁君?どうしたの?ずっとそこにいたら風邪引くよ?」
もしかしたらダメージを受けてもう動けないのかと思い、肩でも貸そうかと手を差し伸べる。
パシッ!
差し伸べた手は上壁に振り払われる。
「お前、何様のつもりだ?
勝手に俺の喧嘩に混じってきたと思えば、
俺のダチだとかなんだとかふざけたことぬかしやがって…。ウゼェんだよ!」
さっきまで結構か息合わせながら一緒に戦ってたのに、どうしてしまったのか?
「あのまま俺一人でやったってどうにかなる喧嘩だったんだ!それを派手な能力を使って相手を倒して、正義の味方気取りか?」
「そんなつもりは…。ただ、俺が上壁君を助けたくて…。」
「知ってんぞ。落ちこぼれのG組の中でとんでもない能力を持ってるやつがいるって職員室で教員共が噂してたからな。それがお前だろ。
お前は俺たちみたいな弱い能力しか持たない奴を内心バカにしてんだろ!」
「違う!バカになんかしてない!」
「口でならどうとでも言えるんだ。今までのやつらはみんなそうだった。
信じてるだの、仲間だの勝手にほざいて、勝手に離れていく。きっといずれお前もそうなる。」
なんだか段々腹が立ってきた。
俺はたしかに上壁の過去に何があったかは詳しくは知らない。
でも、逆にお前は俺のことを何も知らないだろう。
「また仲間と笑い合えるかもなんて来もしない未来を期待して裏切られるくらいなら、俺がこの手で終わらせてやる!この繋がりを!!!」
上壁はこちらに向かってファイティングポーズを取る。
こちらを睨むその表情は、偽りのない覚悟を感じさせる。
ここが正念場かもしれない…。
こうなるかもと予感はしてた。
上壁と本気でぶつかるのならば、関わるならば、避けては通れない。
会話だけじゃ通じ合えないなら、やることは一つ。
この時のために火鈴姉さんにお願いして教えてもらったんだ。
「!? おい、それはなんの冗談だ?」
「冗談なんかじゃねぇ。これは俺の、俺なりのお前との向き合い方だ。」
ガードを上げて腰を落とし、足とつま先を適切に開く。
「ボクシング…。」
そう、これが上壁と本気でぶつかり合うために考えた、俺のやり方だ。
お前がこっちの話に耳を傾けないなら、俺がお前の土俵に上がってやる。
***
「いたぞ侑!こっちだ!」
一人の少女が長いポニーテールを揺らしながら、こちらに駆けてくる。
「待って燕ちゃん!置いてかないで!」
燕の後を追いかけて瀬川さんが息を切らしてついてくる。
「稜には来るなと言われたが、G組の一大事とあれば私たち全員の問題だ。私も助太刀いたす!」
「ハァ…ハァ…燕ちゃん。なんか…もう、終わっちゃった…みたいだよ。」
「なんと、一足遅かったか…。ん?あそこに立っているのは上壁と稜ではないか!?おーい!」
「おっと、嬢ちゃんたち。ちょっと邪魔しないでもらえるかな?」
稜たちを見つめる二人の背後に火鈴急に現れる。
「キャっ!」
「だっ、誰だ?」
「アタシは稜の姉の火鈴てんだ。よろしくねかわい子ちゃんたち。」
「えっ、響八君のお姉さん?美月さんの他にもいたんですか?」
「それでは貴方が師匠に聞いた火鈴殿。」
「えっ、燕ちゃん知ってたの?」
「あぁ、稜と美月殿に聞いてな。」
「ふーん…。」
瀬川さんはその話を聞いて少し頬を膨らませた。
「ところで火鈴殿。あの二人は戦いが終わったのになぜあそこで向き合い、今にも殴り合おうとしているのですか?」
「あぁ、あれは言うなれば、男同士の青春…かな?」
「…?」
女子二人は顔を合わせ、理解ができていない様子だった。
「まぁお嬢ちゃんたちにはよくわからないかもな。
でも、これはあの二人にとって、今後を左右する重要な肉体言語何だ。どうか手出し無用で見守ってやってくれ。」
二人は火鈴真剣な眼差しに何かを感じたのか、じっとその場で稜たちを見つめていた。




