13.いざ、尋常に
「貴様! なぜ私のクラスにいるのだ!」
なんでって、このクラスの生徒だからですけど?
「まさか、私のことを追ってこんなところまで。私のクラスまで調べているとは、まさか貴様俗にいうストーカーというやつか?」
いやだから、クラスメイトだからですけど。
「それとも、さっきのことネタに私のことを脅して言うことを聞かせる気か!?この卑怯者め。」
さっきから兵藤さんが喋るたびにクラスが妙にざわついている。
主に女子が。
えっ、響八君と兵藤さん何かあったの?とか、
響八君、ついにクラスの子にまで手出したの?とか。
やっと5股疑惑が落ち着いて来たのに、クラスの女子 (瀬川さん以外)からの冷たい目線がまた元に戻ったように感じる。
「兵藤さん落ち着いて。一旦落ち着いて話し合おう。」
このセリフといいシチュエーションといい、浮気男の痴情のもつれ過ぎてもうどうしようもない。
収まりのつかないこの状況に割って入るように輪國先生が声をかけた。
「ちょっと〜、先生を無視して盛り上がらないでくださ〜い。若いカップルが考えの違いで痴話喧嘩ですか〜?もうすぐ三十路がすぐそこに迫ってるのに彼氏がいない先生への当てつけですか?先生泣いちゃいますよ?」
セリフが後半に行くにつれて先生の顔が怖くなっていく。
「「違います!!!」」
ハモった。
「まぁ冗談はともかく、もうホームルーム始まってますので、とりあえず二人とも席につきましょうね。今日は色々と忙しいので。」
先生はにっこりと笑いながらそう言っているがよく見ると、わずかに見える目の奥が笑っていない。
「「はい。」」
珍しく真面目な先生の雰囲気と手をかけさせるなと言わんばかりの眼差しに圧倒されて、二人は静かに席についた。
「じゃあ改めまして。今日はみんなに渡したいものがあります。こちらを前の席の人は後ろに回してください。」
回ってきたのは時計型の端末。学校の略称であるAHDのマークが入っている。
「これはこの学校での生徒手帳であり実績を管理するための端末です。そのほかにも様々な機能がついてますが、それは追々。」
きたっ! 実績に関する情報。
「先生としたことが、これは入学式の日に渡すはずだったんですけどすっかり忘れてました。てへぺろ。」
てへぺろって…。ちょっと先生、職務怠慢なんじゃないの?
クラス全員が先生に向かって不信感の籠った眼差しを送っている。
「と、とにかく。重要な実績システムについて説明しますね。
とりあえず、この端末を自分のどちらかの腕の手首に取り付けて電源を入れてください。」
言われた通りにすると、機械音がなると共に端末のモニターに接続完了の文字が表示される。
「今ので装着した人のゼストがその端末に登録されました。簡単に実績のつき方に説明しますとですね。
何かしら端末に登録者以外のゼストが一定量検知されるか、装着者が気絶、または纏うゼストがほぼゼロの状態だと判断されると、学校に設置されている多数の監視カメラや監視システムに基づいて、関わった者を特定し、その場で優位を立っている者にポイントが入る、とのことです。」
先生はいつの間にか手に持っていた説明書のようなものを読み上げて満足そうにしていた。
「ちなみに端末が破壊、または紛失されますと、再発行に1週間ほど時間がかかる上に今まで貯めたポイントがゼロになっちゃいますので気をつけてください。」
つまり、上にあがっていくためには他の生徒と闘いまくって、ポイントをたくさん集める必要があるってことだ。
先生が初日に言ってた縄張り争いというのは、ポイント稼ぎのことを言っていたのか。
ここ数日先生が帰り道に気をつけろって言ってた割に何事もなかったのは、端末を持ってなくてポイントにならなそうと標的の対象外にされてたからかもしれない。
「まぁ、いきなり説明しただけじゃイメージ湧かないですよね。
そんなあなたたちに朗報です。
今日これから特別訓練場に行って、実際に能力を使った模擬対戦をおこないつつ、ポイントがどういうふうに付くのか実践してみましょう。
いやー、ようやく私たちのクラスの番が来たんですよ。最底辺クラスだから優先順位低くて困っちゃいますよねぇ。
じゃあ、この後運動着に着替えて特別訓練場にレッツゴーですー。」
***
「とうちゃーく。
ここが我が校の誇る特別訓練場でーす。」
案内された訓練場は体育館と違って無機質な感じで、ものは一つも置かれていない。
壁、天井に至るまで真っ白で、一定の間隔でマス目のように黒い線がはしっている。
「すごい部屋だね響八君。なんだかここだけ別世界みたい。」
この部屋が発している唯ならぬ存在感。
それに臆したのか、瀬川さんだけでなく他のほとんどのクラスメイトも部屋に入ったまま固まってしまったかのように動かなくなってしまった。
「ありゃりゃ、みんな萎縮しちゃってるね。誰かにお手本で戦ってもらおうと思ったのに。」
残念がる先生をよそに、萎縮したクラスメイトを掻き分けて、一人の女子生徒が出てくる。
「先生! よろしければこの兵藤が実演の任を負いましょう。」
「えっ、いいんですか!?じゃあお願いしちゃいましょうかね。それじゃあ相手は…。」
「相手は決まっております。」
燕は手に持っていた竹刀でその相手を指し示した。
「おっ、俺?」
指名された俺を見て、近くにいたクラスメイトたちは下がって俺から距離をとっていった。
「そう、貴様だ。いい機会だ。この場を借りて今朝のつづきをさせてもらう。」
「おっ、なんだかわからないけど、破局しそうなカップルって感じでいい気分だから対戦ペアはこの二人に決定。朝のホームルームで騒いだ罰も兼ねてね。」
絶対に一つめの理由が大半でしょ。
ほぼ先生の個人的な憎しみじゃないですか。
「さぁ、観念して勝負を受けるがいい。そして正々堂々私と戦え!!!」
断れる雰囲気ではなさそうなので、俺は潔く兵藤さんの待つ中央へと歩き出した。




