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12.にゃ、にゃーん

光の一件で、俺はSクラスに入ることを目標することに決めた。

そこで、当面のやるべきことを姉さんと学校にいた経験を持つ家族のみんなと話し合った。

まずは前にやっていた体力向上と能力の扱い方の練習。

そして、一学期末に行われるクラス対抗戦の代表選手になること。

代表選手は、試験までの期間内の授業の成績や積んだ実績の上位5名が選ばれる。

学校が始まって数日。

美月姉さんたちの情報によると、もうそろそろ実績に関する話がされる頃だ。


「ニャーン。」


急に聞こえて来た猫の声。

どこからしたのか、辺りを見回していると通学路の少し先の塀の上に猫が垂らした尻尾を揺らしながら座っていた。

その塀の下に、猫に熱視線を送っている女子生徒が一人いた。

彼女には見覚えがある。

たしか同じクラスで、初日のホームルームに手を挙げて質問していた生徒だ。

長い髪のポニーテールとキリッとした顔立ち。

いつも、竹刀袋を持ち歩いているのが印象的だ。

立ち止まって何をしているのか気になって、近くの電柱の陰に身を隠して様子を見る。


「にゃ、にゃーん。」


 周りをきょろきょろと確認した後、彼女は猫の鳴き真似をして、猫の注意を引こうとしていた。

普段凛としている彼女の印象とは違って、緩み切った顔で、猫を愛でている。

なんだか見てはいけないものを見ている気がして来たので回り道して学校へ行こうとすると、猫を触ろうとして手を伸ばした彼女に猫は勢いよく飛びかかった。


「きゃっ!」

「あ、危ない!」


咄嗟に受け止めようとした彼女はバランスを崩し、後ろは倒れかかる。

そこへスライディングでクッションになるように、彼女と地面の間に滑り込んだ。


「うげっ!」


なんとか間に合った。

彼女を受け止める時に体重がかかった場所が悪かったのか、変な声が出た。

無意識に痛んだ場所に手を伸ばすと、自分のものとは思えない何か柔らかいものに手が触れた。


「ヒャッ/// やっ、やめ…ろ。」


正体を確かめるように触っていたものは、さっきの女子生徒の胸だった。


「あっ、いやそのこれは…。」

「ぶっ、無礼者!」


彼女はすぐさま起き上がり距離を取ると、持っていた竹刀袋から竹刀取り出し、こちらを向いて構え出した。


「ごっ、誤解です。さっき猫に飛びつかれて倒れそうだったから、助けようとして…。」


当の猫は彼女の肩を中継地点にして、向かいの塀に飛び移ってどこかへスタスタと歩いて行ってしまった。


「きっ、貴様。さっきの猫とのやりとりも見ていたのか!? 」


先ほどの自分と猫とのやりとりを思い出したのか、彼女の顔はみるみるうちに真っ赤になっていった。


「別に、猫好きなのは悪いことじゃないんじゃないかな?」

「こんなに何度も辱めを受けて黙って見過ごすほど、この兵藤(ひょうどう)(つばめ)、甘くはない!」


彼女は素早い踏み込みで一気に俺との距離を詰めると、竹刀を高々と振り上げた。


「うわぁ、ちょっと待って…。」

「問答無用!!!」


ブチンッ

ちょうどその時だった。何かが音を立てたと同時に彼女の動きが止まったのは。


「そっそんな、こんな時に限ってサラシが…。」


竹刀を持たない方の手で急にボリュームを増した胸を支えると、彼女はこちらを睨んだ。

俺何も悪いことしてないのに…。


「よく見ればその制服、同じ学校の生徒か。

どこの誰かわからぬが、この場は一旦引かせてもらう。しかし、次にあった時は覚えておけ。その時は必ず"斬る"。」


そういいきると彼女は足早に学校の方へと走っていった。

悲報:クラスでは目立たず影の薄い俺。クラスメイトに顔すら覚えられてなかった。


「なんだったんだろう、さっきの娘…。」


朝からハプニングの連続でとても疲れた。

スマホの時計を見ると、作業の時間が迫っていることに気づき、俺も急いで学校へと走り出した。



***



「せっセーフ。間に合ってよかったぁ。」


チャイム5分前、教室にまだ先生の影はない。

それに、心配していた兵藤燕の姿もない。

先に行ったはずなのにどうしたんだろう。


「響八君どうしたの?手、擦りむいてるよ?」

「あっ、本当だ。気づかなかったなぁ。」

「ちょっと手貸して、手当するから。」

「いや大丈夫だってこのくらい。唾つけとけば治るって。」

「今時そんな応急処置しようとしてる人いないよ。いいから手出して。」


瀬川さんの胸元の十字架のペンダントが光を浴び始める。


「この者の痛みを癒やしたまえ、【治癒(ヒール)】」


傷の上にかざした瀬川さん自身の手も光を浴びると、あっという間に傷が消えてなくなった。


「はい、これでおしまい。」


後すら残ってない。それに傷つく前より肌が綺麗になってる気もする。


「私の能力は人の治癒能力を活性化させて傷の治りを早くするの。今回はかすり傷だったから早く治ったけど、あんまり大きなケガは治すのに時間かかるんだ。」

「ありがとう、瀬川さん。」

「どういたしまして。またケガした時は遠慮なく言ってね。」


優しく微笑む瀬川さんを見ていると、心まで癒される。

さっきあんなことがあった後だから尚更心に沁みる。

瀬川さんが同じクラスで本当に良かった。

だけど一つ気になることがある。

回復能力は能力の中では希少な部類で、適性があるだけで将来有望しされるって美月姉さんが言ってた。

それなのに瀬川さんがG組みたいな最下級クラスにいるのはなんでなんだろう?

まさか、俺と同じで何かしらやらかして、このクラスになっちゃったとか?

そんなことを考えていると、教室の前の扉が開いた。


「ぐっもーにーんぐ、みんな今日も元気してる? じゃあ今日も張り切って…」


ガラッ!


「遅れてすみません! 今朝少々トラブルがございまして…」

先生の言葉を遮って後ろの入り口から入って来たのはさっきあった兵藤燕。

燕は謝罪の言葉を言う途中で、クラスの中の俺をその瞳に捉えた。


「あーっ!? 先ほどの不埒者ー!」


はいはい、わかってましたよ。

このまま厄介ごとなしで今日一日過ごせるなんて淡い期待しててすんませんでした。


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