救済の方法 12
その頃のお風呂。
「……なんかローズが叫んでるけど、どうしたんだろう?」
「さぁ……」
「まぁ、どうでもいいか……それよりこのお風呂、いい匂いで気持ちいい……」
「そうね。体が温まって心地いい……入浴剤、明日買わないと」
すぐ隣の脱衣所でローズが性的に襲われている最中、アーリィとウネは二人でまったりとお風呂を堪能していた。
「……ところで」
「なに?」
二人くらいなら余裕で入れる程に大きい浴槽に肩まで浸かりながら、アーリィは何か恨めしそうな眼差しでウネを見ながら声をかける。
ウネが不思議そうな表情で顔を上げると、アーリィが不満そうな様子でこう彼女に話しかけた。
「お前といいローズといいマヤといい……ずるい」
「……なにが?」
またしきりに自分の平面的な胸を摩りながら、アーリィはふて腐れ気味な様子でそう呟く。ウネが怪訝な様子で問い返すと、アーリィは「どうしたらそんな大きく胸は成長するの?」と疑問を返した。
「え、胸?」
急にそんなことを指摘され、ウネは少し動揺したように頬を赤くする。自分の胸の大きさなどそんなに意識していなかったウネだが、アーリィに言われた彼女は改めて自分の胸に手を当てて大きさを確認した。
「……別に、私は普通な気がするけど」
ウネがそう答えると、アーリィの機嫌メーターが負の方向へと振り切れる。アーリィはまたブーブーにふて腐れ、顔の半分まで湯の中に沈んだ。
「……ごぼぼぼ、ごぶっ」
「……ごめんなさい、何を言ってるのかわからない」
口を湯の中に沈めたアーリィは、その状態のまま何かを恨めしそうに呟くが、当然そんなんじゃウネに言葉は伝わらない。アーリィは再び顔を水面から出し、「大きい胸、羨ましい」と呟くように言った。
「そ、そう……」
「少なくとも、私より大きいから羨ましい……何か胸、大きくなるコツとか知ってる?」
「こ、コツ……!?」
真面目なアーリィの問いに、珍しくウネは困り果てた表情となる。コツなど知らなくとも、勝手にここまで育った胸なのだ。そもそもウネには胸の大きさに対するこだわりなどなく、ほとんど意識したこともなかった。
「コツ……」
「うん、コツ」
「……ちょっと待って、考えてみる」
「うん」
それからしばらくウネは、アーリィが納得するコツの答えを求めてひたすら考え、アーリィもウネからの答えをひたすら待ちながら湯に浸かり続ける。
「……」
「……」
二人が仲良くのぼせるまで、その後も無言の入浴は続いた。
フェイリスの自宅に泊まって朝を迎えたジュラードたち一行は、朝からまたフェイリスの手料理を味わって彼女の世話となる。
「ふああぁ……はよー」
大きなあくびをしながらユーリが居間へと足を踏み入れると、部屋の中央のテーブルには美味しそうな手料理が並べられ、すでにジュラードとウネ、それにマヤとうさこが食事をとっていた。
「おはよう」
ジュラードが焼き魚を頬張りながらそうユーリに挨拶を返し、他の者も各々返事を返す。ユーリはボサボサな髪を手櫛で直しながら、空いていたジュラードの隣の席に座った。すると直ぐに台所からフェイリスがやって来て、彼にコーヒーを用意した。
「コーヒーでよかったですか?」
「あ、すいません。それでいいッス」
ユーリはフェイリスからコーヒーの入ったカップを受け取り、フェイリスは「今、ユーリさんの分の食事も用意いたしますね」と彼に言う。ユーリは礼を言い、フェイリスはにこやかな笑顔で台所に戻っていった。
「……なんかいいのかな、こんなに世話になっちまって」
コーヒーを啜りながらそうポツリとユーリが呟くと、ジュラードも何か悪い気がしていたらしく、「俺もそう思う」と小声で囁く。そんな二人の会話に、小さくちぎったパンを食べながらマヤがこう口を挟んだ。
「いいのよ、フェイリスにはお世話になるお礼にローズを差し出したから。彼女もそれで喜んでくれたわ」
「は? ローズ?」
よくわからないマヤの言葉を聞いて、ユーリはふと気づいた様子で「そういやローズは?」と問うた。
「アーリィもいねぇけど……」
ちなみにイリスもまだこの場にはいない。ユーリが起きた時は彼はまだ寝ていたので、ローズたちもそうだろうかとユーリが考えると、ウネが「アーリィは寝てる」と答えた。
「ふ~ん、じゃあローズもまだ寝てんのか」
ウネの返事を聞き、ユーリはそう呟く。しかしこれに対し、マヤは不可解な返答をユーリへ告げた。
「いえ、ローズなら失神してるわよ」
「? ……寝てるじゃなくて?」
「えぇ、寝てるじゃなくて。大丈夫よ、別に命に別状あるわけじゃないから」
何故失神を……と、マヤの答えを聞いたユーリはそう疑問に思うも、何となくそれ以上の詳しいことは彼は聞く事は出来なかった。
「それで、さっきの話の続きなんだが」
ジュラードがそう発言し、マヤが「あぁ、今日の予定ね」と彼に返事をする。どうやらユーリがここに来る前まで、その話をしていたらしい。
「会長たちに会うのが夕方過ぎだから、それまでは予定無いのよね。とりあえず宿においてきた荷物をこっちに移して、街の中で補充するもの補充して……」
マヤは「そんな感じで時間潰すしかないわね」とジュラードに言う。ジュラードは「わかった」と頷いた。
「じゃあ俺は一先ず宿の荷物をこっちに移そう」
「あ、俺も手伝うわ」
ジュラードとユーリがそれぞれにそう言い、マヤは「よろしく」と二人を見やる。そこにフェイリスがやって来て、彼らにこう言った。
「すみません、そろそろ仕事に行く準備をしないといけませんので……あの、申し訳ございませんが、ローズさんたちの分の食事は用意してありますので、温め直してお召し上がりになるようお伝えしていただけますか?」
「あぁ、大丈夫よん。ローズたち起きたらそう言っておくわ」
フェイリスの言葉にマヤがそう返事をすると、フェイリスは彼女に微笑んで「ありがとうございます、マヤ様」と言った。
「マヤ様?」
思わずそう疑問系で呟きながら、ユーリは何となくジュラードの方を見る。だが顔を合わせた彼も『俺も意味がわからない』と伝えるように、ユーリに首を横に振って見せた。
フェイリスが仕事に出た後、アーリィ、ローズと起床する。そして寝坊組で一番遅くに起きてきたのはイリスで、彼はやややつれた顔で昼近くに起きてきた。
「う~……やっぱ髪の毛ベタベタする……」




