再びの旅立ち 3
「あ、いや、本題は別なんだ」
『そうか。なんだ?』
問われ、ローズは彼女を呼び出した理由を説明し始める。
やがて説明を聞き終えると、ハルファスは興味深そうにイリスに近づいた。
『ほぉ……魔物化して自我を取り戻した存在か。奇跡だな』
「それで、変身術というものをあなたは知っているんでしょうか?」
イリスが願うようにそう問うと、ハルファスは色気を含む笑みを見せて「まぁな」と頷く。その返事を聞き、イリスの表情が期待に変化した。
「それじゃあ、あなたは変身術が使えるんですね?!」
『あぁ、ジェンドにそれを教えたのは私だからな。だが、他者にその術をかけると言うのは私もしたことが無い。……まぁ、少し時間をくれ。どうすれば他者を対象に術をかけられるか考えてみよう』
ハルファスのその返事に、イリスはまた少し気落ちしながら「わかりました」と返事をする。本音は今すぐにどうにかしてもらいたい事だったが、しかしやった事が無くて難しいことならば仕方ないと彼は自分を納得させた。
「はぁ……しばらくはこの姿か。仕方ないけど、でも尻尾が邪魔なんだよね。ズボンと下着が中途半端にしか穿けなくて、不恰好になっちゃってさ。尻尾だけでもどうにかならないかな……」
溜息と共にそうぼやくイリスに、ローズが真面目な顔で「ズボンに穴あけたらどうだ?」と提案する。しかしイリスは「それはちょっと……」と、苦笑しながら提案を拒否した。
「んー……イリスが魔物から元に戻ることは、じゃあちょっと後回しかしらね。それについてはお姉さまに任せるとして、次の話を先にしちゃいましょう」
ハルファスの話を聞いてマヤがそう結論を出すと、イリスも含めて皆がそれで納得する。
『で、私に用はそれだけか? ならばもう戻らせてもらうが』
「あぁ、ありがとうハルファス。じゃあ変身術? のこと、よろしく頼むよ」
ローズはそう言うと、ハルファスを再び体内に仕舞う。そうして皆は次の話に移った。
「さて、次に確認する事は……そうね、やっぱり魔物化の原因についてかしらね」
「俺は昨日の夜にお前が微妙に大きくなったことが気になるんだけど」
マヤを見ながら、ユーリがそう意見を 言う。
ちなみに今現在のマヤは今までと同じ手のひらサイズの姿だったが、それは本人いわく『大きくなれるけど、このサイズじゃないとローズのおっぱいに挟まれない』かららしい。
「まぁそれも含めて、イリスが魔物化した原因についてアタシの考えを言わせてもらうわよ」
マヤは既にイリスが魔物化した理由について、大体の考えをまとめているらしい。皆はマヤの話に耳を傾けた。
「まず第一にイリスが魔物化した理由は、間違いなく”禍憑き”が関係しているわ」
「まぁ……そうだろうね。あたしもそれしか考えられないし」
ユエが頷き、マヤは「でも」と続ける。
「”禍憑き”になったからといって、皆が魔物化するわけじゃないとアタシは思うの。”禍憑き”自体は先日話したゲシュ特有のマナ病だろうからね」
「じゃあなぜイリス先生だけ魔物に変わったんだ?」
ジュラードの問いに、マヤはこう答える。
「原因は、彼が体に無意識に取り込んでいたマナにあったのよ」
「あぁ、お前が気にしていたあのマナか」
ローズはマヤの話で思い出したように、「あの夜、イリスを正気に戻すきっかけになったあのマナだろう?」とマヤに聞く。マヤは「そう」と頷いた。
「結局そのマナってのは何だったんだ?」
ジュラードの疑問に、マヤは「だから、アタシだったの」と答える。この答えにジュラードとユエは首を傾げたが、イリスは何かに気づいた様子でこう口を開いた。
「まさか、それってあの『審判の日』にウィッチを解放したあなたのマナ?!」
「さすが事情を知っているから鋭いわねん、そのとおりよ」
マヤは薄く笑い、イリスの言葉を肯定する。
「そしてこの孤児院のある周辺に多く漂っているマナもこれと同じようね。あなたと、それとおそらくはリリンちゃんはこのマナに影響を強く受けて”禍憑き”を発病したんじゃないかしら」
「リリンが……」
ジュラードの呟きの後に、マヤはこうも続ける。




