再びの旅立ち 4
「少なくともイリスはこのマナを、おそらく無意識に体内に溜め込んでいたみたいよ。そしてそのマナをアタシが吸収し、イリスは正気に戻った。それが昨日は話さなかった、アタシがローズに協力してやってもらったことの正体よ」
昨晩のマヤの行動は、つまりイリスの体内からかつて自分を構成していたマナを取り出し、再び自分のものにするために吸収したということらしい。
「この辺りに充満しているそのマナを、イリスは体に溜めていたのですね。そしてその結果に、あのような暴走を起こした……確かにこの辺りのマナは何か異常でしたからね。魔物化のトリガーは、そのマナだったというわけですか」
ラプラの言葉に、マヤは「と言うよりも、おそらく今世界各地で起きてる”禍憑き”の原因がそのマナの可能性が高いわ」と言う。
「エルミラが調べていた各地のマナの異常な値は、多分ウィッチとは違って人に手を加えられたアタシのマナが、世界にマナを満たす機関に還ったことが原因なんじゃないかってね。きっと変化したアタシのマナが、ウルズのマナが四元素のマナを生み出す時にその生み出した四元素のマナと混じって、今世界にばら撒かれちゃったんじゃないかと。そして人を含めた環境に異常が発生し始めた……アタシを造った旧時代の科学者たちも、そういう不具合が起きる事は想定していなかったんだと思うわ」
「じゃあ私の病気が治った理由は、魔物化が原因じゃなくてあなたが私の中の異常なマナを吸収してくれたから?」
「アタシはそうかなって思うの」
イリスの問いにマヤはそう答える。それを聞いたジュラードは、「ならリリンの病気もそれで治るのか!」と興奮したように言った。
「多分ね」
マヤが頷くと、ジュラードはひどく安堵した様子で「そうか……」と呟く。するとラプラが、「では魔物化した理由は?」とまた疑問を提示した。
「うん、それなんだけど……これは完全に憶測なんだけどね、イリスが病気の最中に一回だけアーリィが彼に回復魔法を使ったでしょう?」
マヤのその言葉に、イリスは「うん」と頷く。
「アタシが思うに、あの直後からあなたの容態は悪化して魔物化したじゃない。”禍憑き”の原因がアタシを構成してたマナなら、アタシのマナを体に宿しているアーリィによる魔法が何かしら強く影響して、”禍憑き”が急激に悪化したんじゃないかしら。そして本来は起こり得ない症状の魔物化が起きた……アタシはそう考えたんだけど」
「……そういえば、ラプラの魔法では症状が回復したよね? 私は回復魔法が原因かなと思ったけど、あなたの考えが正しいとすると原因は回復魔法じゃなくて、ラプラが魔法を使ったという部分が重要だったのかな?」
イリスのその言葉に、ラプラはハッとした様子で「やはり私の愛があなたを助けた?!」と言う。そしていつも通りイリスはそれを無視した。
「んー……愛はともかく、ラプラが魔法を使うことが何か重要だった可能性はあるわね。あるいはアーリィだからいけなかったか……後者の方が確率高いかな? それ以上の事は、今はわからないわね」
”禍憑き”の治療法が旧時代の医術でなくとも可能だと言う事が判明した今、その話はそれほど重要ではないと判断し、マヤは次の話題を口にする。
「おそらく今のままならリリンちゃんが魔物化するようなことは無いと思うわ。でも禍憑きは治療しないと、そのうちに衰弱死することは確実よ」
「治療しないとな」
ローズがそう強くいい、マヤは「えぇ」と頷いた。
「だが、何故イリスとリリンが病気になったのだろう……」
ローズの疑問に、またマヤが口を開く。
「そうね……たまたまなんでしょうね。二人の体がアタシのマナを溜め込んでしまう体質で、体がマナに合わずに過剰反応を起こして病気を発病してしまったんでしょう」
「で、治療法はイリスの時と同じでいいのかい?」
ユエが問うと、マヤは「とりあえずね」と返事を返す。
「おそらく彼女も体の中にマナを溜め込んでいるだろうから、それをローズを通してアタシが回収。その後はこの地域一帯の原因となるマナを回収したいんだけど……こっちはまだ方法が思いつかないのよねー」
そう呟いたマヤを見て、ユーリが何か気づいた様子でマヤにこう聞く。
「なぁマヤ、お前が昨日の夜に少し大きくなった理由ってもしかして……元は自分だったマナを回収したから、か?」
ユーリのその言葉にマヤは「あら、ユーリにしては鋭いわね」と返事した。
「『ユーリにしては』は余計だろ」
「ごめんなさい、つい正直な本音が。ま、それはともかく今ユーリが言った事はそのとおりなのよ。つまり……」
マヤはそう言うと、ニヤリと怪しく笑む。ローズもハッとした表情でマヤを見た。
「そ、そうか! つまりマナを回収すれば、マヤは元の大きさに戻れるかもしれないってことか?!」




