再びの旅立ち 2
「で、でも人型だったのは唯一の救いじゃないか? もっとほら、狼みたいなのとかドラゴンになったりとかしたら、喋る事も出来なくなりそうだし!」
「……あぁ、それはそうかもね。ドラゴンとかだったらもう、絶対にユエたちと一緒にここに居るなんて事出来なかっただろうし」
ローズの言葉を聞き、イリスは少しだけ前向きに自分の状況を考えた。
「希少な人型の魔物だったのは確かに救いね。あとは角とか尻尾とか、手足もどうにか誤魔化せたら人に見えるようになるかも」
マヤもそう言い、しかしその後に「でもどうしたら誤魔化せるかしら」と考えるように呟く。
「帽子でも被りゃいいんじゃね? 手と足は手袋とブーツとか、なんかそんなんで上手く誤魔化すとか」
「手袋はちょっと暑そうだな……尻尾はどうするんだ?」
ローズの疑問に、ユーリは難しい顔で「そこまでは思いつかねぇよ」と返す。ユエも「本当にどうしたらいいんだろうね」と、困った様子で呟いた。
するとしばらくしてラプラが、思いついたような表情でこう口を開く。
「そういえば私たち魔族が人に姿を似せる変身術があるのですが、それを応用すればもしかしたら角も尻尾もどうにかなるかもしれません!」
「ほ、ホント!?」
ラプラの思わぬ一言に、イリスの表情が期待に明るくなる。ラプラも自信満々な表情で、「えぇ!」と頷いた。が、しかし。
「あぁ、しかし私はその術を詳しく知りません……あまり一般的な術でも無いので、魔族でも知る人は多くないと聞きます」
申し訳無さそうにそう呟くラプラを見て、イリスもがっかりしたように「そう……」と言う。ジュラードは「ウネは知らないのか?」と、ラプラに聞いた。
「えぇ、ウネも知りませんね。知っていたら私もウネもその変身術で人に化けていますよ」
「そうか……」
ラプラの話を聞いて、ローズはそういえば魔族だった自分の父親が人の姿に化けていたことを思い出す。そして彼女はぽつりと呟いた。
「ハルファスなら、もしかして知っているかも……」
「ハルファス?」
ユエが「誰だい?」とローズに問う。ローズは説明に困った末に、「ま、マヤと同じ妖精さんです……」と言った。
「よ、ようせい……そうか」
「はい……私の中にいて……その……妖精なんです、とにかく」
ローズの投げやりに間違った説明に、マヤは小声で「お姉さま怒るわよ」と彼女にツッコむ。ローズも小声で、「ハルファスには内緒にしといてくれ」と彼女に返した。
「とにかく、彼女なら知ってるかもしれない。私の父がそういう術を使っていたような記憶があるから、父と友人だった彼女ならもしかしたら……」
ローズのその言葉に、イリスは遠慮がちに「彼女に聞いてもらう事は出来ないかな?」と聞く。ローズは「呼べるかわからないけど、呼べたら勿論聞いてみる」と彼に返事をした。
「そろそろ私も魔力回復してきてると思うし、呼べる気がするんだけど……」
ローズはそう言うと、胸に手を当てて「ハルファス、出てきてくれ」と呼びかける。すると彼女の体から白い光が溢れ、マヤと同じサイズでハルファスが皆の前に姿を現した。
『ふあぁ……久しぶりによく寝たな。で、どうしたローズ。私に何か用か?』
ハルファスは目を擦りながらローズにそう問い、ローズは彼女に「あぁ、ちょっと聞きたいことが」と言う。
「あ、でもその前に……そろそろ私、魔法使ってもいいだろうか?」
『魔法? あぁ、そうだな……十分反省してるというなら、もうそろそろ使っても構わんだろう』
ハルファスがそう答えると、ローズは心底嬉しそうに目を輝かせて「本当か?!」と聞く。ハルファスが頷くと、ローズは「よかった」と安堵の息と共に呟いた。
『反省しているなら、だからな。そこを忘れるでないぞ、ローズ』
「え? あ、あぁ! 反省はすごくしたさ! わかった、もう絶対に無茶はしない!」
ローズがそう必死な様子で答えると、ハルファスは苦笑を漏らす。そして彼女は『私を呼んだ理由はそれだけか?』とローズに聞いた。




