増殖21体目「決闘」その2
「いや、そういうことならどうせだ。クラン同士で戦おうぜ、もちろんカフカは抜きでだ」
僕の提案に、そう言ってリーダー格らしき男は乗ってきた。若い男だ。せいぜいが僕より一つ二つ上かといったところだろう。装備品の傷つき具合から察するに、明らかに戦闘経験は乏しいだろう。隣に立つこれまたガラの悪そうな二人の青年と一人の女性も、どうにも素人臭さが抜けていない。いや、別に僕が玄人だとかそういう話ではなく、単純にこの世界に落ちてきてからたくさん強い人を見てきたからこそ分かることだ。体の重心の動かし方や、恫喝の凄み、何から何までチンピラだ。いくらかステータスが高くても、奇策に対応できる臨機応変さがあるとも思えない。
いや、まあ。慢心はダメ、ゼッタイなのだけれど。
「私は構わないわ。けれど、四対二になるのはどうするつもりかしら」
キノメが背にかけていた強弓を構えながらそう尋ねると、リーダー格らしき男はかぶりを振りながら言った。
「いやいやいや、お前らは本当かどうかはともかく【戦神】に認められたんだろ? ならこれくらいのハンデはあってもいいよなぁ?」
ええ……。自分の言っていることが破綻しているってことに気付いていないのだろうか彼は。周りの冒険者たちを見やると、みんなも困惑しているようだった。いやそりゃあ困惑もするよ。僕はやれやれと頬を掻きながら、話を進めた。
◆ ◆ ◆
結局のところ、以下のような条件の下で戦うことになった。
・決闘にはクラン全員が参加。それ以外の手助けは禁止。
・時間無制限。どちらかのクランの全員が戦闘続行不能になった段階で決着。降参は無し。
・基本どんな手を使ってもOK。殺すのは無し。
・勝った方はカフカを自分のクランに入れて、負けた方になんでも命令できる。
……なんというか、「もうお前らで好きに決めていいよ?」って言ったらこんなことになったんだが。もう、何なんですかねこのルールは。時間無制限で降参無しって完全にいたぶるつもりである。おおかた、いっつもこんなことしてて周りの冒険者に軽く見られてるから、ここらで残虐なところを見せつけて箔をつけたい――にしてももうちょっとやり方があるよなぁ……。どんな手を使ってもOKって何するつもりなんですかね。後勝った方がなんでも命令って……こんな条件付けた覚えはないんだが、まあいいか。
「ああ、うん。一応【宣誓】してもらおうか」
ラカムさんが困ったような顔でそう告げてきた。【宣誓】ってなんだろうか。
「【宣誓】ってのはつまり神様に誓いを立てるってことだ。この世界じゃあ神様にたてた誓いは絶対なんだ。破ろうとするとひどい目にあうんだぜ
そう隣にいた壮年の冒険者――ザックが教えてくれた。へえ、つまりは不正ができなくなるってことか。便利なもんだ。
「あの、本当にこんな条件でいいのかい?」
ラカムさんが心配そうに声をかけてくるが、個人的には全然問題ない。むしろ――
「あの、僕が何をしたって、止めないでくださいね?」
僕がなれない笑顔でそう告げると、ラカムさんは首を傾げた。
「じゃあ、僕、増田玲汰はこのルールにのっとり決闘することを【宣誓】するぜ」
「キノメは、このルールの下で戦うことを【宣誓】するわ」
「ランディ・ペイジは、このルールで戦うって【宣誓】するぜ」
「マルドゥク・レインスは、このルールの下の決闘を【宣誓】する」
「ロディ・エルビンは、このルールを守るって【宣誓】するっすよ」
「ケィシィ・ロディスは、このルールの中で戦うことを【宣誓】するわ」
こうして、六人全員の【宣誓】が終わると、まばゆい光に全身が包まれた。
「今のは?」
「ああ、今の光が【宣誓】完了の証だ。たてた誓いを破ると碌な目に合わないから気をつけろよ」
とザックはいった。それならまああいつらもルールは破れんだろ。僕は静かに棍棒を構えた。
「さあ、始めようか――」
次からいよいよ数の暴力開始ですね。
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