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勇者増殖  作者: T村
この先未改稿
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32/52

増殖15体目「絶対中立ジルナード」その1

 絶句。

 それ以外の言葉では言い表せない程の驚愕。僕は声も出ないまま魔王の間の入り口で立ち尽くしていた。

 やたらめったらに物の散乱した部屋の中央魔王らしき人物の後姿が見えるのだが、布団のようなものを被っているらしく。顔は良く見えないが問題はその視線の先、そこにはなぜかTVがあった。しかも大画面。

 さらによく目を凝らすと、テレビから何本かのケーブルが伸びていた。好奇心でそのケーブルの先を見て、軽く後悔した。


 メガド○イブ(最終携帯)。


 ふつうそこはスーフ○ミじゃないのか。何でS○GA何だよ、SE○Aにしてもまだハードはあるじゃないか。プレ○テに負けて消えていった例の白い悪魔とか。ド○キャスですね分かります。


「ってそうじゃないだろ……」


 僕がドリキ○ス派だろうがなんだろうが今はそういう事をしている場合ではないだろう。とにかく魔王(?)とやらと話さないと―――


「ゲーム」

「……え?」


 振り向きもせずにそう言われたので唖然としていると、魔王らしき人物はすっとコントローラをこちらに渡してきた。


「やろうよ」

「あ、ああ……」


 おずおずとコントローラを受け取る。というか今ちらっと腕見えたけど着てる服赤ジャージでしたね、庶民か。

 ま、まあ少し展開についていけない感じだが、メガ○ラなら父がSE○Aマニアでもちろん持っていたので多少の心得はある。2人でやるとなると『ぷよ○よ』とか『バー○ャファイター』とかだろうか。自慢ではないが友達いなくてよく姉とやってたからかなりの手練れである。あれ、本当に自慢じゃなかった。

 そんなことを考えていると、魔王は一つのカセットを取り出した。


『マ○ドナルドトレジャーランドアドベンチャー』


「何でこいつが出てくんだよ⁉」


 メガ○ラはまだしも、何で異世界にこんな恐ろしい物があるの。これマ○クさんも多分思い出したくないレベルのやつだよ⁉

 ていうかこれ一人プレイ用ですよね⁉ 僕遊べないじゃないですかヤダー。いや、このゲームに関しては僕も心底どうでもいいけどさ。……既プレイとは言えない。

 と、僕がボッチ特有の脳内リアクションをぶちまけていると、魔王は自分の隣をぽんぽんと叩いた。どうやら座れとのことらしい。あとさっき叫んでたじゃんとかそういうのは良いから。思わず口を付いて出てきてしまっただけだから。


「もっと近くに来てくれるかな、そこじゃあよく見えないと思うよ」


 僕はやれやれとため息をつくと、魔王に体を近づけて座りなおした。




 まあ正直な話、楽しくないのかよと聞かれれば、まあそれなりに楽しんだんだろう。

 なぜかアクションゲームの『マ○ドナルドトレジャーランドアドベンチャー』は、メ○ドラ世代のソフト最大の特徴である無意味に高い難易度を持つカセットゲームなのだが、魔王のプレイングは、それこそ神がかり的なプレイで、ギリギリのピンチと圧倒的で爽快な勝利を織り交ぜ、見ているものをゲームの中に引き込むような見事なものだった。

 まさかこの問題作で感動してしまう日が来るとは、思ってもいなかった。

 スタッフロールを眺めながらううむと僕がうなっていると、魔王は突然こちらに向き直って、笑顔で言った。


「やっぱり誰かと一緒だと楽しいな」


 その瞬間、僕は心臓が止まるかと思った。


 TVの光を受けて輝く金色の髪は、髪型に頓着が無いのか、お世辞にもきれいにまとまっているとは言えないが、そんな些末なことは気にもならない程の透き通るような輝きを放ち、そのクリアブルーの双眸は目の下に眠たそうな隈を拵えても衰えることのない魅力があった。

 均衡のとれたやや高めの鼻と、グリスでも塗っているのかと思ってしまうほどの艶の唇がこちらの顔に後数センチと言う至近距離にあって、僕はもうてんやわんやだった。

 更に、ジャージと言う身体のラインが出にくい服の上、猫背気味で胸を張っているわけでもないのに、それでも圧倒的存在感を放つ胸のふくらみ。それがぐいと僕の腕に押しつけられているのだ。僕は、未知なるカダスへと旅立とうとする意識を現世に食い止めるので精いっぱいだった。マイエンジェルイズオンリーカフカという事は最早揺るぎのない事実だが、それすら覆しかねない美しさがそこにあった。

 そして、何よりその笑顔がまぶしかった。

 ふふ、と魔王は静かに微笑むと、改めて僕に向き直った。


「それで、キミに話したいことがあるんだが」

GW中はお休みします。

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