増殖14体目「魔王邂逅」その1
カツーン、カツーンと、真っ黒な回廊に4つの足音が響いた。
「で、勿論状況を説明していただけるのよね?」
「いやそれはむしろこっちが聞きたいくらいだよ……」
知るわけないじゃんもう。僕は頭を掻いてため息をついた。何故だか全身の節々が痛むし、何なのもう。
僕が肩をさすっていると、ルサールカは嬉しそうに口を開いた。
「いえ、玲汰さんが仲間を探すのに手間取っていたようなので私の転移魔法で集めさせていただいたんですよ」
一拍おいて、
「魔王城に」
「うんだからそこがよく分かんないんだよね?」
こいつの思考回路どうなってんの。何をどうやったらこういう展開になるのどういうことなの何が起きたの。
全く、これだからボッチの考えることは分からんな。おっと、その考え方だと僕の考えてることも分かんないってことになっちゃうな。ははは、むなしい。
いやまてよ、考えてることが分かんないのはきっとコミュ力の低いボッチの事に違いない。よって毎日ぬいぐるみさんや鏡君とお話ししてた僕はコミュ力が高いので大丈夫なのだ。……おや、目から体液が。
「何をやっているの気持ち悪いわね」
「何でそういう辛辣なこと言うの」
泣いちゃうぞこの野郎。もうすでに泣いてるだろとかそういうのは無しだから。これはただの涙腺からの分泌液が溢れ出ちゃってるだけだから。熱いパトスだから。
「……その、大丈夫か? 俺の肩貸そうか?」
「かっひゅ」
キノメと正反対の優しい言葉をマイエンジェルカフカがかけてくれたので僕は迷わず喀血した。喀血は最高の清涼剤です。だって消え去りそうな理性を連れ戻してくれるからね。喀血万歳。喉と心に悪いけど。あと心と心に悪い。それと心にも悪いよね。僕のメンタルは瀕死です。
「あら、鏡でも見たの?」
「それは僕の顔が思わず血を吐きそうだとでも言いたいのか」
「そうは言ってないわ」
ふっと微笑んで、
「ほら、あなたの死滅した魚のうろこに映る藻のような目にはゴーゴン的効果が」
「目があったから喀血とか微妙すぎだろ効果。てか、死滅した魚のうろこに映る藻って何」
そう言い返すが、僕の目が良い感じに死んでしまっているのは仕方無き事。純然たる事実なのだ。
顔や姿が変わろうと、僕のこのえらく死んでしまった目だけはどうしようも無かったらしい。結果として僕の目はゾンビ顔負けの死に具合を見せている。どれくらい死んでいるかと言うと、子供が泣いて逃げ、このイケメンフェイスを相殺してしまうくらいには死んでいる。あと勇者に魔王軍扱いされたりするし。なんなのもう。僕が何をしたってのさ。あ、勇者ボコりましたね。
「えっと、もういいですか?」
「それはあなたの心に聞いてみなさい」
「え?」
おっと、ルサールカがキノメにからまれてるみたいだ。キノメは常冷静にトンデモ発言をするので、コミュ力の低いボッチは注意が必要なのだ。ちなみにこの場合の回答例は『ごめん……僕って心がもやしすぎて聞いても答えてくれないんだ……』だ。こう答えるとミジンコを見るような目で見られるけどちゃんと答えてくれる。そしてそっと僕のメンタルHPが削られるというわけだ。もうなんなの。
「良いってことだよ」
でもキノメ初心者にそれは無理なので助け舟を出してやった。うわ、僕ってば超紳士。
「ええ、あなたは紳士(意味深)ね」
「何で考えてること分かるの」
この子怖い。貞子2に出てきた女の子張りに怖い。
「ふふ、なんだかこういうの楽しいですね」
僕がキノメの読心術に翻弄されていると、ルサールカはそう言って笑った。おい魔王軍幹部、忘れてるかもだけどこっちは勇者ですよ。肩入れしないの!




