増殖12体目「そして増田玲汰は主張する」その2
「あ、が……」
痛みのあまりうずくまる。マズイ、早く体勢を整えて逃げなければ、また。
「【カァァァイザァァァ………ッ】!」
「があああああ…………!」
こいつ! 何とか急所は外したが左脚を……!
「ふん、次は外さん! 【カイザー】!」
「ぜ、【絶対回避】!」
至近距離で放たれた【カイザー】を絶対回避でかわし、その予備動作で大きく後方に退避する。一時の危機は脱したが、こんな傷では立つことすらできない、僕は痛みをこらえながら回復を―――
「な、に?」
回復、できない。
「馬鹿め、存在を認めんと言ったただろう!」
「……⁉ そういう事かよ………!」
悪の存在を認めないというのは、つまり、『そこにあったことさえ無かったことになるという事』だっていうのか。チートにも程があるだろうが、くそ。
「俺を倒せれば元に戻せる、できるわけないながな!」
「こりゃあご親切に……」
どんだけ余裕なんだよ。まあ、あんなチートスキルを持っていれば余裕も出てくるんだろう。どうでもいいが。何せ状況は全く好転していない、むしろ悪化している。まるで僕のじんせ(ry
とふざけてみるが、片足で何とか立ち上がることはできても、歩くのはかなり困難だろう。血は出ていないようだが、それでもこの痛みと違和感は精神的にきついものがある。
なんかこの一撃で自信を取り戻したのか、また勇者パーティがまとまりを見せつつある。くそが、さっきまでのあのムードはどうしたよ。ぽんぽん手のひら返しやがって。だから僕はこういう人種は嫌いなんだ。人類みんなカフカみたいだったらきっと人生はバラ色で国際紛争も起きないだろうに。
しかし、いくら目を背けてみても現実は変わらない。非情である。
僕がどれだけイマジネーションを膨らませようと、所詮それは子供の妄想に過ぎない。
ペンでは剣に勝てないように。
クズでは人に勝てないのだろうか。
「玲汰さん……!」
後ろから、ルサールカが僕を呼ぶ声がした。
なんとか首を回して後ろを振り向くと、震えていた。けれど、
逃げ出してはいなかった。
勝てないだなんて、そんな事があるわけない。あっていいわけがない。
ペンが剣に勝ったという話は、なんてことは無い。戦う舞台が違ったからだ。
正面からは敵わない、だから相手とは全く違う舞台、違う視点でつぶさなくちゃいけない。
違う舞台、か……。そう言えばここはまだ『アイツ』のテリトリーだったな。都合よくドンパチやったから、そろそろこちらに向かってきている頃だろう。『アイツ』は音や光に敏感だから。
『アイツ』なら確実に横野を倒せるだろう。しかし世間ではそれをオーバーキルと言うんだ。
「やりたくないな………これだけは」
できることなら、一人の元ボッチとしてケリをつけたかった。でも、さすがにこれ以上はうだうだ言っていられない。僕の後ろにはルサールカがいる。彼女まで危険にさらすわけにはいかない。
僕は静かに口を開いた。
「MPが尽きかけてる、今だ」
突如として背後から現れた11人の僕が、【絶対拘束】を使い横野とその仲間を全員捕縛した。




