増殖8体目「鬼退治」その1
そして、一週間が経った。
いや、うん。まさかね、まさかここまで洞窟の居心地が良いとは思ってなくてね? 本当ね? まさか僕たちもこんな竪穴式以下の建築物ですら無い代物にここまでの可能性が秘められているとは思っていなくてね? まあ結果としては5日もの遅れを取ってしまったわけだけど後悔はないよ?
この洞窟にはそう言い切れるだけの何かがあったと思うんだ?
なんで全部疑問形なのかは察してほしいです。
「さて、いよいよ乗り込むのね」
「ナチュラルに切り替えの出来るお前が羨ましいよ………」
というかこの子、無かったことにしようとしている節すらあるよね。まあ、それぐらいサバサバしてた方が生きやすいんだろうけど。
「それじゃあ作戦についてだけど、今朝言った通り、この一週間で7体までできるようになった僕の【増殖】で、人数を増やして、八人で集落を包囲、それからこの丘で待機させるお前が―――」
「皆殺しね」
「援護射撃な」
私怨、ダメ、ゼッタイ。
「援護射撃して、僕が下調べしておいた出入口をつぶしつつ鬼を集落の中心に集めるから―――」
「皆殺しね」
「拘束な」
いい加減学習してくれないかなこの人。
「それで拘束した鬼に、このあたりの生態系を崩さないよう忠告して、抵抗するようなら―――」
「村の自警団に突き出すのね」
「皆殺しな」
「俄然、抵抗してほしくなったわ」
「ほどほどにしとけよ」
抵抗する者には死、あるのみさ。私怨はダメだけど僕はそこを躊躇するほどのジェントルマンじゃないんだ。僕たちはそんなくだらない会話をしながら決戦の地へと赴いた。
◆ ◆ ◆
『こちら3号、配置についたぞ、他のやつもな』
「ああ、わかった」
どうやら総員配置に着いたようだ。全員が二人づつペアを組んでいるし、まずやられはしないだろう。
準備は整った。数の暴力で他者の幸せを踏みにじった鬼に、教えてやらねばならない。
確かに数の暴力は恐ろしいが、怒りと憎しみの上での数の暴力はもっと恐ろしいのだということを。
「じゃあ、鬼退治を始めようか」




