増殖7体目「はじめてのなかま」その2
「それで、どうやって攻略したもんかね……」
「とりあえず皆殺しにしながら行きましょう」
「私怨出てんぞおい」
「気のせいね」
「便利だよなその言葉」
翌朝、昨日寝るときに使ったなんか良い感じの洞くつで、僕たちは鬼退治の作戦を錬っていた。のだが、
「まず相手の力量をかんがみてだな、」
「皆殺しね」
「怖いよ」
「気のせいね」
「今度から僕もそれ使っていい?」
こんな感じで話にならないのだ。これは流石にいけないだろう。
でもまあ、これ以上の話はできそうにないので先に別のことを済ませておこう。
「【増殖】」
にゅにゅにゅーっと僕が八人に増えた。あ、増える数増えてる。スキルレベルが上がったからかな。うぇーいと僕たちはハイタッチをした。ハイタッチをするボロボロの学生服姿の目が死んだ全く同じ外見の男が八人。シュールってレベルじゃないなこれは。正直事情知らなかったら卒倒するレベルだ。
「あの、ずっと思ってたんだけど、何? そのスキル」
「嫌なんか変なキノコ喰ったらこんなことに」
「えぇ……」
いや、そんな目で見られても困る。変なキノコのせいでこうなったのは本当なんだからどうしようもない。僕たちは『仕方ないよなぁ』と頷きあった。……はたから見たら絶対怖いなこの光景。ほどほどにしよう。僕は頭が少しばかり痛くなるが、【交信】を使って八人全員の意識を一つにした。
僕が座る、と全く同じ動きで残り七人も座る。僕が頬を掻く、と全く同じ動きで残り七人も頬を掻く。
『とまあこういうわけなんだが』
「一旦一人になってもらえるかしら」
僕の動きがうっとうしかったらしい。……僕もまあ気持ちはわかるが。【交信】のレベルが上がれば、同時に複数の体を並行操作できる【並行思考】が習得できるのだが、それまでは【交信】を使うとみんな同じ動きになってしまうのだ。
「【融合】っとこれでいいか?」
「……うわあ」
気持ちは分かる。わかるけど次その顔したら殴ろう。僕はそう固く胸に誓った。
「ともかく、あなたのその力は強力ね。私を捕まえたくらいだし」
自意識過剰じゃねえか―――と言おうとしたが、実際問題キノメは強いのでどうしようもない。事実僕が【増殖】を使えると知られていたら確実に僕は死んでいただろう。
「ステータスを見せてもらえるかしら」
そう頼まれたので僕のステータスウィンドウを『閲覧許可』にしてキノメに、向ける。
「……私、こんな雑魚に負けたのね……」
いくらなんでもうなだれることは無いじゃないか。さすがに傷つく。いや、わかるけど。オーガじゃなくて鬼とか言ってる段階で僕の敵う相手じゃないなんてことはわかっていた。
がしかし、そうすると……。
「お前もかなり強いみたいだが、それでもあいつらに勝てないってのは何なんだ?」
僕がそう尋ねると、キノメは腕組みをして、しばし思案するようなそぶりを見せてからこちらに向き直った。
「あいつら――オークは確かにオーガ種じゃあ弱い方よ、【鬼】の私に比べたらね。多分あなたが【増殖】を使わなくても相打ちには持ち込めるでしょうね」
つまり一人で戦ったら死ぬと。うん、絶対ツーマンセルで戦おう。
「でもあいつら、数が多いのよ。攫ってきた女たちに子供を産ませて増やしてるみたいだし、私はいくら強くても弓使いだから数で押し切られるとどうしようもないのよ」
なるほど。話が見えてきた。つまり僕はこの数の力を駆使して、オーク達を巣から誘導、ないしは近づいてきたやつの足止めをすればいいと。クソザコナメクジの僕でも二人がかりなら倒せる程度の相手、近づかれさえしなければキノメの独壇場というわけか。
「分かったぜ。で、いつ出発する?」
「オークたちは夕暮れごろから行動を開始するのよ。だから、攻めるなら早朝、日の出とともに、ね」
「つまりもう一日休むと?」
「…………あ」
せっかく一日休んだのに、もう今日は日が昇りきっていた。




