増殖7体目「はじめてのなかま」その1
「うーん、やっぱりこういうのは良いよな」
僕はしみじみとそう呟きながら、ステータスウィンドウのパーティ欄を眺めていた。
『Masuda Reita Orijin』
『Kinome』
「それ何度目よ、恥ずかしい」
夕闇の中、隣を歩くキノメが冷ややかな目を向けてくるが気にはならない。何せ初めての仲間だ、嬉しくないわけがない。
と、キノメはふと足を止めてこちらに向き直った。
「そういえば、なんで【隷属】を選ばなかったの? たいていの男はみんな勝ったらそうするのに」
「この世界の男は脳と下半身が直結してるんですかねぇ……」
前から思ってたけど、この世界の住民の精神レベルやばくないか? ビルド村の段階で薄々勘づいてはいたけど、この世界の人と触れ合えば触れ合うほどそれを実感する。
「どうしてなの?」
「どうしてって……深い意味は無いけど」
「無いのね」
「単純に味方が欲しかったからなー」
棍棒を手でいじくりまわしながらそう呟く。前の世界でプロのボッチをやっていたからか、こういう仲間とかいうのへのあこがれはあったんだと思う。プロのボッチの割には対人の会話が普通にできている気はしないでもないが、気にしたら負けだろう。
「へぇ、そう。でそろそろ夜なんだけど、どうするの? 野宿?」
「あー、あの村に夜戻って寝るのとこの丘で野宿なら、大差で後者かな。村には朝戻ってから報告するさ」
「へ、へぇ……でもまだ終わってないんじゃないかしら」
「………え?」
……何をおっしゃっているのやら。ははは。
「いやほらキノメ倒したじゃん? だから鬼退治は終りょ」
「生態系狂わせてた鬼は私じゃないわよ」
「何でそういうこと言うの」
せっかくこのあたりからおさらばして都会に行けると思ったのに。何? まだまだ戦いは始まったばかりってか? このまま最終回に持ち込むつもりなのか?
「この件に関しては私からもお願いするわ」
と、僕が理不尽な世界にメタい文句を言っていると、キノメがその端正な顔をこちらに近づけてきた。少し、悲しそうに顔をゆがめる。
「私の両親と妹は、あいつらに殺されたの」
「…………………そう、か」
いきなりで少し驚いたがまあ、この可能性が無いわけではなかった。ここらでのんびり暮らしていたということは、当然キノメの家族だっていたはずで―――
「……お願い、悔しいけど私だけじゃあいつらは殺せないの」
「……………」
「……なんだってするから、どこまでだって付いていくから」
「……………」
「お願い、あいつらを………」
ぽん、と手をキノメの頭の上においた。
「……そんなことしてもお前の家族は喜ばないと思うぞ」
「……そんなこと…っ⁉」
「まあ、村長のばあさんからの依頼だしな」
「え?」
自分よりやや低いキノメの頭を撫でる。
「いいか、これは復讐じゃない、報復じゃない。PTのリーダーが受けた依頼を、PTの仲間で片づけるだけだ。なにがどうあっても私怨の類じゃない」
「アナタ、一体……」
「アナタじゃねぇよ増田玲汰だ。ったく、絶対追加報酬せしめてやる……」
ここまでやってやるんだ、金銀財宝が与えられてもいいんじゃないですかね村長さん。
………まさかこの棍棒が報酬だったりしないよな?
と、僕の服の裾がぐいとひかれた。
「レイタ……ありがとう」
「気にするなよ、仲間だろ?」
ニッと笑い、そのコンマ2秒後に後悔する。黒歴史を作る苦しみがこれか、青崎さんは大丈夫なんだろうか。
「と、とりあえず今日は寝て明日どうするか詳しいことを決めようか」




