増殖6体目「青鬼キノメ」その1
「本当さあ、数って奴は怖いんだよ。僕も元の世界でえらい目にあってね」
「どこの世界も大変なのね」
僕はとりあえず【融合】で増殖した僕を回収して、とりあえずレベルアップして手に入れたスキル【束縛】で縛り上げた『蒼の射手』と、丘の上でとりあえず駄弁っていた。『とりあえず』多いな、僕の人生みたい。泣きそう。
「私も、何年か前まではここらでのんびり暮らしてたんだけど、このあたりに別のオーガ種の集落が出来てからは、こっちの数が少ないからって好き放題暴れられて、今じゃあその日暮らしの身の上よ」
「大変だね……」
「お互いね……」
はあ、と二人同時にため息をつく。結局はどこの世界も数の暴力に振り回されているということだ。えらく親近感が湧いてきた。
「というかさ、何であのばあさんは助けてやったのに情報提供を渋るんだよ、意味不明だよ……」
「ああ、そういえばアナタはそういう理由で戦いに来たんだったわね」
その言葉に僕は力なく頷いた。あのばあさん、本当に嘗めてる。しかももらった棍棒使う機会無かったし。おかげで強くなったと言えば強くなったんだが……。
『Masda Reita Orijin』
Lv:13
HP:200/200
MP:42/45
SP:2
攻撃:65
防御:54
魔攻:34
魔防:43
俊敏:54
幸運:26
獲得総経験値:1256
次のレベルまで:244
所持スキル
【増殖/12】【融合/5】【交信/6】【索敵/7】【束縛/2】【回避/24】【リキャストスキル・絶対回避/4】【初級治癒/18】【リキャストスキル・中級治癒/2】【拳スキル・連掌/1】【拳スキル・筧飛車/1】【組手スキル・肩車/1】
レベルの割にはスキルが充実してきた気がする。いや、この世界のレベル13の平均的なスキル数なんか知らんが。
そう思いながらステータスウィンドウを眺めていると、見たことない項目が出来ていた。
【勝者の選択】
「なあ、『蒼の射手』」
「何故その名前を知っているのかしら」
「いや自分で言ってただろ。ほら、『蒼の射手も嘗められたものね(`・ω・´)』って」
「待ってその最後のは知らない」
「え? 『蒼の射手も嘗められたものね(;゜Д゜)』だったっけ?」
「それどうやって発音してるの」
「知らんよ」
むしろこっちが聞きたいわ。
「それよりだ『蒼の射手』」
「それやめないと口聞かないわよ」
余程恥ずかしい名前だったらしい。恥ずかしいのなら名乗らなきゃいいのに。しかしまぁあれだ、僕は真摯な紳士だからね、そこらへんに気を使うのなんて慣れてるんだ。
「そうか、じゃあ『終末の蒼き支配者』」
「悪化してるわよそれ」
『終末の蒼き支配者』が信じられないとでも言うような顔でこちらを見てきた。
「そんな、中学の頃のクラスメイトをそう呼んだ時には受けたのに」
「『くらすめいと』が何かは知らないけど、その子絶対今後悔してるわよ」
あ、やっぱり黒歴史なんだねあれ。もしかしたら今でも使ってるかなって期待してたのに。中二の時のクラスメイトの青崎さん。
「でも名前が分からないと呼べないよ(`・ω・´)さん」
「だからってそれで呼ぶ?」
「僕は常識にとらわれない生き方をしたいんだ」
特に自分の知らない集団で勝手に決められたルールには従いたくない。今回のビルド村の件でその思いは一層強くなった。クーリングオフ禁止とか、頭おかしいって。
「……キノメよ」
「何が?」
「名前よ、アナタが聞きたいって言ったんじゃない」
「言ってないよ」
「こいつ……っ」
キノメが何かもう凄い顔をしてくるのでからかうのをやめる事にする。
そろそろ本題に入らないと。
「それでキノメ、【勝者の選択】って何?」
「………………え?」




