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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第六章 決断
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帰還

 一つの厄介な問題を抱えたまま、わたしたちを乗せた馬車は央都の中央、皇宮に到着した。皇宮を初めて見た雲風や黎蘿、樹徒に鈴桜、鞠藍さんはその大きさと煌びやかさに目を丸くしている。華栄の皇宮も立派だったが、こちらも形状や仕様等が違うため新鮮に見えるのだろう。馬車から外を覗いていたわたしに、樹衣が馬車の外から手を差し出した。

「お手を、姫君」

「何を仰っているのです。わたしを姫などと」

わたしは呆れた声を出しながら樹衣の手を取り、馬車を降りた。東宮に手を引かれて馬車から降りてきたわたしを見て、衛兵たちが驚いた顔をする。衛兵という身分では皇族に声をかけることは許されないため、気になるが訊けないという感じだ。そんな彼らを見て、樹衣はわたしに微笑みながら言った。

「この方はわたしの妻となる女性だ。敬意を払って接するように。この子たちにもな」

樹衣はわたしの手を放して樹徒と鈴桜の頭に両手を乗せる。それを見た衛兵たちは更に驚いたような顔をした。東宮に実子がいるなど知らないのだから、当然だ。でも、わたしのことを堂々と妻と呼ぶなんて、大丈夫なのか。まだ皇帝の許可をもらってもいないのに。

「樹衣。言いふらすようにするのはやめて下さい。わたしはまだ正式な妻ではないんです」

わたしが呆れた顔を向けると、樹衣は自分の頭をかいた。そんなわたしたちを見て、衛兵の一人が恐る恐るといった風に尋ねてきた。

「あの、東宮様が連れて来たからには、大丈夫だとは思うのですが、その方の身元はしっかりしているのでしょうか。国庫を横領する気かもしれません」

衛兵の考えも尤もだと思う。わたしは本人だから騙していないと断言できるけど、傍から見たら東宮という立場に目が眩んで子供がいると偽装しているだけの人にも見えるだろう。ここはわたしがどうにかするべきだ。そう思ったわたしは一歩前に進み出る。

「わたしが騙しているとお思いになるのも無理はありません。そこで、わたしを試してみませんか?」

わたしが手を口元に添えてニコリと笑えば、衛兵たちは一瞬惚けてから怪訝な顔をした。

「どういうことだ?どうやって試すと言う?」

「明家の娘、明美美(ミンミイミイ)は、数年前に旅の道中で妹と従者と共に失踪しました。その旅の際就いていた任務は東宮殿下の護衛です。ということで、わたしと武力のお手合せをお願いしたいのですわ」

衛兵の一人の言葉にわたしが答えると、衛兵たちは顔を見合せた。

「分かりました。俺が相手をします」

衛兵の言葉遣いが敬語になった。ただの女ではなく、高官の娘だと知ったからだろう。

「美美、大丈夫か?」

樹衣の心配そうな声に、わたしは余裕の笑みを見せる。

「はい。わたしが負けることはありません。さ、どこで試合を致しますか?」

わたしの問いに、衛兵は「着いてきて下さい」と言って近くにあった空き地に歩き出す。その後ろを着いていくわたしの姿を、共に央都に帰ってきた面々が不安げな顔で見送った。

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