表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第六章 決断
76/76

演武

 わたしは衛兵と向かい合う。衛兵はわたしに先手を許した。だがわたしは拒否する。

「いいえ。わたしが明家の娘であると認識するためにはより強い勝ち方をする必要があると思うので」

衛兵は納得いかなげな顔をしながらも、頷いてくれた。さっき衛兵に言った理由もそうだし、単にわたしが憂さ晴らしのために本気でやり合いたいって思ってるのも理由。舐めてかかられたら本気で致命傷を与えて人を殺してしまいそうと思っているのも理由。わたしがうんうん頷いていると、衛兵が剣を構えた。それを見たわたしは自分が素手だということに気付いた。参ったな。素手だと手が痛い。わたしはすかさず樹衣の方を向いた。

「樹衣、すみません。わたしの荷物の中から剣を出していただけますか?」

ボーッとしていた樹衣は、ハッと我に帰った。

「ああ。分かった」

樹衣が馬車の中にあったわたしの最低限の荷物の中から剣を出すのを待っていると、鈴桜が声をかけてきた。

「母様。どうしてこんな方法をお取りに?母様の父上に証明してもらうなり、すれば良かったのでは?理由はなんとなく想像が出来てしまいますが」

鈴桜の湿度を多分に含んだ視線に、わたしは目を逸らした。確かに安喜(アンキ)に証明してもらう方法もあった。でも、正直な話、わたしは久し振りに対人で剣を振るいたいのだ。流石、鈴桜は聡明だ。わたしのことを分かっている。そんなことを考えていると、樹衣がわたしの剣を持ってこちらに歩いてきた。

「これだな?」

「はい。間違いありません。久し振りの試合、腕が鳴るわ」

わたしは一度剣を振って感触を確かめると、衛兵の方に向き直った。衛兵とわたしは鞘から抜いていない剣を同時に構える。審判の所には、雲風が立った。雲風が右手を上に高く挙げると、衛兵がすごい勢いで向かってくる。やっぱり、皇宮の門を守る人は訳が違う。わたしは急いで衛兵の攻撃を避けると、近くに生えていた木の幹に飛び、それをバネにして衛兵に斬りかかった。衛兵は辛うじて避け、体は無事だったが、わたしの攻撃を受けた衛兵の剣がわたしの手に飛んできた。わたしはそれを左手で掴み、両手に剣を持っている状態になった。唇の端をニッと上げたわたしは、まず衛兵の剣で持ち主に斬りかかり、衛兵が体勢を崩したところで自分の剣で斬りかかるという動きを繰り返した。衛兵はずっと耐えていたが、何回目かの攻撃に、ついに地面に倒れた。わたしは衛兵の首に剣の切っ先を当てる。

「これで分かりましたか?わたしはその辺の詐欺師ではなくてよ」

衛兵は納得したような顔で頷いた。

「ああ。分かりました。あなたはまさしく、明家のご令嬢だ」

衛兵の答えにわたしが得意げな顔をしていると、周りで見ていた他の衛兵が呟いた。

「まるで演武を見ていたようだ」

と。それを聞いた美美は、紅に染まった唇を三日月型に歪めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ