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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第六章 決断
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父と子

 樹衣さまの部屋に着いたわたしは、扉を軽く叩いた。

「美美です。昨夜の中庭でお待ちしております」

わたしはそう言って今度は中庭に向かった。中庭に着いた途端、子供たちが駆け出した。ここには植物がたくさんある。二人の最近の趣味である植物調べができると思ったのだろう。わたしが長椅子に座りながら子供たちの様子を見ていると、背後でガタッという音がした。わたしがそちらを向くと、呆然とする樹衣さまの姿があった。その視線の先には樹衣さまにそっくりな樹徒とわたしにそっくりな鈴桜がいる。わたしは長椅子から立ち上がってそっと樹衣さまに声をかけた。

「驚かれましたか?」

「驚くに決まっている。あの二人は俺たちの子か?」

樹衣さまの言葉に、わたしは頷いて子供たちを呼び寄せた。

「樹徒、鈴桜。おいで。父様よ」

わたしがそう言うと、子供たちはわたしの隣に立つ樹衣さまを一瞬見て、それからパッと顔を輝かせた。

「「父様!」」

二人はそう叫ぶなりばっと樹衣さまに飛び付いた。でも流石は樹衣さまだ。七歳児二人の本気の体当たりを倒れずに受け止めた。

「樹衣さま、男の子の方が樹徒で、女の子の方が鈴桜です」

わたしが言うと、さっと体勢を立て直した樹衣さまは両腕に抱いた双子を見る。

「双子か。樹徒と鈴桜。いい名前じゃないか」

「樹徒です!」

「鈴桜です!」

二人のやたらキラキラした笑顔は自分譲りだというのに、樹衣さまは目を押さえる。そしてわたしに声をかけた。

「少し、二人だけで話をしても良いか。色々と聞きたいことがある」

樹衣さまの言葉に、わたしは頷いた。


○○○


 「なぜ、俺に子供たちの存在を教えなかった?」

「皇位争いに巻き込んで危険な目に合わせたくないからです。だから、あなたに別れを切り出しました」

子供たちが遊ぶ様子を見ながら、わたしたちは話した。隣から香る白百合の匂いが優しく鼻を掠める。

「皇位争いには絶対に巻き込まないと約束する。だから、俺の元に帰ってきてくれないか」

その言葉に、わたしは首を振った。

「どこに皇位争いに巻き込まれないという確証があるのです?都合の良いことを言っているのは分かっていますが、度々こうして子供たちと会って下さるだけで良いんです。わたしたちをそちらに迎えようとはなさらなくて良いんです」

わたしが彼の顔を見てそっと微笑むと、樹衣さまの頬を一筋の雫が通った。わたしはそれを手で拭う。

「お泣きにならないで?あなたにはもっと素晴らしい人生が待っているんです。わたしだって本当はこんなこと言いたくないんです。ただ、あの子たちの将来に最適なことを選びたいんです」

わたしが彼の頬をつねると、樹衣さまは拗ねたような顔になる。

「俺の気持ちは考えたか?俺はお前と子供たちと一緒に過ごしたい。絶対に守ると約束する」

今初めて、わたしの中に迷いが浮かんだ。李里の言葉と彼女の炎のような瞳がが胸に蘇る。

『子供たちの気持ちが一番だけど、菁凜の気持ちを殺しちゃ駄目だよ。ちゃんと自分の気持ちも伝えて』

そして、今目の前にある優しさと情熱を秘めた赤い瞳。もう、自分の気持ちを抑えることなんて、できない。わたしはようやく、大きな答えを出した。

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