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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第六章 決断
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独りよがり

 樹衣さまに別れを切り出したわたしは、痛む体を何とか動かして服を着た。そして、樹衣さまの部屋を出て、壁を伝いながら自分の部屋へと戻った。部屋では李里が樹徒と鈴桜を寝かし付けてくれたらしく、本人も一緒に寝台の上で眠っている。わたしがげっそりしながら少し狭い寝台に倒れ込むと、李里が呻き声を漏らして、目を覚ました。

「あ、菁凜。おはよう。子供たちは寝かし付けておいたよ。恨み言言うつもりはないんだけど、何があったの?ずいぶんげっそりして疲れてるって感じ」

「まずお礼から言わせて。子供たちの寝かし付けありがとう。本当に助かった。わたしの身勝手で李里の時間を削っちゃってごめんなさい」

わたしが手を合わせて謝ると、李里は首を振った。

「良いって、良いって。楽しかったから。それで?何があったの?」

有無を言わせぬ李里の圧に、わたしは答えるしかなかった。

「閨で七年分、全部詰め込まれた」

げっそりとした声で言うと、李里は目を見開いた。

「緑の宮って、とんでもないことするのね。そんなに詰め込んだら、壊れちゃうよ」

「そうよねぇ。現に今壊れてるんだよ。そういえば李里って閨したことあるの?」

わたしがそう訊くと、李里は顔を真っ赤にした。

「さ、最近なら、ある。蓮抖(レント)さんに誘われて」

蓮抖さんと言えば無口で無愛想な人だ。あの人が李里を誘ったの?

「あの人って、そういうこと積極的にするんだ」

わたしがふうんとなっていると、李里が布団に顔を埋めた。

「も、もうこの話は終わり!それでさ、何で菁凜は一人で帰ってきたの?緑の宮が送ってきそうな感じだったでしょう?」

「もう終わりにしたの。ほら、昨日言ったでしょ?子供たちのために、樹衣さまの所に戻りたくないの」

わたしは樹徒の樹衣さまそっくりな藍色の髪をそっと撫でる。すると、李里の鋭い視線と目が合った。

「ねえ、それって独りよがりなんじゃない?子供たちのためって言ってるけど、子供たちの気持ちは聞いた?単に自分が怖いだけなんじゃないの?それに、緑の宮と子供たちを会わせたらどうにかしてくれるかもしれない。その可能性に賭けるっていう意思はないの?」

李里の言葉は正しい。そして、樹衣さまは『俺がどうにかできるのならどうにかしてやる』と言ってくれた。わたしはようやく決意した。

「ありがとう、李里。わたし、樹衣さまとこの子たちを会わせて、事情を伝える。あの人は必ず力になってくれる」

わたしが笑うと、李里も笑い返してくれた後に真剣な顔つきになった。

「子供たちの気持ちが一番だけど、菁凜の気持ちを殺しちゃ駄目だよ。ちゃんと自分の気持ちも伝えて」

「うん。分かってる。本当にありがとう」

わたしはそう言って樹徒と鈴桜を起こした。

「樹徒、鈴桜、起きて。三人で行かなきゃいけない大事な用事ができたの。すぐに行くから急いで支度して」

わたしが声をかけると、二人は慌てて起き上がり、わたしが昨日のうちに用意しておいた今日の分の着替えを取って着替え始めた。二人が着替え終わったのを見届けたわたしは、物凄く痛む体を無理矢理起こし、寝台を降りた。

「行こう。樹徒、鈴桜」

わたしはそう言って、今度は子供たちを連れながらまた壁を伝いながら樹衣さまの部屋へと向かった。

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