七年
寝台に寝かされたわたしは、腕を頭上でまとめられ、服を脱がされていく。その手もいつもは丁寧なのに、今は雑だ。服を脱がされた後にまず待っていたのは、深い口付けだった。わたしにとっては二度目の口付け。それを何度か繰り返し、本番に入った。そこで、わたしは意識を手放した。
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小鳥のさえずりでわたしは目を覚ました。やっぱり裸で、同じく裸の樹衣さまの腕の中にいた。今回は運良く誰も部屋に来なかったが、違ったらどうなっていただろう。わたしはそう思いながら起き上がろうとしたけど、頭は鈍痛がするし体の節々は経験したことがないくらい痛いし、体の奥に痛みがあって、ドサッと寝台に倒れ込んでしまった。樹衣さまは七年分と言っていた。馬鹿正直にその言葉を全うしたらしい。三年分くらい減らして欲しかった。せめて数日に分けるとか。あ、でも、東宮だからすぐに帰らないといけないのか。……待って。もしかしてその時、わたしって連れていかれるんじゃ。子供たちを置いていけないけど、どうやって言い訳をすれば良いのか分からない。わたしは思わずため息をつく。それでさえも疼く体を刺激してしまって、痛みを感じる。すると、わたしを抱き締める腕が動いた。
「どうした?本当に七年分詰め込んだだろう?何か不満はあるか?」
腕を枕にいたずらっぽく笑う樹衣さまに、着物の上着を羽織ったわたしは恨めしげな視線を向けてしまった。
「男性は良いですね。した後も元気いっぱいで。こっちは体中痛くて大変なんですよ」
「ははは、すまないな、我慢できなくて。これなら皇帝になったときの子作りにも困らないだろう」
自慢気に言う彼に、わたしは苦笑しか浮かばない。
「それ、笑いながら昔の恋人に言う言葉ですか……」
わたしは自分の頬を涙が伝うのを感じる。だって、わたしはこの人が好きなのに。自分で勝手に逃げておいて何を言っているんだって感じではあるけど。すると、樹衣さまに涙を拭われ、抱き締められた。
「大丈夫。冗談だ。俺はお前以外を妃にするつもりはない。例えお前に子ができなくてもだ」
実は二人もいると、明かしてしまいたい。それができないのがもどかしい。でも、あの子たちのためにもそれは出来ない。わたしの気持ちだけに任せて行動なんてしてはいけないのだ。わたしはまだ泣いている振りをして樹衣さまの胸に顔を埋めた。こればかりはどうにもならない。この恋心と、親心。優先すべきものが分かっている時点で、この人との将来はないのだ。未練を絶ちきらなければ。わたしはすうっと息を吸った。
「樹衣さま、これきりで終わりにしましょう」
わたしが透き通った深紅の瞳を見つめて言うと、樹衣さまは傷付いたような顔をした。
「何がそこまで頑なにさせる?俺がどうにかできるのならどうにかしてやるから。俺の元に戻ってきてくれ。張今様も心配しているんだ。頼むから、戻ってきてくれ……」
悲壮感の漂う声に、つい事実を明かしそうになる。子供たちを守りたいから、と。
「無理なものは無理なんです。これで終わりにしましょう。あなたにはもう未練も何もありません」
わたしが目を逸らして呟くと、樹衣さまは悲しい笑みを漏らした。
「分かった。お前がそこまでそう言うなら。自由な時に部屋に戻ってくれ」
樹衣さまはそう言うと、わたしに背を向けて寝台に寝そべってしまった。




