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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第六章 決断
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再会

 そこにいたのは樹衣さまだった。やつれて疲れきった顔をしていて、目の下の隈が濃い。

美美ミイミイ!」

彼はそうわたしの名前を叫ぶなり抱きしめた。わたしも思わず彼の背に腕を回す。

「どれだけ会いたかったことか。記憶を失う前にしたことは謝らせてくれ。許して欲しいなんて都合の良いことを言うつもりはない。ただ、会いたかったんだ」

樹衣さまがわたしを抱きしめる力が強くなる。

「樹衣さま、苦しいです」

わたしがそう呟くと、樹衣さまは慌ててわたしから自分の体を離した。

「すまない!久しぶりに会えたもので、つい」

そう苦笑する顔は七年前よりも少し大人びて見えた。幼さが抜けて精悍になった。

「大人になりましたね」

わたしがそう言って樹衣さまの頬を撫でると、樹衣さまは困ったように微笑んだ。

「まだ子供扱いか。まあ、会えたからいいや。ところで、そちらの人は?」

樹衣さまの視線を辿ると、その先には李里がいる。

「わたしの親友の李里です。ずっと仲良くしてくれて」

「そうか。李里殿、ありがとう、俺の恋人と仲良くしてくれて」

樹衣さまに満面の笑みでそう言われた李里は微笑んだ。

「いえいえ。こちらこそ、私の親友と仲良くして下さってありがとうございます」

バチバチバチバチッ。

二人の視線の間に火花が飛び散る。これってもしかして「わたしのために争わないで!」状態なのでは。わたしは引き攣った笑みを浮かべた。

「樹衣さま、とりあえず場所を移しましょう」

わたしはそう言って樹衣さまが蹴り破った扉から廊下へ出た。部屋の中にいると子供たちの存在がバレてしまう可能性があるからだ。宿の中庭の長椅子にわたしたちは二人で座った。

「本当に、夢みたいだ。美美と再会できるとは」

樹衣さまはそう言ってわたしの肩を抱く。わたしは彼にもたれかかりながら目を閉じた。

「眠いのか?」

樹衣さまの言葉に、わたしは首を振った。

「久し振りに会えたのです。少しでも、樹衣さまを感じて触れていたくて」

これは誘いでもあった。樹衣さまはわたしの意図を汲み取ってくれたらしい。少し体が強張ったのを感じた。暫くの沈黙の後、樹衣さまは口を開いた。

「……分かった。だが、覚悟しておけよ?七年分、全部込めてやる。容赦しないぞ」

彼の瞳を見たわたしは、今更ながら後悔した。そうだ。この人の性格上、こうなるのはわかっていた。わたしは胸の中で密かに、だけど大きく後悔した。逃れようとしても、樹衣さまの腕は固く、気付けば彼の宿の部屋の寝台に寝かされていた。もうちょっと、心の準備をする時間が欲しかった。まあ、誘ったのはわたしなのだから、今更そんなこと言ってられない。わたしは樹衣さまの獣じみた瞳を強く見返しながら、腹を括った。

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