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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第五章 平穏
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 子供たちが七歳になった年、わたしたちの楽団は宮都(キュウト)中で知られるようになった。楽団の人たちはもっと人気が出るように努力していたから、それが実ったと言える。あっちの宴にこっちの宴に引っ張りだこだ。でも、わたしは極力目立たないようにしている。青緑の髪の人なんてそうそういない。だから容姿が噂になればすぐに樹衣さまの耳に届くだろう。そうしたら彼はきっと探しに来る。自意識過剰かもしれないけど。そんなことを思いながらお客に酒を注いでいたら、嗅ぎ覚えのある香りが鼻を掠めた。白百合の香りだ。わたしは咄嗟に俯く。わたしの背後を通りすぎたであろう人を盗み見ると、髪色を茶色に染めた美男がいた。


樹衣さまだ。


 わたしは血の気が引いていくのを抑えられない。何でここにいるのか。わたしは今酒を注いでいた客にお辞儀をし、その場を離れた。それを見た李里(リリー)がこちらに来た。

菁凜(セイリン)?どうしたの?」

「後で話すから、とりあえず付いてきて」

わたしはそう言いながら自然と早足になる。自分と子供たちの泊まっている部屋に着くと、李里を入れてすぐに鍵を閉めた。いきなり戻ってきた母親に、二人で仲良く生物の図録を読んでいた樹徒(ジュト)鈴桜(リンヨウ)は驚いたような顔になる。

「母様?李里さん?どうしたの?」

鈴桜の言葉に、わたしはすぐに答えることができなかった。この子たちには父親は遠くにいるとしか言っていない。今ここに来ていたと言ったら会いたいと言うに決まっている。ずっと父親なしで育ってきたのだから。

「ねえ、二人とも。あっちで図録を読んでいてくれる?」

この宿の部屋は二つに分かれている。わたしは隣の部屋を指差した。二人は素直に頷いてくれた

「分かった!行こう、鈴桜」

二人が隣の部屋に行って扉を閉めるのを見届けると、わたしは李里に向き合った。

「あなたなら信頼できるから言うわ。あの子たちの父親の話」

「うん。ずっと知りたかった」

李里の言葉にかなり待たせたなと申し訳なく思いつつ、わたしは話し出した。

「話せば長くなるわ。わたしは表向きは高官の娘ということになっているけど、母が皇族と不貞して生まれた皇族なの。ちなみに本当に高官の子なのは兄様ね。まあその関係で小さい頃から緑の宮、東宮殿下と一緒にいたのよ。でもある日、記憶を失って。そこから色々あって緑の宮の恋人になったんだけど、記憶を失う前のわたしに対する緑の宮の冷たい態度を思い出してしまって。わたしが色々と変なことをしたせいなんだけど。それで怖くなって菁明と徠懼と夜逃げして、父様に拾われたの。それで緑の宮の子であるあの子たちを産んだ。でもあの子たちを皇位争いに巻き込んで怖い思いをさせたくないから樹衣さまの元へは戻らないって決意した。それで今に至るってわけ」

かなり雑だったけど、李里に理解できただろうか。長かったし。案の定、李里からはかなりの数の質問が来た。

「えっ?じゃあ菁凜は団長の娘じゃなくて、安琴さんとは本当の兄妹なんだ。だったら菁明も安琴さんの妹?」

「いいえ。わたしと兄様は母が同じだけど父が違って、わたしと菁明は母が違って父が同じなの。ちなみに菁凜と菁明っていうのも偽名。わたしの本当の名前は美美(ミイミイ)。菁明の方は菻明(リンメイ)よ。徠懼は雲風(ウンプウ)

わたしがすらすらと答えると、李里は驚いたような顔をした。

「すごい徹底しているのね。私も隠すのに協力するわ」

李里がそう言って、二人でガッチリと握手したところで。鍵がかかっているはずの扉が、開いた。否、ある男性によって蹴り倒されていた。

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