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紅の御簾とき  作者: 鈴のたぬき
第五章 平穏
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成長

 あの時の風邪以来、樹徒が風邪をひくことはなく、健康優良児に成長した。一緒に育った双子の鈴桜も同じだ。母として子供たちの成長と健康は何よりも嬉しい。でも元気すぎて付いていけないのも事実だ。今日も五歳になった樹徒と鈴桜と遊んでいたら走って置いていかれ、わたしと同じく四歳の娘、黎蘿(レイラ)に置いていかれた菁明と一緒に息を切らしている。

「もっと小さい頃はこんなに体力勝負じゃなかったのに……」

「でも、徹夜での世話とどっちがきついのか分からないくらい小さい頃も手が掛かりましたよ……?」

二十二歳と二十歳の大人の女が宿の庭でぜえぜえしているというのは中々滑稽に見えるに違いない。通りすがる宿の宿泊者たちの視線が痛い。わたしたちが疲れきって座り込んでいると、ようやく子供たち三人が戻ってきた。

母様(かあさま)、叔母さま、見て!」

だいぶ喋り方がしっかりしてきた樹徒が差し出してきた手を見ると、色とりどりの花。

「まあ、どうしたの、これ」

わたしが問うと、鈴桜が自分の手に乗った花を見せてきた。

「木陰に咲いていたのを摘んだの!」

鈴桜が言うと、黎蘿も自分の手を見せてくる。

「すっごく綺麗だったの、母様と伯母さまにあげる」

楽しそうな様子の三人を微笑ましく思いながらも、わたしは厳しい顔を作る。

「わたしたちに花を摘んできてくれたのはとても嬉しいわ。だけど、あまり知らない場所で大人から離れて勝手に遠くへ行かないで。楽団の人みたいに優しい人ばかりじゃなくて、あなたたちみたいな綺麗な顔をした子供を連れ去って誰かに売っちゃうこともあるのよ。今回は運良くそんなことにならなかったけど、心配だからもうやめてね」

わたしが自分の子供たちを抱き寄せると、菁明も頷きながら黎蘿を抱き上げた。

「黎蘿、分かったわね?あなたは父様の血を濃く引いてとても綺麗な顔をしているから、狙われやすいの。大好きな父様と母様にもう二度と会えなくなるなんて嫌でしょう?」

黎蘿がこくこく頷くのを見て、菁明はわたしの方に顔を向けた。

「この子たちに罰が必要ですね」

罰と聞いた三人の顔が青くなる。

「ええ。罰として、大人の目の届くところで動けないくらい疲れるまで遊びなさい」

せっかく花を摘んできてくれたのだ。罰という名のご褒美をあげよう。案の定、子供たちはパッと顔を輝かせた。

「はい!分かりました!」

そう言った子供たちが宿に入って連れてきたのは黎蘿の父で菁明の夫でもある徠懼(ライグル)だ。一番過酷な仕事を任せる相手として適任だ。

「徠懼、頑張ってね」

わたしと菁明が軽く応援して宿の中に入っていくと、徠懼は状況を察したらしく頭を抱えた。そんな徠懼に、子供たちが容赦なく、

「遊ぼう!」

と声をかけたのが宿の扉が閉まる際に聞こえた。頑張れ、徠懼。

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